敵の兵力は軽く50ぐらいか…
それぐらいなら仲間たちが何とかしてくれるだろう。
だから俺は、こいつとの勝負に集中することができる…
「さぁ…いくぞ!」
俺は腰に下げていた愛用の刀、そして龍殺しを抜きショウを睨んだ。
ショウも同じように軍刀を抜き俺に向けてかまえた。
鈍色の剣先が光を反射しきらりと輝いた。
多分この鋭い切っ先を一回でも相手につきいれた方が勝者になる…
お互い剣を構えじりじりとにらみ合う空白の時間が訪れた。
重苦しい沈黙とピリピリした空気が俺にのしかかる。
耐え切れずに相手に攻撃したくなる気を抑えて俺はじっと相手の出方を待った。
相手の本気の実力はまだ未知数…その状況で動くのは危険すぎる…
けど、でもこの状況が続くのも俺の精神衛生上問題アリだ…
ショウの鋭い獣のような眼光がきらりと光る、と同時に彼はものすごい勢いで俺に突っ込んできた。
「くっ…!」
まずは一撃、上から襲いかかる剣筋を横に薙いで跳ね返す。
沈黙を破った俺たちはそのまま剣の打ち合いに発展していった。
俺が切り込めば相手は距離を置く、逆に相手が攻撃してくれば俺は二刀の剣で受け止める。
俺たちの力はほぼ互角だった。
キンッ、と金属音を響かせながら激しい剣戟が続く…
「ほう…俺の本気の剣についてこれるなんてな。褒めてやるぞ、ケント」
「ここはアリガトウといっておくべきか…?それとも敵に褒められてもうれしくないって怒るところか?」
「そうだなぁ…答えとしては諦めて負けてくれるっていうのがうれしいかな」
「バカかお前は、ふざけんじゃねぇぞ…俺には負けられない理由がある…!イツキに、ユラ、それにリュウセイにデンシ…アイツらの想いを、楽しく過ごすはずだった未来を背負ってるんだ…!だからアイツらのためにも、俺はかってみせる!そしてこの戦いを止めるんだ!」
「俺だってこの戦いで多くの仲間がやられた…散っていったアイツらのためにもこの戦いは勝たなくちゃいけない…途中で停戦だなんて死んで言ったやつらに顔向けできねぇよ…!」
多分俺たちが背負っているものの重さは同じ。
ただ相手を倒した後の目的が違うだけだ。
俺はもう犠牲を出さないために、こいつは犠牲を無駄にしないために、お互いの相容れない望みのために戦っているんだ…
「お前がどんな理由だと知ったこっちゃねぇよ…俺は絶対に勝つ…!レイヤ!俺に力をくれぇ!」
「フフ、ご主人様ならそういうと思ってたよ…いいよ、レイヤの力、使って」
いつの間にか隣に立っていたレイヤが龍殺しの剣をなでる。
その瞬間ぴかぁとまばゆいばかりの光が剣から溢れ出した。
あまりの眩しさに俺は目を細める。
「さぁご主人様…剣に望む姿を映し出して…?ご主人様の願いに必ず答えてあげる…」
目映い光の中レイヤの声が聞こえた。
それはとても近く、そう耳元をくすぐるような距離から聞こえた。
まるで催眠効果でもあるかのようにとろけるその言葉通り俺は願う姿を描いた…
(俺が願うのは…)
まずはアイツの剣を防げるだけの防御力だな…
今も防げているが俺の手に跳ね返ってくる衝撃は結構なモノだ、このままじゃ先に手がしびれて剣を握れなくなるかもしれない。
次に願うのはアイツより強い力だ…
あの剣をへし折れるだけの力があればきっと価値にうんと近づけるはずだ。
そして最後に願うのは、あいつがアッと驚くギミックだ。
何かしらのギミックを発動できればアイツは驚き一瞬隙ができるはずだ。
(頼むレイヤ…俺の願う剣を…作り上げろ!)
「くっ…お前…目くらましなんて小賢しい真似を…!」
光が消えてだんだんと視界に色が戻ってくる。
まだ視界の端に白が滲んでいるが問題ない…
俺はきっと目を見開いて相手を睨んだ。
「おい…お前、その剣は…」
だけどショウは驚いたように目を白黒させて俺の剣を指差していた。
釣られて俺も自身の剣をもう一度見た。
そこに握られていたのは龍殺しではなく別の何かだった。
刃全体にまるでサメの歯を思わせるような凹凸がつけられている剣が、俺の手に握られていた。
(これが…俺の願った剣の形…?)
俺はもっとかっこよくて強そうなのを想像してたけど…
何だこれは?
刃は確かにのこぎりの刃のようになっているから切断力はあるかもしれない、けれどやはりのこぎりの刃のように薄くどこか頼りない…
それにこんな薄いのにギミックって…どこに隠す要素があるんだよ…
「まぁいい。どんな剣を使ったところで、勝つのは俺なんだからなぁ!」
「くっ…!」
剣が振り下ろされてきて俺はとっさに龍殺しだったものを構えて防いだ。
カキンと音が響き龍殺しにできた凹凸に軍刀の刃がカチリと飲み込まれた。
どうやらそれは奥まで食い込んだようでショウも抜くのに一苦労していた。
(あれ?これって…チャンス?)
「なぁレイヤ…次はいったいどうすればいい?」
(ご主人様は剣を握ってるだけでいいよ。後はレイヤが全部やっちゃうから…いっくよー出力全開!あ、ご主人様、剣に振り回されないように注意してね)
頭に響くレイヤの声に俺は疑問符を浮かべた。
が、次の瞬間そんな疑問はどうでもよくなった。
ぐおん!と大きく音を発した龍殺し、その次にはぎゅおぉぉんという騒音を発しながら刃が回り始めた。
すさまじい振動が俺の手にかかる、それにふり払われないように俺はぎゅっと剣を握りなおした。
「な、なにぃ!?」
回転した刃にショウの軍刀は巻き込まれてガキンとへし折れた。
「そ、その剣は…なんなんだよぉ!」
この剣がどういうモノなのかわからない、けれど俺の頭の中にはその名が自然と刻まれていた。
「龍殺しの剣・モード〈チェイン・ソウ〉」
細かな刃のような凹凸が連鎖して相手を襲う剣、チェイン・ソウだ…!
「これで…俺の勝ちだぁ!」
刃が折れた軍刀などもう俺の敵ではなかった。
俺はチェイン・ソウを振りかざして、ショウに振り下ろした…