「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
ドラゴンの攻撃により俺たちとキョウヤ達が寸断されてしまった。
あの瓦礫をのけるには異能を使っても時間がかかりそうだ…
その間にドラゴンに蹴散らされて終わりっていうのが落ちだろう…
それにあの奥で何かあったら…もし岩をあちら側に飛ばしてしまえば…
キョウヤ達にヒットすればただ事じゃすまないからな。
「ユキ!戦闘態勢を取れ!じゃないと死ぬぞ!」
「ケントに言われなくてもわかってる!…待っててお兄ちゃん…今度は私が助けるから!それでお兄ちゃんに私の匂いがしみ込んだこのお洋服、返すんだから!」
「さっきまで喧嘩してたのが嘘みたいなブラコンっぷりだな、ユキは」
「ドMケントに言われたくないよ」
ここまでいえるなら大丈夫だな。
「サクヤ、俺と一緒に前衛、大丈夫か?」
俺は隣にいるサクヤにそう声をかけた。
彼女の実力ならば適任だろう。
「もちろん。ケントこそ大丈夫?私の足引っ張ったりしない?」
「なめられたものだな、俺だってあの時とは違うんだよ」
入学して直ぐの時にサクヤにぼこぼこにされた記憶が脳裏をよぎる。
あれが悔しくて俺は必死に頑張ったんだ…
あの時の俺とはもう違うんだ…!
「マリナとユキは後方支援!キラは防御に徹してくれ!」
「ケント!背中はマリナに任せるです!ケントが戦いやすいようにバックアップしてやるです!」
「頼もしいな、マリナは!さぁお前ら、いくぞ!」
俺は愛刀をぎゅっと握り直し的に向かって一直線に走っていった。
「まずは一発!」
巨大なドラゴンは見た目通り動きがのろい、その隙だらけの足元にまずは一発、ぶちこんだ。
鋭い刀身がドラゴンの皮膚の上を華麗にすべっていく。
そこから真っ赤な液体がたらりと垂れたがドラゴンにとってそれは何ともない痛みなのだろう。
「全然きいてねぇ!」
「ケント!そこ退いて!」
後ろから走り寄ってくるサクヤ、その手にはレイピアが握られていた。
そしてそのままぐさり、と傷口に突き刺した。
が、それもまだ浅い、ドラゴンの筋肉は意外に屈強なようで刃の先端を飲み込むだけになった。
「なんでこんなに硬いの!?反則よ反則!」
「サクヤ!反撃くるぞ!」
今度はドラゴンの攻撃に移った。
巨大な足を持ち上げて地面を踏みしめる、それだけで大地が揺れ俺たちの体勢を崩させた。
そしてやつは巨大な真っ白な尻尾を使って俺たちを吹き飛ばそうと薙ぎ払った。
「センパイ!大丈夫ですか!?くっ…重い…」
何とか間一髪キラの防御が間に合ったが…
展開された魔法陣にピリピリとひびが入っていた。
あの無敵を誇る魔法陣にあんなにあっさりひびを入れさせるとは…
いや、今は感心している暇はない、早く逃げなければキラが防いでくれた意味がなくなる。
「このままじゃおされちゃう…早くして!」
「私も援護する!だからその間に逃げて!」
キラの魔法陣の上にユキが氷の幕を張った。
ピキピキと魔法陣が凍っていきさらに強度を増していく。
今のうちだ…
俺はさっとその場から飛び退きどうにかやつの攻撃範囲を抜け出した。
「もう…無理…」
パリンと魔法陣が破られさっき俺がいたところを巨大な尻尾が薙ぎ払われていた。
その地面は大きく抉れ見るに堪えない惨状だ…
もしも逃げるのが遅れていたらと思うとぞっとしてしまう…
奴は攻撃が入らなかったとわかるとすぐに次の手に移った。
今度は真っ白な巨翼をはばたかせて宙に浮いた、と思った瞬間勢いを付け俺たちに襲いかかってきた。
空中から繰り出される強靭な一撃、それをくらえばひとたまりもないだろう…
必死に逃げようと走るも奴の方が動きが早い、もうゆうに奴のキルゾーンに入ってしまっているだろう…
「ケント!目をつぶるです!」
マリナの叫び声、俺はその指示通り目をつぶった。
後ろで何かが爆ぜた、それは多分閃光弾だろう。
案の定それは正解だったようでやつは巨大なうめき声をあげてコントロールを失い地面に落ちた。
「今です!畳み掛けるですよ!」
「サンキューマリナ!」
「ケント!あいつの頭を狙うよ!」
「オッケー!」
もう一度ぎゅっと剣を握りしめて俺はやつの頭に向かって一撃を振り下ろした。
全身全霊を込めた一撃、それはとどめを意味していた。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
だがそれは攻撃が決まったらの話だ。
奴は鼓膜がびりびりするほどの轟音をあげた。
それは俺たちの攻撃が分かっていたのか、それとも無意識からか、どちらにしろ俺たちの攻撃を止めるのには十分だった。
「ぐっ…耳が…!」
その場にいる全員が耳を塞ぐ、その隙に奴は体勢を立て直してもう一度宙に浮いた。
くそ…ドラゴンを倒すのってこんなに大変な事なのか…
これが人と、龍の実力の差…
圧倒的な実力差を突き付けられて俺の心はもうずたぼろになってしまっていた…