「それじゃやるよ…」
「ほんとにするのか…?」
「当たり前でしょ!ウサギは困った子は放っておけないの!」
「うわぁ…うーちゃんカッコいい!」
「えへへそうでしょ~。ほら、ツキちゃんもそう言ってることだしやるよ!」
「はいはい…」
私達が考えた作戦その1
それは…
「それじゃ躍るよ!」
ダンスだった。
なるだけ楽しそうに躍ることで相手にこっちが楽しいんだっていうことをわからそうとしてるんだけど…
「ほっ!やぁ!とぉ!」
「ウサギ、それダンスじゃない、格闘術だ」
「ツキくんだって!それ盆踊りじゃない!」
「生憎俺はダンスなんて知らないんだよ!」
結局私とツキくんはリタイア、だが…
「へぇ…ツキちゃんって意外と踊れるんだ」
「こいつアイドル好きだからなぁ」
「えへへ…お兄ちゃんどう?私、アイドルみたい?」
「あぁ、そこらのアイドルより可愛いぞ」
「やったぁ!じゃあ私もっと頑張るね!」
「ほへぇ…ほんとにうまいなぁ…これ、デビューできるんじゃない?」
ツキちゃんは思ったよりもダンスが上手くって…
本当にアイドルのそれだった。
身体全体でリズムを取り飛んだり跳ねたり廻ったり…
とにかく彼女からは楽しいという感情がひしと伝わってきた。
ツキちゃんのそれが彼女たちに伝わったのか、彼女たちはこちらに興味津々だ。
これはチャンスか…?
「ねぇそこの二人!こっちに来て一緒に踊ろうよ!」
すかさずここでウサギちゃんスペシャルダンス!
これで決まらないわけない…ってあれ?
彼女たちはこっちにくるどころか逆に遠ざかって行っている。
どうして…?
「ウサギちゃん、もうおどらない方がいいよ…相当怖いから…」
「怖い!?え!?ダンスで怖いって何!?」
「ふえぇぇん…うーちゃん怖いよぉ…」
ダンス作戦、失敗…
「それじゃ今度はお歌!お歌を歌ったらみんな楽しくなるよね!」
「歌かぁ…」
「うん、いいよ!私お歌だ~い好き!あ、もちろんお兄ちゃんの方が大好きだからね!」
「あぁもぅ可愛いなぁ!」
「二人ともぉ…早くしようよぉ…」
わしゃわしゃと妹の頭をなでるツキくんをどうにかして臨戦態勢へと持って行く。
「それじゃウサギから歌うからね!二人ともちゃんと続いてよね!」
「わかったよ」
「それじゃ…すぅ…ぼええぇぇぇ」
ウサギちゃん渾身の歌声で惚れない子なんていないよね!
…ってあれ?二人とも伸びちゃってる…?
それにあの子たちももっと遠くに行っちゃってるし…
なんで!?ウサギちゃんの歌声は世界一なはずなのに!
「う、ウサギちゃん…もう歌うのはダメだ…世界のためにもやめた方がいい…」
「うん…私もお兄ちゃんと一緒…うーちゃん…音痴すぎ…」
「ウサギが…音痴…」
お歌作戦、失敗…
結局そのあともいろいろ試してみたんだけど…
「どうしてあの二人と最初より距離が開いちゃったのかな!?」
「多分ウサギちゃんのせい…」
「同感…」
「しかもツキくんたちもぐったりしてる…」
結果は惨敗、こちらの圧倒的敗北だ。
「う~ん…どうしよ…」
これだけ負けてるが諦めるという単語は出てこなかった。
ここで諦めてしまえばもうあの子たちを助けることができない気がして…
「あ!私にいい考えがあるよ!」
「ツキちゃんが?何々?」
「え~とね…うーちゃんがもってたお菓子を一緒に食べるの!」
「え!?ダメだよ!これはウサギの分!」
「でもぉ…お菓子はみんなで食べた方がおいしいよ?ね?」
「そ、それでもダメ!」
「うぅ…うーちゃん酷いよぉ…うえぇぇぇん…」
「わ、わかったから泣かないで!ね?」
どうにも私はツキちゃんの涙に弱かった。
彼女の涙には何か特別な魔法でも施されているのだろうか…?
「それじゃお菓子貸して、私が行ってきてあげる!」
そういうとツキちゃんはその小さな体を駆使して柵の中へと入っていった。
その時だけ、小さいのもいいなぁと思ってしまったのは内緒だ。
「ねぇねぇ!私と一緒にお菓子食べよ!」
「え…?でも…」
「大丈夫!おいしいよ!」
「お菓子…」
「ね?あっちでみんなで食べようよ!きっともっとおいしくなるからさ」
「どうする…?」
「どうしよ…?」
その二人は顔を近づけてこそこそと話し合い、そして…
『食べる!』
ようやく彼女たちを私達の元へ近づけることができた。
「うわぁ…このクッキーおいしい!」
「うん…こんなの食べたことない…」
「これはウサギちゃんのお母さん特製なの!自家製みるくを使ってるからおいしいのは当たり前!」
訊いてみると彼女は双子のようだ。
ずっとこの森で過ごしているらしい。
「それでお母さんたちは?」
「…帰ってこない…」
「え?」
「ずっと帰ってこないの…お父さんもお母さんも…帰ってきたと思ったらすぐに仕事に行っちゃって…私たちはずっと二人ぼっち…」
「それじゃウサギたちとあそぼ!これからず~っとあそぼ!」
彼女たちは笑顔でうなずいた。
結局私ではなくツキちゃんが活躍しちゃったけど…結果オーライだから何も問題ない!
べ、別に悔しかったとかじゃないからね!