「これで…チェックメイトだ…」
まだギュインギュインと騒音をまき散らしながら空気を切り裂いている刃をショウの首元へ持ってくる。
だが彼は動じることはなくまっすぐに俺を見つめてこう言った。
「どうした?早く俺の首をはねろよ…お前の勝ちなんだ」
まっすぐなその瞳に恐怖の色など感じられなかった。
こいつは、死を恐れていないのか…?
「さぁ…早くしろよ…」
だんだんと挑発的な口調になってくるショウに俺は違和感を覚えた。
なんだ…この違和感は…
しかもなんだその笑みは…
まるで自身の勝ちを確信したような…
「ユーリカ!」
突然ショウはそう叫んだ。
けれど事態は変わることが無かった、彼がただ叫んだ、それだけのことだった。
「おい…どうしたユーリカ!?早く…早くしろ…!」
「ユーリカってもしかしてこの子の事です?」
不意に聞こえたマリナの声に俺はふりむいた。
そこには車いすに囚われた存在に銃口を向けたマリナがいた。
「ユーリカ!」
「なるほど…アイツの異能を殺す力、それでこの剣を壊そうとしたわけか。だけど残念だったな、生憎俺の彼女が全部片付けちまったぜ」
「ケントってば堂々と彼女宣言はやめるです…恥ずかしいです…」
ポッと頬を染めるマリナ、それでも銃口はユーリカと呼ばれた存在の頭をとらえていた。
「くそ…降参だ、俺の負けだよ…もう俺には手は残されてない…彼女が最後の希望だったんだよ」
「彼女…?」
まるで囚人のように全身を囚われたあれが、女の子だってのか…?
「マリナ…その覆面、外せるか?」
マリナはこくりと頷くとゆっくりと彼女の顔を覆っていた覆面を外した。
「なっ…」
隠された顔、それは確かに女の子だった。
まだ10歳に届いていないような小さな女の子の顔だった。
けれど俺が驚いたのはそれだけではない。
彼女の瞳は虚ろに染まり焦点さえ存在していない濁った色をしていたのだ。
それに皮膚は栄養失調をおこしたかのように細く張りもなく、そして変色して灰色っぽかった…
「おい…ショウ…こいつは…」
「異能をすべて無効化できる禁忌の力を持つ少女、ユーリカ…その力ゆえ両親にも、国にも捨てられた女の子だ…」
禁忌の…力だと…?
「それはレイヤが説明するね」
いつの間にか俺の横に立っていたレイヤが重く口を開いた。
「青の国には100年に一度、禁忌と呼ばれる異能を持つ子供が生まれるの…禁忌の異能を持つ子供は親に捨てられ国に利用されるだけの道具と化す…例えば、レイヤみたいにね…この人の魂を受け継ぐ力、これも禁忌の異能…だからレイヤはずっと地下に封印されてきたの…」
「そう、彼女もずっと地下に閉じ込められた。両親からも見捨てられた彼女はやがて心を殺した、そう、完全な心のし…今では彼女は息をするただの屍のような存在になってしまったんだ…」
息をする、屍か…
確かにその表現はあっている気がした。
今もユーリカと呼ばれる女の子は何も映らないくらい瞳を揺らして小さな呼吸を繰り返していた…
「なんで…こうなっちまったんだろうな…昔はもっと明るくて優しい女の子だったのにな…」
「お前にとって…ユーリカって…?」
まるで昔を知っているふうな語り口調に俺は思わず尋ねた。
「あぁ…俺の、妹だよ…両親に捨てられたユーリカをずっと世話してたんだけどさ…やっぱり俺じゃダメだったみたいで…こいつは心を殺してしまった…!なぁ…頼むよ…ユーリカを、もう楽にしてやってくれ…こいつも、もう道具のように扱われるのは嫌だと思うんだ」
「なら、お前が…」
「何度もそうしようとしたよ…けど、やっぱり俺にとってはこいつは大事な妹で、殺すなんてことはできないんだ…」
ショウはガッと俺に縋り付いてきた。
その目には涙がたまっていた。
「だから…頼む…お前にとってもつらいのはわかる…けど、俺を倒したお前にしか頼めないんだ…」
涙交じりのショウのその言葉に、俺は―