「さぁこれで終わりだ!」
「まだだ…俺はまだ死ねねぇんだよ!」
ショウの猛攻を必死に受け止めるケントだったがそれももう限界に近いようだった。
元々勢いだけで乗り切るような性格のケントはこういう長期戦ではスタミナがもたないのだ。
はぁはぁと荒い息をつきながら今にも崩れ落ちそうになってしまっている。
「どうしたケント!お前の力はそれだけか?」
「それなら…これでどうだ!」
ケントは腰に下げていた剣、さっき引き抜いた剣を取り出してかまえた。
「そ、それは…!龍殺しの剣<ドラゴン・スレイヤー>だと!?なぜおまえがそれを…それは封印されていたはず…」
「こいつ、ドラゴン・スレイヤーっていうのか…」
ケントはその剣、ドラゴン・スレイヤーを左手に構える。
そう、二刀流だ。
右手の刀、左手の剣、それで敵の動きに対応しようとしている。
「二刀流か、面白い!」
激しくなったショウの攻撃をかろうじて二刀で受け止めるケントだがやはり二刀流は初めてでなれないのだろう、互いの剣の良さを明らかに殺してしまっていた。
「付け焼刃の二刀を使うからそうなるんだ!さぁ!おとなしく死ね!」
振り下ろされた渾身の一刀、それはケントの身体をしっかりととらえるルートだ。
これはもう躱せない、誰もがそう思った。
カキン―
「な、なに…!?」
だが、ケントはそれを受け止めた、右手に握った刀で。
しかしその方法は明らかに人間のそれではなかった。
刀が握られた右腕、それがあり得ない方向に曲がって振り下ろされた剣を受け止めていたのだ。
そう、まるで関節を外してさらに捻じ曲げたような…
「くそっ!…もう一発だ!」
さらに一撃が加わる。
だがケントは動じもせずにそれを右の刀で受け止めたのだ。
さらに激しい猛攻が入るもケントはお構いなしだった。
全ての攻撃に右手が対応している。
ぐにゃりぐにゃりと関節を曲げながら、まるで右腕だけが別の生物のような…
それは明らかに人間離れした動きだった。
異能、ではないことはこの空間でそれが封じられているということからわかる。
ならあの動きはなんだ…?
「よかったですわ。あの機能が正常に働いて…」
「い、イリヤ…?」
いつの間にか俺の隣でケントたちの攻防を見ていたイリヤがポツリとつぶやいた。
「ケントのあれはわたくしが作った義手の最終奥義ですの。義手だけをまるで生き物みたいに勝手に動かすことができますのよ」
そこでケントが義手だったことを思い出して納得した。
まさかあんな能力が隠されているとはな…
右腕に意識を集中させる必要が無くなったケントは強かった。
左手に持った剣で相手の隙をつきひたすら攻撃を撃ちこんでいく。
もうこれはケントのペースといっていいぐらいだ。
「くっ…!ここはいったん退くとしよう…お前ら!退くぞ!」
と、彼は仲間たちに声をかけるが応答がない。
何事かと思いケントとの距離を取った彼は改めて仲間のほうを向いた。
だがそこにはサクヤに倒されてぐったりとした仲間の姿があっただけだった。
「ちっ…アイツら…」
ショウは舌打ち一つ、ポケットから何かを取り出して地面に向かって放った。
それが煙玉だということはすぐに理解できた。
もくもくと洞窟内に煙が充満し視界を奪う。
次に視界が晴れた時にはもう彼の姿はなかった…