終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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垂れ落ちる涙は雷

「うぅ…お姉ちゃん…」

一通り泣き終ったキラは目を真っ赤にして必死に冷静さを取り戻そうとしている。

嗚咽混じりの呼吸が耳にやけにうるさく響いた。

「とにかく話をまとめたい、お互いの持っている情報を交換しないか?」

と、ナイトの提案に皆が頷きそれぞれの経緯をきいた。

洞窟で起こった地震はネムの仕業であること、あのドラゴンがエンドという名のこと、そしてその彼が龍人であるということ…

「龍人、かぁ…で、その対処法がケントがもっているそいつってことか?」

「あぁ。このドラゴン・スレイヤーじゃないとアイツに致命傷を与えるのは難しいだろうな。なんてったってアイツの硬い皮膚の前にはどんな刃だろうとなまくらみたいなもんだからな」

ケントはそう言って例のドラゴン・スレイヤーを振ってみせた。

ぶんと鋭い音が空気を裂いた。

「しっかしあのドラゴン、不死身かよ…落石から生き延びるって相当だぜ?」

「ですけど羽は封じ込めましたわ…もう飛べないので戦うのは以前より楽になったと思いますわ…」

「それでもアイツと戦うのはゴメンです…」

当面の最大の脅威はエンドという龍人だ。

しかしアイツを倒したところでまだ後には強敵が控えているだろう。

岩を扱うヒルデという女、デンシとリュウセイを殺したあの仮面の男、そして異能を無効化する謎の車いすの人物…

進むにしろ撤退するにしろこいつらのいずれかとは闘わなければいけない運命なのだろう…

憂鬱な考えが頭をよぎりそうになるのを必死に抑え込むため頭(かぶり)を振った。

「まずは対抗策を考えて…」

俺が話しを始めようとした瞬間、それはおこった。

洞窟の壁が大きな音を立てて崩れ落ちたのだ。

そしてそこから現れたのは例の白龍、エンドだ。

奴の口元にはイツキのモノであろう血がべったりとくっついていた。

「エンド…!よくもお姉ちゃんを…!お姉ちゃんの仇、とらなくちゃ!」

因縁の相手を見つけたキラは目の色を変えてやつへと飛びかかろうとしている。

だがそれを制止したのは大きな腕、そう、ユラの腕だった。

「待てキラ!今までの戦いからアイツにはお前の防御は聞かないってことはわかるだろ?これは無駄死にだ…ここは、俺に任せろ…」

「ユラセンパイ!止めないで…!これは私の問題だから…」

「仲間が殺されたんだ…もう俺たちの関係だろ…?」

そしてユラは力強い一歩を踏み出した。

その一歩とともにバリバリと電撃が地面に走った。

一歩、また一歩と歩を進めるユラ、その度に彼の身体からは電流がほとばしった。

それはまさしく彼の怒りを具現化したかのようだった。

「神装【ゼウス】…発動!」

ユラの咆哮のような低い声とともに彼の身体に雷撃が絡みつく。

そしてそれは彼の体を覆う黄金の鎧となった。

目映いぐらいの黄金、バチバチと飛び散る電撃の火花、そして彼の190ほどあろうかというほどの巨体を上回る大きさの剣が彼の体を覆う装備として現れた。

ユラの剣、とても大きく太くて、それは切るというよりは叩き割ると表現した方がいいだろう…

そんなごつい剣をユラは片手で悠々と持ち上げている。

なんて馬鹿力なんだ…これが、神装をまとったものの力…

「おい、ケント…そのドラゴン・スレイヤー…借りていいか?」

「あ、あぁ…いいぜ」

ケントがユラにドラゴン・スレイヤーを手渡す。

だがその瞬間、その剣は真っ黒な電流を放ちユラの身体を襲う。

それは剣の拒絶反応にも見えた、今の剣の主であるケント以外に使われたくないという意思表示のようだった。

「ユ、ユラ…!?す、スマン!こうなるなんて知らなくって…」

「大丈夫だ…要するに…じかに触れなけりゃいいんだろ?」

にやりと笑ったユラは自分の腕から電流を放ちそれを剣に絡みつけた。

それはまるで手の延長のようだった。

ユラは雷の手を操りやすやすとドラゴン・スレイヤーを掴んで見せた。

「やはり電気で掴んでいる間は何も起きない、か…なら…やつをこれで殺せる…!」

納得したように頷くとユラはその巨体をまるで弾丸のような速度でやつに向かってつっこんでいった。

大剣と龍殺しの二刀流、ユラは実に見事な剣捌きでやつの身体に攻撃を仕掛けていく。

ドラゴンは手負いということもあり前のように素早い動きはできない、そこをチャンスとばかりにユラは連撃を仕掛ける。

「すごい…これなら…勝てる…」

ユラの戦闘を見て誰もが彼の勝利を確信した。

だけど何故だろう…胸にざわざわとした不安がうずめく…

あれだけ皆が苦戦した相手だというのにこんなに容易く倒してしまっていいのだろうか?

もちろんユラが俺たちより格段に強いことは認める、けれど…何かおかしい…やつには…まだ何か策がある…!?

「ユラ兄ちゃん!勝てー!」

「おう!やっちまえユラー!」

俺の不安を知らない他の仲間は嬉々としてユラに声援を送っている。

たぶん…俺が慎重すぎるだけ、だよな…?

「これで…終わりだ!」

ユラが大きく跳びあがりドラゴンの頭上から剣を振り下ろす。

だけどその瞬間、やつの口がニヤリと笑った気がした。

「まさか…」

俺の悪い予感は的中した。

多分やつはこの瞬間を待っていたのだ。

エンドの口には溜まったエネルギー波、それは俺たちが見たときよりも大きく、たぶん彼の最大の力がたまっているのだろう…

それはもう発射体制が整っていた。

ユラの剣戟が入る前に、やつのブレスが決まる…

「俺を…なめるなよ…!最大出力!リミッター解除!」

「ユ、ユラ!?それだけはダメだ!リミッター解除だけはいけない!」

「そ、そうだよ…!まさかあなた死ぬ気なの!?」

ナイトとサクヤが焦りの声をあげる。

ユラとの付き合いが長いこの二人がこんなにあせっている、ということはこのリミッター解除というのは相当な技なのか…?

「な、なぁ…サクヤ…ユラは、何をしようとしているんだ?」

不安を押し込めて必死に声を絞り出して俺はサクヤに尋ねた。

どうしてもこの胸の不安を消し去りたかったのだけれど、彼女から帰ってきた答えは残酷だった。

「ユラの能力は体に負担が無いぐらいに収まっているの、要するにリミッターがかかっているわけ。けれどそれを解除するっていうことは体に異常なほどの電流が走るってこと」

「ユラの異能の力は学園で一番高いって言われている、もちろんリミッターをかけた状態で、だ。それにタダでさえアイツは神装を使った後の身体への負担がデカい…リミッターなんて解除すれば、内臓が焼け焦げて死ぬ、医者がそう言ってたよ」

何だよ…なんだよそれ…!

結局俺はまた、誰も守れないのかよ…!

「うあぁぁぁぁぁぁ!」

遠くでユラの雄叫びが聞こえる。

彼の身体はもはや電気の塊といっていいほどだ。

もうリミッターは解除されかれは最強の力を手に入れたのだ。

今のユラの姿はもはや鬼だ、雷を操る鬼、雷神様だ。

「貴様はここで死ね…!俺とともに!雷斬破(らいざんぱ)!」

彼の全身全霊をかけた一撃とドラゴンの最大出力のブレスが放たれたのはほぼ同時だった。

激しいエネルギー波のぶつかり合いは辺り一帯を目映い白で塗りつぶして爆風を巻きあがらせた。

舞い上がる砂埃、遠くで聞こえる唸り声、激しい電流の流れる音…

その全てがやつとの戦闘のすさまじさを表していた。

「ユラぁ!」

そんな中ナイトの叫びだけが無惨に聞こえた…

 

 

もうすぐ、砂埃が晴れる。

この先に見えたモノが、戦いの勝者だ。

俺は目を凝らして砂ぼこりの先を見た。

そこにはゆらりと立ち上がった巨体の持ち主…

「ユラ…!」

けれどそれは俺たちの期待を瞬時に裏切った。

砂ぼこりの先から出てきた人物、それはユラと同じぐらいのガタイの男だった。

「貴様が…エンドか…!」

彼は体のいたるところから出血をしているもののまだ戦う力を残していた。

その証拠に彼の真っ赤な瞳はきっとおれたちを睨んで離さない。

「ユラ兄ちゃん!ねぇユラ兄ちゃん!返事してよ!お願い…!ユラ兄ちゃん!」

隣でユラの義妹、ヒカリの声が聞こえる。

彼女の声は涙でぬれていて最悪の状況であることが一瞬でわかった。

「くっ…やつは今まで出会った中で最高の戦士だ…人の姿になっていなければおそらく道連れにされていたところだろう…さぁ、少し時間をやる。その間に最高の戦士の死に顔を拝んでくるといいさ」

「エンド…!貴様が殺したというのに…!」

「戦場とは常に命の奪い合い…それが分かって貴様らは戦場に立っているのだろう?もしやそれもわからずに戦っていたのか?」

「くそ…!」

今はやつの言動に怒りを覚えている時じゃない…

ユラだ…ユラがどうなったのか…

「ユラ兄ちゃん…!お願い…目を開けてよぉ!」

「これは…酷い…全身真っ黒こげだ…」

それは見るに堪えないモノだった。

かつてユラだったものは真っ黒に焦げて異臭を放っていた。

身体にはいまだに電流が走り彼の力がどれだけ強大だったかを物語っている…

彼の手にぎゅっと握られた大剣からのみ彼がユラだと判断できるほどの亡骸…

また、俺は仲間を守れなかった…

この短時間に二人も、俺達は大切な仲間を失った―

 

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