長い戦いも終わりようやく俺たちにも平穏な日常が訪れる、そう思っていたのだがどうやら現実は違っていたようだ。
俺たちにはあの戦いの報告書をまとめて提出するという課題が課された。
面倒な報告書処理が終われば次は事後処理だ。
まず青の国で俺たちが戦った痕跡が何一つ消された。
彼の地にしみこんだ俺たちの血も、涙も、すべてだ。
ただ残されたのは俺たちと渡り合った彼らの記憶だけだった―
「やっと学園か…ここまで長かったな」
「なんであんなの書かなくちゃいけないんだろうね?そのおかげで私とお兄ちゃんがイチャイチャできる時間が減っちゃったじゃん!」
「お前はいつもそこが基準なのな…」
あの戦いを経ても相変わらずなユキを尻目に俺は教室へと歩を進めた。
あれから1週間がたちようやく学園から登校許可が下りた。
ここの教師たちは元軍人で人手不足もあってか戦闘の事後処理に駆り出された人材が多かった。
そのせいで運営がスムーズにいかないということで少しの間休校されていたのだが今日ようやくそれが解除されたというわけだ。
「はぁ…これから授業かぁ…いやだなぁ…」
「そうか?俺は結構楽しみなんだけどな」
「え~!?お兄ちゃんおかしいよ!勉強なんてめんどくさいし面白くないし…何でしなくちゃいけないのかなぁ…」
「それは、まぁ仕方ないよな…けどこうやって授業が受けられる日常がさ、なんか楽しみなんだよ」
あの戦いで俺たちは多くの日常を失った。
そのせいか日常の重みを知って…
まぁそれは建前というかなんというかでして、本音を言えばみんなと笑いあえる日常が楽しみなのだ。
ようやくたどり着いた教室の扉、俺は勢いよくそれを開けた。
日常の扉、その先には俺たちのいた日常が残ってはいなかった。
前のようなにぎやかさはなく空虚な空間のみだった。
そして空虚さを何より際立たせているのは、半数以上の机の上に置かれた、真っ白な花だった。
それは死者に手向けられた、花…
あの戦いで俺たちとは別の部隊、緑の国へ向かったやつらは全滅した。
あまり話した事のない奴らだったけれど、こうしていなくなれば悲しいものだ…
花が手向けられている席の奴らは、もうみんな、帰ってこないんだよな…
俺はその中の一つ、ユラの席をなでた。
俺たちの仲間であり、親友だったみんなが、欠けている。
そんな日常は日常と呼べるのだろうか…
「おっすお二人さん。朝から辛気臭い顔してるけど大丈夫か?」
「もう…笑顔です!ニコニコ笑ってないと幸せが逃げるです?」
「ケントにマリナか…お前ら相変わらず仲いいな」
手を繋いで登校なんて…朝からお熱いことで…
「むむ…お兄ちゃん!私達も負けられないよ!明日から手を繋いで来よ!ううん、それだけじゃ足りないかな…もっとみんなにラブラブしてるのが分かるぐらいじゃないと…」
「あ!ずるい!私もキョウヤとラブラブしたいのにぃ!」
「お兄様!妹のわたくしを差し置いてどういうことですの!信じられませんわ!」
「はぁ…またうるさいのが増えた…」
ウサギもイリヤも登校してきて灰色だった教室内に色が戻った。
そしてまた続々とみんながやってきて教室内に騒がしさが生まれた。
失われたものは多いけど、結局俺たちの下に日常はやってくるのだ…