何だ…この殺気は…
身体の奥まで凍ってしまいそうなほどの鋭い殺気に俺はぞくりとした。
これが…あの少女から出てきているのか…?
「殺龍装備…グラスソード…解放…!」
さっきまでとは一転した彼女の冷たい声が響いた。
それと同時に彼女の両腕に透明な剣のようなものが存在していた。
それはまさに腕から飛び出た、としか見えないもので…
「命令を遂行…オーバーリミットを一時的に解除…」
剣を胸の真ん中でクロスに構えた彼女の瞳が赤く光っていた。
赤い目でエンドをとらえながらも彼女の口は何かを唱えていた。
それは魔法を唱えているわけでもなく、例えるなら、そう、ロボットモノのアニメか何かで出撃前にチェックする項目を言い上げていくような、それに似ていた。
「命令…遂行する!」
そして彼女の赤くなった瞳が煌めくと同時に思いっきりのスピードでエンドの懐まで入っていた。
「ふん!小娘ごときに殺される我ではない!」
エンドは少女の軌道をよんでいたかのように思いっきり彼女の頭上に剣を振り下ろした。
しかし少女は小さくしゃがむとまずは一発、彼女の腹に剣戟を食らわしていた。
「なに…!?」
「遅すぎます…あなたの攻撃は隙が大きい、その隙を突けば攻撃をあてるなど容易い」
何だ、彼女のあのしゃべり方は…
さっきは見た目通り可愛い感じだったのに、今は機械的というかなんというか…
そのギャップに何か心の奥でおそれのようなものが生まれていた。
けれど彼女は俺の命令で動いているんだよな…味方、と考えていいだろう…
もし敵だったらと考えただけでゾクリとしてしまうな。
「そんな攻撃で我の攻撃を止められると思うなよ…ふん!」
エンドは攻撃をくらってもびくともせずにそのまま彼女の脳天に大剣を振り下ろしていた。
奴の装甲は厚い、なので少女の剣ではダメージを与えることができなかったのだろう…
いや、そんなことより…
「危ない!避けろ!」
「ご主人様の命令でもそれだけは受け付けられません…!」
だけど少女は避けることはしなかった。
このままでは脳天をかち割られて頭の中身がぶちまけられてしまう…!
危ない…!そう思った瞬間彼女は両の剣で大剣を防いだのだ。
けれど彼女の力ではすぐに押し負けてしまう。
ここからどうするのか…
「スパイクブレイド…インストール…起動!」
少女のその呟きとともに彼女の足が光り輝く。
そして次の瞬間には彼女の足に腕と同じ光の剣が飛び出していた。
「喰らえ…斬裂!」
彼女は足をあげてエンドの首元を狙い、そして切り裂いた。
予想外の所からの攻撃からかエンドは一瞬対応が遅れた、そこが勝負の境目だった。
少女の足の剣はエンドの首元を切り裂きそこから血が大量に噴き出していたのだ。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
彼は咆哮する、それは地鳴りにも近い衝撃を帯びていた。
「我が…負ける…?ありえない!こんなわけのわからない小娘に負けるなど…有り得ない!」
「見苦しい…エンド・ベルグ…貴様、それでも龍人の、いや、我の末裔か?」
「な、なに…!?ど、どういうことだ…!」
「我はこの国の建国者…初代の王!名前は生憎覚えていないがな」
「な、なぜあなたがこの世に…!?」
「我の魂はあの龍殺しの剣とともに長年の眠りについた、次にこの国が危機にさらされるまで…だがご主人様にムリヤリ眠りを覚まされた」
「ですがなぜアイツらに力を貸しているのです!?」
「それが我もよくわからんのだ…剣を無理やり引き抜かれたときに我の記憶や心に傷がついてな…目覚めたときにはなぜかご主人様たちについていこうと思っていたのだ」
ということは…アイツが味方なのは俺のおかげ?
いや、でも記憶に傷がついたって言ってたし、それは俺のせいか…
もしかするとアイツの本心は青の国側にあるけど、俺のせいでその本心を崩されて…
けどそんなことはどうでもいいか、あいつが敵じゃなくて味方でいる、それだけで十分だった。
「我は久しぶりに話して疲れたぞ…そろそろ終わりにしようか」
「くそ…我の祖先が…建国者がこんな少女の姿で…くそ!」
エンドの奴…出血多量のせいで思考がおかしくなったのか?
多分怒るところはそこじゃないぜ…
「殺す…貴様らは許さん…先祖の顔に、栄光に泥を塗ったこと…許さんぞ!」
「はぁ…我は泥を塗られたとは思っていないんだがな…」
ため息と同時に彼女はエンドに背を向けた。
何故、背を向けたのか…?
いや、違う、あいつは、振り向きざまに、エンドに攻撃をしていたのだ、それも目に見えない速さで。
その証拠にエンドの身体からには無数の傷がつきそこから血が噴き出していた。
「くぉぁぁぁぁ!」
「ゲーム…終了…戦闘モード、解除…」
彼女が腕を振ると纏われていた光の剣が空中に霧散した。
それと同時にエンドが大きな音を立ててその場に倒れた。
「ご主人様~!見ていてくれましたか!?やりましたよ!ちゃんと命令を守りました!」
「ほ、ほんとに…倒したのか…?」
俺はエンドの身体に近づいてみる。
彼はありえないといった風に目を大きく開き、息を引き取っていた…
「えへへ~ご主人様~褒めてください~頭なでなでがいいです~」
「なぁ…お前、ほんと何者なんだ?さっきの戦闘と言い会話といい…この国の初代の王?どういう事か説明を…」
「ごめんね…戦闘の時何を話したのか…あまり記憶が無いの…ただ…頭の隅にはこの国を導いてたって記憶があるけど…あんまり詳しく思い出せないんだ、覚えてるのはこの剣の中でずっと眠っていたことだけ」
そう言ってドラゴン・スレイヤーを指差した。
そう言えばあの時県から何か出てきたように見えたが…こいつだったのか…
「そうか…えっと…そうだった…名前、ないんだっけ」
名前が無いと呼ぶときに不便だな。
俺は少し考えて、思いついた。
「零夜(レイヤ)、なんてどうだ?」
「もしかしてケント…ドラゴン・スレイヤーから出てきたからレイヤ、なんて安直な考えじゃないです?」
「え、え~と…」
「はぁ…やっぱりそうです…」
「レイヤ…気に入りました!ご主人様がつけてくれたレイヤって名前、大事にする!」
マリナはジト目だったけどこの少女、レイヤは気に入ってくれていた。
「えへへ~…レイヤ嬉しいなぁ…ご主人様にこんなに素敵な名前を付けてもらって…それでご主人様?さっきレイヤに何かききたそうだったけど…?」
「あぁ、その…さっきの戦いぶりなんだけど…どういうことだ?まるで人が変わったみたいだったんだけど…」
「それはレイヤの異能の事かな?レイヤの異能はね戦闘遊戯者【バトル・ゲーマー】って言ってね、戦う時にバトルシステムを体内にインストールして発動するの。人格も変えれるし…あ、もしかしてレイヤの別人格のほうに記憶が残ってたからご主人様が気にしてたこと喋ってたのかも…」
「なるほどなぁ…それじゃさっき自分のこと我とか言ってたり男みたいな口調だったのも…」
「たぶんシステムをインストールしたからだと思う…」
「やっぱりか…お前の異能って結構すごいんだなぁ」
「そんなことないって!ご主人様の異能のほうがすごいよ!」
その瞬間その場のみんなが驚いたように固まったのが見えた。
俺自身驚きで一瞬息が止まったぐらいなのだ。
「え…?お、俺…異能…あるの?」
「もしかして…ご主人様知らなかったの?」
知らなかったも何も俺には異能と呼べるべきものが使えなかったし…
それを嫌に思ったから剣の修業を一生懸命して…
「な、なぁ…俺の異能って…?」
「ご主人様の異能は…剣の達人【ブレード・マスター】この世のどんな剣でも触れるだけで自分の手足のように操れる異能…その異能は最大の封印をされたレイヤを起こすほどの強さ…」
「い、言われてみれば…俺、どんな剣でも握った瞬間にまるで昔からの相棒だったかのように使えるし…これが…俺の異能だったのか…」
な、なんか…
「地味だな」
確かに地味だけど、こうしてレイヤを仲間に加えることができたし、俺の能力って結構すごいかも…?