終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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龍人

ズシャリ―

今まで以上の手ごたえを感じて俺は顔を上げた。

そこには真っ赤にえぐれた龍の腹があった。

そしてそこから噴き出した真っ赤な血液が俺を汚す。

「うへぇ…思いっきり血被っちゃったじゃんか…」

ねっとりとした血が俺の全身を染めあげていく。

けれどそれは不快ではなかった、まぁ良いものでもないんだけどな。

龍の血だということが何だか誇らしく思えたからだ。

「こいつ…本物の龍殺し…いけるぞ!」

「くっ…貴様…なぜ…それを…!」

俺が勝利を確信した瞬間、頭上からやけに頭に響くひくい声が聞こえてきた。

まるで腹の底まで震わせるような、そんな声だ。

「だ、誰だ…!?」

しかし俺の周りにいるのはみんな女の子ばかり、こんな低音を出せる奴なんてありえない…

「誰だって言ってるだろ!?正体を表せ!」

俺の叫びと同調するようにやつの身体からまばゆいばかりの光が漏れる。

あまりの閃光の強さに俺達は皆目をつぶりそれに耐えた。

「くっ…な、なんだ…?」

そして次に目を開けた瞬間には、龍の姿はなかった。

だが代わりにそこにいたのは、真っ白な鎧を身に着け鋭い眼光でこちらを睨みつけていた男だった。

歳は30代ぐらいだろうか?

顔のほりが深く表情はうまく読み取れない。

体つきは筋肉隆々でところどころに歴戦の傷跡が残っていた。

身長は180をゆうに超えているだろう…

「だ、誰だお前は…!」

「わが名はエンド…エンド・ベルグ!龍人の血をひくものだ!」

「龍人…?」

その単語には聞き覚えがあった。

それはここに突入する前の宿できいた話だ…

龍人には気をつけろ―

人間とドラゴンのハーフ、国の守護者…

そんなもの本当にいてたまるかと思いたかったが、目の前でこんなことが起こったのだ…

「一応聞いてみるが…さっきの白い龍はお前か?」

「もちろん、私だ」

ずどんとした低音が否に腹に響く。

こいつの声はどこか威圧感があり、本物の龍の咆哮のようなものを感じさせる…

声だけで俺たちはこいつに圧倒されてしまっていたのだ。

「質問はそれだけか?ならば私からも質問だ、貴様、何者だ?」

「俺か…?俺は、夜舞ケント…人間だ」

「本当に…ただの人間か?それに国籍は?」

「もちろん俺はお前とは違って純粋な人間だ。生まれも育ちもオシリスだが、それがなんだ?」

「ならばなぜそれが使える!それは我が一族にのみ使うことが許された伝説の剣なのだぞ!」

エンドと名乗った男はドラゴン・スレイヤーを指差して怒りの声を荒げた。

「ただの人間…それも他国のモノが扱えるはずもない!なのになぜ貴様は…いや、そんなことはもはやどうでもいい。貴様を殺して取り返せばいいのだからな!」

エンドのその言葉だけでこの場の空気が一瞬にして変わった。

ただの空気のはずなのにピリピリと冷たく肌にまとわりついてくる…

これは…明らかな殺意…それも今まで出会ったことのない程の…

「くっ…足が…震える…」

そのさっきにあてられて本能はやつとの戦いを拒む。

その証拠にさっきから足は止めどなく震えてしまっていたのだ…

「さぁ!貴様らはここで骸となるのだ!おとなしく死ね!」

鬼気迫る形相でエンドがこちらに飛び込んでくる。

それはまさに龍そのもの。

巨体に防具をつけていたとしても弾丸のような速さで俺の元に飛び込んできたエンド、その拳が俺の身体を吹き飛ばした。

「かはっ…!」

まるで鉄球でもぶつけられたかのような衝撃がその拳から放たれた。

衝撃は神経に痛みとして走る。

かろうじて数歩後ろに引いていたからまだ何とか耐えられたものの、もし動けていなかったら肋骨の粉砕だけでは済まなかっただろう…

「これが…龍人の力…」

龍の時も厄介だったのに人の時となるともっとだ。

ドラゴンならあの巨体だし動きも少々鈍いが、人となると対象も小さいし動きも俊敏だ。

くそ…こんなに厄介だなんて…

俺はくっと奥歯を強くかみしめた。

鉄の味が口に広がっていくのがかろうじてわかった…

 

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