「あなたの負けはもう確定しているはずよ…なのにまだ抵抗する気?」
ネムの放った音波、それはヒルデに直撃するすんでのところで新たなゴーレムによって疎外された。
「フフ、私の負けが確定している?何を寝ぼけたことを…負けが決まったのはあなたたちのほうよ?」
彼女は怪しげにニヤリと口元を歪めるとさらにゴーレムを召喚し始めた。
また新たに生み出されるそれだが、これもネムの歌によって壊される運命なのだろう。
「ネム、もう一度頼めるか?」
「任せて!さっきの音ならもうこの拡声器が覚えてる、だからすぐに出せるよ」
ネムは拡声器を構えてニッと笑う。
それは確実に勝利を確信した笑みだった。
だけど何故だ…俺の胸に何か不安な影が落ちる…
ヒルデのあの余裕と自信はどこからきている…
まるで勝利を確信したようなあの怪しげな笑み…
何かがおかしい、彼女はまるで俺たちの次の行動を期待しているような…
「それじゃいくよ…!音量マックス!この一発で全部壊しちゃうから!」
カチャリと拡声器を構えるネム、それを見たヒルデはさらに顔を怪しげにゆがめた。
ネムが音を放つと彼女にメリットが生まれる、その何か…
彼女の能力、再生可能なゴーレム、音波、共振…
「!ネム!ダメだ!それを撃つな…!」
俺が危険を察知してネムを止めようとした、が、時すでに遅しだった。
彼女は俺の声が届く寸前に引き金を引いてしまっていた。
洞窟内にまたつんざくような音が広がり全てのモノをびりびりと共振させていく。
洞窟全体が、まるで地震が起きたかのように震える。
バリバリという耳をつんざくような地響きも聞こえてきた。
「ユラ!お前の力でシールドの展開、できるか!?」
「あぁ…だが何故だ…」
「いいから!」
俺はネムに負けないほどの大声でユラに向かって叫んだ。
「いいから早く!じゃないと俺たちは下敷になって死ぬぞ!」
音波によってガラガラと崩れていくゴーレム、それはまさに一瞬だった。
だがまたゴーレムはヒルデによってその形を取り戻していく。
まさしく永久機関だ。
それを壊すためにネムはさらに音の波を浴びせていく。
だがそれはすべてヒルデの思惑通り。
そう、彼女の思惑、それは洞窟の崩落。
ネムの音波は岩でできたゴーレムを壊せる、ということはもちろん岩ばかりの洞窟も壊せるというわけで…
ぴしぴしと壁にひびが入り始めて、それはすぐに限界を迎えた。
「ユラ!頼む!」
そして俺の声とともに壁、天井が砕けて大きな岩の破片となり凶器として俺たちに降りそそいだ…