「いっちゃん!きーちゃん!あそぼ!」
「あっ!うーちゃんだ!待ってたんだよ!早く早く!」
「今日はいっぱい本を集めたの…みんなで読も?」
例の双子、いっちゃんときーちゃんを加えて私たちはほとんど毎日のように遊んだ。
恐ろしいほど真っ青な晴れの日も、風雨唸る嵐の日も、私達は遊んだ。
みんなと遊んでいる間は時間も忘れていた。
気付けば空には月が訪れ私たちの身体にも空腹という名の魔の手が訪れていた。
そして帰ったらお母さんのおいしい料理が待ってて…
毎日が幸せだった。
とても幸せで、ずっとこんな日々が続くんだと思っていた。
けれど…そんな甘いことが許される世界ではなかったんだ…
世間では私のことを異常者みたいな目で見る人が現れた。
異端、悪魔の仲間、災いを呼ぶもの…
気付けば町の人達は私のことをそう呼んでいたのだ…
その理由は単純だった。
私がツキちゃんたち兄妹と一緒にいるから。
彼らの身体にある蛇のようなあざ、それをよく思っていない人たちが理不尽な暴力に走る。
そう、言葉という名の暴力に…
私はそんなこと気にしてなかったけどその兄妹は違った。
私達といるときはそんなこと気にしていないとでもいう風にふるまっているが、裏では違った。
いつかの日、私はツキちゃんたちの家に約束も無しに遊びに行った。
けれど鍵がしまっていたから窓から中を覗いた。
子供の時は必ずするであろうその行動、だけど私はそのせいで見たくも無い物を見てしまったのだ。
部屋の隅で二人寄り添って丸くなっている兄妹を…
彼らは気配を消してじっと二人して固まっている。
まるで気配を出せば殺される、とでもいう風に…
初めこれがどういう意味かわからなかった、だが後日分かったのだ。
彼らの家、そこに訪れる大人たち、彼らは口々に悪魔の子供だとかここから出ていけだとか…
最悪の場合は死ね、という最悪の言葉すら吐き出していたのだ。
あれは彼女たちの防衛策、ひたすらに耳を塞いで気配を殺して、この暴力に無言で耐えていたのだ…
私はそれを見て…どうしようもなくて、立ちすくむしかなかった。
だけどいっちゃんたちに出会ってからはそれが変わった。
彼女たち双子の家には大量の本があった。
そう、まるで図書館のような程の量だった。
だから私は探した、蛇のアザの病気を…
これが私にできる唯一の事だった。
子どもの知識で必死に探し回ったがそんな病気はどの文献にもなかった。
だけど私は必死に探した、ツキちゃんたちを助けるべく…
「うーちゃんどう?見つかった?」
「ううん…いっちゃんは?」
「私もダメ…」
「そっか…きーちゃんは?」
「お姉ちゃんと同じ…見つかんないよぉ…」
「そっか…」
いっちゃんもきーちゃんも私と同じでツキちゃんたちを助けたいと思っていたので手伝いを頼むが…
やはり人数が増えたところでダメだった…
「うわぁ…うーちゃんもいっちゃんもきーちゃんも図鑑なんて読んでるの?賢いんだね」
「ツキちゃんは絵本だね、気に入ったのあった?」
「私はこのお話が好き~」
「これ私も好き!お姉ちゃんも好きなんだよ!」
「正義の暗黒騎士さんのお話…やっぱりカッコいいよねぇ」
いっちゃんたちがツキちゃんとのおしゃべりに夢中になっている時だった、ふいにツキくんが私をよんだ。
「なぁウサギちゃん…もし俺たちのこの身体の事を調べてるんだったら…止めた方がいい」
「え…?」
「俺も自分で調べてみたけど、こんな病気どこにも載ってなかったんだ…だから調べるだけ無駄、やめた方がいいよ」
「けど…」
「ううん、いいんだ…俺達の為にそんなに必死になってくれなくても…」
そう力なく言ったツキくんがどこか寂しそうだったのは今でも覚えていた…
そこからさらに数週間が経過して…幸せの終焉を告げる日が訪れたー