終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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神話の力

「さてナイト君…何を話そうか?」

「え!?ノープランだったのか!?」

あまりにも予想外のセリフに俺は思わず素っ頓狂な声を上げた。

ツグミはそんな俺の様子を見てにやにやと笑っている。

「いやぁ…私の仕事の身の上場ね、あまり他人と話をする機会ってのが無いんだよ。話をしてもほとんど仕事の事だしね」

「なるほど…」

「科学者っていうのは大変だよホントに…寝る暇もなければ食事すらろくにできない…そのうえ成果が出なければ給料が出ない…これって絶対ブラック企業だよ…」

はは、と乾いた笑みを浮かべながらうんざりとツグミが言った。

けれどその言葉とは裏腹にどこかそれが楽しそうにも思えた。

「でもね、私の研究が世間に出回って誰かの役に立ってるんだって思うととてもうれしいんだ。私の開発が、みんなを助けてるって思うとうれしくって飛び跳ねてしまいそうになる…」

「ツグミの作ったものって何があるんだ?」

「そうだなぁ…いろいろあるが、やっぱり一番は肉体構成、いわゆるクローン技術の開発かな」

「クローン!?」

「あぁ、それも意思を持つ完全なクローンのね。まぁワタシはそれの神経回路しか携わっていないんだがね。人間の意思をインストールすることに成功したのはまた別の科学者だよ」

クローンなんてものが世に出回ったら本当に大変なことになる…

人間が人間としての意味を無くしてしまう…

命の輪のバランスの崩壊だ。

「あぁ、勘違いしないでくれ。クローン技術が成功したからといって人間をまるまる一人作り出すとかそういうのはほとんどしてないから。私達はその技術を応用して人のパーツを作ってるだけ」

「体の不自由なパーツを作って差し替えるってことか?」

「そう、たとえそれが心臓でも作り変えることができるよ。けど心臓は体になじまない可能性が高いから移植はおススメしないよ」

ツグミは自分の研究成果をまるで子供が自慢するかのように爛々と語る。

その瞳に映る少女のような瞳の輝きに俺は魅了されていた。

「それじゃあここはクローンの研究所ってことか?」

俺はふとそんなことを尋ねた。

俺達が一番知りたがっていることを尋ねた。

けれど、その瞬間に彼女の顔に曇りがさした。

「そうですよね…侵入者の俺には教えてもらえるはずもないよな」

「いや、教えるよ…私がここで行っていた研究を…」

ツグミはタバコを深く吸い込み淡々と口を開いていった。

「私がここで作っていたモノ、それは世界を終わらせるモノだ…」

「世界を、終わらせるモノ?」

「いや、正確に言えばこの戦争を終焉に導くためのモノだ」

「なに…!?」

この長く続いた戦争を、終わりに導く何かを、ここで作っていたというのか…!?

「戦争の終結、それが全人類の願いであり希望だ…誰もそれを表面上には出さないけどきっと願っている。自分の愛する人が、急にいなくなったりすることのない世界を…キミもそうだろう?この戦争が終わってくれれば、なんて考えたこと、あるだろ?」

「あ、あぁ…確かに、この戦いが終わればいいって思ったことは何度もある…みんなと楽しく暮らせたらいいなって、ずっと思ってた、いや、今も思ってる…」

この無益な殺戮の日々を終わらせたい、俺は常にそう思っていた。

だから俺は戦いを終わりに導くために、戦いの日々に身を投じていたのだ。

それがどんなに矛盾しているかはわかっている。

けれど、愛する人を守るためには、見知らぬ他人の愛する人を殺すことでしか、守る術を知らなかったのだ…

「キミの願いは、もうすぐ叶うよ…私の作ったシステムによって…」

「なぁ…それって大殺戮を引き起こす兵器、とかじゃないのか?」

「いいえ、違う…これは神話の力、はるか昔神々の時代から言い伝えられてきた伝説の力なの…」

「は?神話?伝説の力?」

まさか科学者がそんなオカルトみたいな話をするなんて思ってもみなかった。

「キミは知ってるかな、この大陸に伝わる神話を…世界が災禍に満ち溢れた時、7つの宝具をそろえしホムンクルスが災禍を断ち切り終焉を迎える…」

その伝説は昔から語り継がれてきた伝説だ。

俺も幼少期に絵本で読んで知っていた。

7つの宝具を持ったホムンクルスの少年が災いの象徴として描かれている龍を倒すお話だ。

「あぁ…けど、それが…」

「私たちは、その中のホムンクルスの少年を作ったんだ」

「ま、まさか…」

確かホムンクルスっていうのは錬金術師が作り出した人造人間だったはず。

ツグミ=錬金術師、クローン=ホムンクルス

そういうことなのか…?

「そう、キミがおもっている通り…私は災いを断ち切る少年を作り上げた。錬金術師としてね」

「け、けど7つの宝具は…」

「7、この数に心当たりはない?神話の時代から続く7の数を…」

「昔から7つあるもの…国だ!この大陸の国の数!黒、白、銀、赤、青、緑、無色の7つだ!…けど赤の国は…」

「黒の国から独立した、けれど私たちが知るもっと昔に赤の国が黒の国にのまれていた」

「そうか…赤の国は復活したのか…俺たちはその時代を知らないから新しく国が出来たと思っていたが…本当は赤の国が再生したんだ!」

「そう…そして7つの宝具はその7つの国に一つずつある。建国の助けをしたアイテムなの」

それも俺たちの国ではおとぎ話として語り継がれている。

古の時代、クリスタルの輝きとともに一人の青年が国を開拓した、と…

そしてそのクリスタルの透明な輝きから、無色の国、と名付けられた、と。

「無色のクリスタル、青の聖剣、緑の種子、赤の鎧、白の聖書、銀の銃、そして黒の魔剣…この7つの宝具がそろえば、世界に何かが起きるはずなの」

「そんなオカルト話、信じられるはずない…」

「けどこれを信じなくて何を信じればいいの!?もう私達にはこんなオカルトしか頼みの綱はなくなってしまった…」

今までにない程の声の大きさにびくりとしてしまう。

俺のそんな様子を見て申し訳なく思ったのか彼女は少し縮こまってしまった。

「でもね、これももうすぐ集まるの…すべて黒の国が…」

「黒の国…?どうして黒が出てくるんだ?」

「私たち銀の国は黒の国に服従した。銀の銃をさしだし不可侵条約をえるとともにね…黒の国はこの伝説を実現させるべく各国に戦いを挑むわ…まずは青と緑の連合国に戦いを挑むでしょうね…あの日和(ひよ)った国ならすぐにつぶせる、とね」

「最近黒の国の出撃頻度が高いと思ったらこういうことだったのか…」

しかしなぜあの黒の国が災いを断ち切る、なんて伝説を信じたんだ?

奴らは一番この国で血気盛んで残虐性を秘めている危険な相手だ。

その理由を考えるもいくら考えても答えなんて出るわけもなかった。

「キミたちも早く降伏した方がいいよ。今のアイツらなら国民すべてを殺しても奪い取ってくるはずだ…」

俺はみんなにこの事実を伝えるべく方向を変えた。

「ねぇ…戻ってきては、くれないかな?まだキミと話がしたいんだ…」

「あぁ…また、あとでな…けど、すぐに戻ってくるよ。必ずな」

俺はそのまま元来た道をすんなりと帰った。

振り返り様彼女の少し悲しげな瞳が俺をとらえていた…

 

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