「ちっ…この人数で戦いたくはなかったが…仕方ない!」
長身のまるでモデルのような女、ヒルデ、岩出数多のゴーレムを作り出すこいつを相手にするにはやはりこの人数は心もとない。
それに…
「それにこんなの俺の柄じゃねぇし」
「柄って何よ、柄って」
すかさず飛んでくるネムのツッコミに俺はにっと答えた。
「女に手をあげるなんてさ、俺らしくないだろ?」
決まった…
一回言ってみたかったんだよなぁ、このセリフ。
「はぁ…やっぱりナイトはバカだ…」
「姉さん…それはもともとわかってたことなんだから言っちゃダメだよ」
ヨウまでそんなこと言って…
ナイトさん泣いちゃうよ!?
…って遊んでる暇はないか。
俺はポケットから煙草を取り出して自分の能力で火をつける。
そしてそれを口に含み少しずつ煙を吸い込んでいく。
煙が俺の心の不安を絡め取り外に出ていくようにすっきりする。
「ふぅ…」
「あら?たばこなんて吸っちゃって、大人の真似事?でも坊やは坊やのままよ?」
ヒルデがニヤニヤとしながら俺を笑う。
その笑いがなんだか頭に来る…
そのいら立ちを抑えるように俺はまた煙を吸い込んだ。
「そう言えばナイトってもうタバコ吸える年齢なの?」
「あぁ、一応な。お前らと別れてる間に誕生日が来た」
「へぇ…」
このタバコ、それがオレの誕生日プレゼントだった。
あの女が、俺へとくれたプレゼント…
だから、俺は、それを大事にして…
煙草の灰がぽとりと地面に落ちて妙なにおいを放ち煙を吐き出していく。
「さぁてユラ、行くか…」
「あぁ、任せろ、ナイト」
俺はくゆらせた煙草をそのまま空中へと放る。
まだ火のついたタバコが黒い円を描きながら地面へと落ちる。
そしてそれが地面へと落ちた瞬間、それが戦いの合図だった。
「ゴーレム!あいつらを葬れ!」
「燃え散れ!」
「電よ…砕け!」
ゴーレムが形成されると同時、青白い光とともに爆発。
鋭い轟音が洞窟にこだまして響き大気までぐらぐらと揺らす。
俺たちの、命を賭けた戦いが、ついに始まった…
爆発、閃光、また爆発。
目の前でゴーレムが砕け散っていくがやはり各個撃破ではきりがない。
「くそ…まだ沸いてくるのかよ!」
「私の可愛い下僕たちは岩と土があればどこでも生成可能なのよ?あなたたちがいくら倒したって無駄なの。分かったら大人しく私に殺されなさい?」
「へっ…簡単に殺されてたまるかよ!」
右腕に炎をためて弾丸のようにそれをヒルデに向けて発射する。
やはりここは本体を攻撃するしかほかない。
極限まで圧縮した炎の弾丸だ、相当な速度と威力のそれに当たればただでは済まないだろう。
(久しぶりの圧縮だったが…くそ…こんなに疲れるものだったか…?当たってくれないと困るぜ…)
炎をコントロールするには並大抵の集中力じゃ無理だ。
精神を整えてしっかりとしたイメージがないとすぐに霧散して消えてしまう。
なのでこの圧縮も相当な労力を要したモノ、この一撃で決める、その思いを込めてはなった弾丸だ、あたってくれなければ困る。
「ゴーレム!私を守りなさい!」
ヒルデの目の前の地面が割れてそこから新たな土人形が姿を現した。
だがこれも予想通りだ。
「そんな人形で大丈夫か?」
「どういうことだ?」
ヒルデのその問いに応えるように炎の弾丸はゴーレムに着弾した。
普通ならそこで炎が爆ぜて爆発を起こしてそこで終了。
だがこれは少し違う、極限まで圧縮した炎の弾、それはゴーレムに当たるとその体を砕きながらさらに進んでいく。
「か、貫通だと!?」
「今更気づいたか、だがもうお前の負けは確定だ!」
速度を付けた炎の弾、それはさながら弾丸だ。
敵の身体を砕きながら進む炎の弾丸、その岩を超えればやつは目の前だ…!
「甘く見るなよ…ガキどもが!」
ガラガラとゴーレムが砕け落ちる。
だがヒルデはまた地面からゴーレムを呼び出した。
「何度きても同じだ!あんたはここで負ける、それは変わらないんだよ!」
だがなんだ、彼女のあの余裕は…
負け惜しみや強がりにしては冷静過ぎる…
これは、何かの罠、いや、それ以上の何かが…?
だが今はそんなことを考える暇はない。
炎の弾丸がすぐにやつの作り出した木偶の坊を砕くのだから。
バッと大きな音を立てて着弾する炎。
だが、それまでだった。
ゴーレムに着弾したあと爆ぜ散る炎の弾丸。
あっけなく爆ぜたそれはゴーレムの身体に小さな焦げ跡をつけるのみだった…
「ど、どういうことだ!?おかしいじゃないか!」
こんなの有り得ない…!
何故だ…貫通するはずじゃ…
「ダイヤモンド、って知ってますか?」
「は…?」
「それは世界一堅い鉱石として知られている…ダイヤはその美しさゆえ誰も傷つけられない体となった…そう思いませんか?」
「どういうことだ…」
「私の下僕にダイヤモンドを混ぜた、ここはダイヤがよく採掘されるからね」
まさか…ダイヤが攻撃をはじいたというのか…!?
「もったいないからあまり使うなといわれてたけど…あんたたちには特別だ!さぁ私の可愛い下僕たち!好きなだけダイヤを喰らいなさい!」
ヒルデの命令に従ったゴーレムたちは地面から、壁から、ダイヤらしき光沢のある鉱石を取り出し、それをバリバリと食べ始めた。
不思議なことにダイヤを食べたゴーレムは見る見るうちに輝かしい光沢を帯び始めたのだ。
「まさか…こいつら…」
「えぇ、ダイヤを捕食することによって自身の身体もダイヤとした。これでお前たちもチェックメイトだ!」