「キョウヤセンパイの異能がアイギスだったなんて驚きです!ねぇ、もう一回お願いしてもいい?」
控室で勝利の余韻に浸っているキョウヤにイツキはそう言った。
キョウヤとしてはここで休憩しておきたかったがもう一度自分の異能を使ってみた方がいいかと思い実行してみることにした。
「アイギス!」
普通なら魔法の盾が現れるはずだが何の反応もない。
「あれ?さっきは出たんだけどな…アイギス!アイギス!」
「キョウヤセンパイ…もしかしてあれってまぐれなんですか?」
「い、いや…たぶんまぐれじゃないとは思うけど…」
「もういいですよ、センパイ。また一緒に練習して出せるようにしましょう」
イツキはキョウヤにそう言った。キョウヤにしてみれば年下に練習を教えてもらうのは若干不服ではあったが相手がイツキならとしぶしぶ了承した。
「みんなお疲れ様です!勝利の記念にこのマリナちゃん特性オリジナルジュースをあげるのです!」
マリナがジュースを手にキョウヤ達に近づいてくる。
「お、ありがとな、マリナ」
「ありがたき幸せ!マリナ様の特性ジュースが飲めるなど天にも昇る気分です!」
マリナはキョウヤ達にジュースを手渡す。しかしイツキはそれを受け取らなかった。なぜか苦笑いである。
「私はいいよ、マリナちゃんが飲んで」
「遠慮するなです!イツキも飲むですよ」
「いや、いいって。だって私が飲んじゃったらマリナちゃんが飲む分がなくなっちゃうでしょ?」
「む、それはそうですね…ほんとにいいのですか?」
「うん、いいよ。私に気にせず飲んでね」
「じゃあいただくですよ!」
3人は口に飲み物を運ぶ。
キョウヤとケントは口に入れた瞬間吹き出しそうになる。
それは酷く甘ったるい飲料物だった。
口に入れた瞬間粘ついた感触が口内を襲い、喉を通るも粘つきが激しく飲み込めない。
それをマリナはおいしそうに飲んでいる。
イツキはその横で苦笑いで見ている。もしかしてこのことを知ってて放置していたとしか思えない。
「なぁ、マリナこれって内容物なんだ?」
キョウヤは思いきってマリナにそれを聞いた。既に恐怖の飲料物を相手にしたキョウヤにとってはマリナなど怖れるに足らない存在であった。
「ん?これですか?これはシュガースティックと、角砂糖と、粉砂糖、あとはケーキとかの上に乗ってる砂糖菓子を砂糖水といっしょにミキサーに入れて作ったんです」
要するに大量の砂糖と水のみで作った飲み物だった。
「そ、そうか…。ありがとう…」
「もしかして美味しくなかったですか?」
「あ、あぁ…俺は好みじゃないかも…」
そう言いマリナに飲み物を返すキョウヤ。マリナは悲しそうな顔をしていたが一切の罪悪感はなかった。
キョウヤにとっては早くこの飲み物をどうにかしてほしかったのだ。
「ケントはどうですか?」
「お、おう…ま、マリナ様がくれた飲み物は…うぇ…全部おいしいです…うぇ…」
明らかに無理をしながらもおいしいというケント。そこまでマリナに忠誠を誓っているのかとキョウヤは思った。
「そうですか、それは良かったです!ならもっともっと飲むですよ!」
そう言いケントの口に砂糖水を放り込むマリナ。
「うっ…お、おいしい…でふ…」
全てケントの自業自得であったがすごくかわいそうに見えてきたキョウヤ。しかし楽しいので彼は止めなかった。
「キョウヤセンパイ…あれ本当に止めておいた方がいいですよ。ケントセンパイもう死にかけな顔してますし…」
ケントを心配するイツキだったが彼女は今弁当を食べながらこう言っているのである。
「お前そんなこと言ってるけど弁当食いながらだと説得力あんまりないぞ。ってお前その弁当…今日は肉が多いな」
キョウヤは弁当に違和感を感じてイツキに尋ねた。
イツキは肉より魚好きであるが今日の弁当は肉よりなのである。
「あぁ、これ?戦ったらおなか空くしさ、やっぱお肉の方がいいかなぁって」
「あぁ、そういうことか」
「ってセンパイ!早くケントセンパイ助けないと…!」
慌ててケントの方を見るも時すでに遅し。ケントは床に伸びていた。
「気絶するほどおいしかったんですか!?それは良かったです!また作って来てやるのです!」
マリナは意味不明な自己満足を達成し嬉しそうにしている。
「はぁ…まだ浮かれるのは早いぞお前ら。まだ次の戦いがあるんだから」
そう言ってキョウヤはみんなをまとめる。しかし彼は薄い笑みを浮かべていたのだ。