「これが…神装の力…」
目の前で激しい戦闘を繰り広げるサクヤ、その姿は俺の目には追えるものではなかった。
俺に見えているのは彼女の剣斗エンドの剣がぶつかったときにおこる火花と、彼女たちが切り裂いた空気の後のみだった。
この戦いの中で、俺はエンドの隙を見つけなければならないのか…
プレッシャーに潰されそうな心を必死に鼓舞して俺は剣を構える。
「ドラゴン・スレイヤー…俺に力を貸してくれ…!」
いまだに隙が見えない彼女たちの戦い、それはまるで永遠に繰り返されるのではないかと思うほどだった。
「ただ打ち合ってるだけじゃ勝てない、か…だったら…咲き乱れる花たちよ…私に力を貸して!【スパイラル・フラワー】!」
サクヤの叫びとともに彼女の周りに花びらが舞い踊る。
それはまるで春を告げる天女を祝福するかのように彼女の周りを踊っていた。
そしてそれはすべて彼女の剣先に集中し巨大な螺旋状の剣を作り出す。
「ただの花びらだと思ってたら痛い目見るよ…?貫けぇぇぇぇ!」
彼女は渾身の力を込めて剣を突き出した。
だがそれをエンドは巨大な剣の腹で受け止めたのだ。
「これで終わりなわけないでしょ?」
サクヤがニヤリと笑う、その瞬間剣にまとわりついた花びらが渦を巻きかれを飲み込まんと踊り狂う。
それはまさに花びらの台風とでもいうべきか、彼女の周りを渦巻く花びらはまさしく凶器だった。
「【フラワー・スパイラル】それは花びらを台風のように渦巻かせる力、あなたはそれを剣をドリル状のモノにする力と勘違いした、敗因はそこね」
実際俺もそう勘違いしていた。
言われてみれば確かに違うかもしれない、だって剣をドリルにするのは「チェリー・スパイラル」という技名だったからだ…
(ややこしいな、オイ!けど…そのせいか今回は助かったのかもな…)
「ケント!ボーっとしてないで!早く!」
その声にはっとして俺はエンドを見た。
彼は今サクヤの剣戟と花びらの台風を抑えている最中、これはまたとないチャンスだ。
俺は剣を握りなおしてエンドに襲いかかる。
「なめるなよ小娘がぁ!」
だがエンドへ剣の腹を力任せに振るいサクヤの剣を弾き返す、そしてその勢いのまま台風も撃ち落としたのだ。
だが体勢を崩した彼はそのまま一歩後ろへと退く。
「ほんとに後ろでいいのかな…?」
ニヤリと口元を引き上げたサクヤ、彼女が指をぱちんと弾いた。
それと同時にエンドの足元からイバラのようなものが無数に飛び出しかれの身体を拘束していく。
「私の【木の葉】の能力、植物を自由に操ることができる…私はそこにそのイバラの種を仕掛けておいた、それは私の合図で急成長をはたしてあなたに絡みつく、そういう寸法ね」
まさかここまで計算していたというのか…
さすがサクヤだ、伊達に委員長名乗ってないな…
「さぁケント!やっちゃって!」
「おう!…覚悟しろよ…エンド!仲間を信じた、俺たちの勝ちだぁ!」
俺は思いきり剣を振りかぶり彼をぶった切る。
いや、ぶった切ろうとした。
俺が剣を振りかぶる一瞬前に、それは起こったのだ。
「な、なんだ…!?じ、地震…!?」
「このタイミングで…!?」
突然洞窟内がガタガタと揺れ始めたのだ。
そのため俺は体勢を崩し絶好のタイミングを逃してしまった。
それだけではない、エンドは龍の姿へと変身しやすやすとイバラの拘束から逃れてみせた。
「お、お前卑怯だぞ!」
戦争に卑怯もないと知っていながらも飛び立った龍にそう叫ぶしか俺はできなかった。
「せ、センパイ!ここ、潰れそうなんだけど!」
「な、なに…!?」
「ケント!早くこっちくるです!潰されるですよ!サクヤも早くするです!」
ガタガタと揺れが増していく洞窟。
足場が震え不安定になるも俺は走る。
「ヤバい…!潰れる…!」
誰かがそう叫んだのと同時、洞窟の天井は崩れ去った…
「お、おい…大丈夫か?」
「な、何とか…お兄様は大丈夫ですの?」
「あぁ、俺はなんとか…イツキは?」
「大丈夫…っていうか起きてないよ…」
「そうか…しかし、いきなり地震なんて…運が悪いにもほどがあるぜ」
イリヤが操る人形の報告を待つ間洞窟にひっそりと隠れていた俺たちだったがつい先ほど起こった地震で危うく死にかけた。
ガラガラと壁は崩れるし砂埃は目を襲うしさんざんだ。
「う、う~ん…なにぃ…?何が起こったのぉ…」
「今頃お目覚めとは…イツキも鈍感だなぁ」
眠たそうに目を擦りながら起き上ってくるイツキ、その態度を見る限り傷口の痛みは収まったようだ。
「お兄様、あそこ、見ていただけます?壁が崩れ落ちて新しい道が出来てますわ」
「そ、そうだな…どうする?」
「私は進んだ方がいいと思う…だってここでイリヤの人形を待ってるよりもいいと思うし」
「ウサギにしてはまともな意見だな」
「ウサギちゃんはいつも真面目なんです!だから真面目な意見しか言いません!」
「はいはい、わかったわかった。で、どうするイリヤ?進むか…?」
「そう、ですわね…確かにウサギの言う通りかもしれませんわ。ここで待っていても出口が見つかる保証がない、ならば進んだ方がよさそうですわね…」
「なら、進むか…イツキ、肩貸してやるから、頑張って歩いてくれよ」
「ありがとセンパイ…」
俺達はそのまま洞窟にできた横穴を進み始めた…