「さて…腹ごしらえも終わったことだし…少し昼寝するか?」
食事を終えたツグミがにやにやと笑いながら俺にそう言った。
「おいおい…ツグミ…」
「冗談だよ。キミの知りたいこと、すべて教えるよ」
「え!?マジで!?」
「マジだよ。だって君はそれが知りたくてここに来たんだろう?私はすべて包み隠さず話すつもりだ」
俺は呆気にとられて思わず口を開けて呆けてしまっていた。
あまりにも簡単に話をききだすことができたからだ。
頭の中ではどうやって話を切り出そうかとかずっと考えていたのだが、その手間は省けたようだ。
「けど…何で…?」
「う~ん…何となく、さ。ま、私の気まぐれ、とでも言っておこうか」
「ありがとな…ツグミ…」
「けど、話を聞き終わったら、私のお願い、聞いてくれるかな?」
「ツグミのお願いを?どんなだ?」
「ゴメンだけど…それは話し終わったら話すよ…あとだしみたいで悪いけど…」
「う~ん…俺を使って人体実験とかじゃ…ないよな?」
「も、もちろんだよ!あ…でも言われるとちょっと興味でてきたかも…ナイト君の身体を切り開いて中身を全部見てみたいかも…」
ぺろりと舌なめずりをする彼女に俺は危険を察して少し後ずさった。
真っ赤なしたがレロリと動いたその瞬間、俺の中でイケない何かがうずめいたのは気のせいではないだろう…
「あはは!冗談だよ冗談!キミってばそんなに本気に逃げなくてもいいじゃないか、少し悲しいぞ」
「冗談、だよな…冗談」
けどあの時の瞳、あの探究心に満ちた科学者の瞳は、本気だった気がする…
「さぁ、取引成立だ。話を聞いた後にやっぱりダメっていうのは無しだからな」
「あぁ、大丈夫だ。どんとこい」
俺はボンと自分の胸元を叩いた。
すると彼女は安心したように微笑んだ。
「…で、キミがまず聞きたいことは何かな?」
「ここで作っていたモノ。ホムンクルスって言ってたけど…それは黒の皇帝の子供じゃないのか?」
「あぁ…やっぱりそれか」
予想していたとはいえさすがにばつが悪いのか彼女は少し顔をしかめた。
少しうつむいたのち一つタバコの煙を吸い込むと、ぽつぽつと話し始めた。
「私がここで作っていたホムンクルスは、あの子を媒体に作り上げたモノなの」
「媒体に?」
「えぇ…これは黒の皇帝直々のリクエストでもある。ぜひ息子を蘇らせてくれってね。さすがに皇帝に逆らうことも出来ずに私は人の理に背いたってわけ」
「まさか…蘇らせることができたのか?」
「えぇ…でも完全にっていうわけでもない。新たな心臓を与えて、脳神経をもう一度構築した。そのことによりあの子は生前のあの子とは違う存在になった」
「ん?どういうことだ?」
「簡単に言えば容姿はあの子だけど中身はあの子にそっくりな別物って言うわけよ。さすがに脳まで再構築するとなると人格も変わるしね。あの子の記憶をどうにか引きずり出して思考パターンも極力似たモノにしたつもりだけど…」
要するに死体に無理やり別の命を押し込んで、その人に成りすませと言ったようなものか。
まさかそんなことができるなんてな…
恐ろしいまでの銀の国の科学力に俺は慄(おのの)いた。
この技術が流用されれば不死の兵団だってつくることができるはずだ…
「でもあんなのはもう懲り懲り…これ以上作る気はないわ。どんな大金を積まれたってね」
疲れたようにそう笑うツグミ。
何か実験中に悪い事でもおこったのだろうか?
けれど俺はそれを聞くことができなかった。
聞けば、何か戻れないような気がした…
「それじゃあ次の質問…」
その後質問すること数回、わかったことは以上だ。
まずこの工場のあたり一帯にはジャミング電波が流されていること。
これは情報漏えいを防ぐセキュリティのようなものだということらしい。
次に知ったのは黒の国の次の作戦だ。
青と緑の連合国を攻めると言ったがさすがにあの大国を相手に取るのは少々骨が折れる。
やはり何か作戦があると踏んでいた俺だが案の定その予感は当たってしまっていた。
具体的な作戦は知らされていないがどうやら青と緑の国民すべてを犠牲にとって他国と潰しあいをさせるということらしい。
現在その脅迫に使うための大量虐殺のミサイル弾頭を作っているとのことだ…
そして潰し合わせる他国はオシリスの可能性が高いということも…