「それでは第1戦、ケント&マリナ対サクヤの試合を開始します!」
試合開始の合図が鳴り3人の間に緊張が走る。
「ケント、サクヤの実力は本物です。なめてかかると痛い目見るですよ?」
「あぁ、もちろんだとも、マリナ様」
「じゃあいくですよ!」
それを合図にケントとマリナは一気にサクヤに詰め寄る。
マリナは今回はウィップを持って戦いに挑んでいる。
本当に女王様属性が似合うなとキョウヤは密かにそれを見て思った。
「先手必勝です!」
マリナはそういうとサクヤの右腕をウィップで縛る。そうすることにより利き腕を使えなくし、反撃のチャンスを減らす作戦である。
「ケント!一発お見舞いしてやるです!」
「あぁ、任せとけ!」
ケントはそう言い剣を抜きサクヤに斬りかかる。
サクヤはノーガードでそれを食らい一撃で勝負が決まった。
ケントはそう思っていたが攻撃を食らわせたときの手ごたえがあまりないことに気付き距離をあけた。
不思議に思ったケントはサクヤを見る。瞬間その答えがすぐにかえってきた。
今さっきサクヤに攻撃を加えた場所には桜の花びらが舞っている。
その桜の花びらにより攻撃を防がれたのであろう。
「これが私の異能「乱れ桜」ただの花びらだと思ってると痛い目見るよ?」
そう言った咲耶は縛られていない左腕を振りかざした。
その瞬間ケントに向かい花びらが飛んでくる。
「くっ…」
花びら1つ1つに威力はないがそれを連続であびれば大きなダメージにもなるし、それに小さな花びらなので撃ち落とすこともほぼ不可能である。
そのためケントはなす術もなくダメージを食らい続ける。
「ケント!何してるですか!早く逃げるですよ!」
マリナがそうケントに叫ぶ。しかしケントはそれを聞き唇の端を釣り上げ不敵な笑みを浮かべた。
「逃げる…?その必要はないな。だってこいつを払いのければいいだけだろ?」
「何バカなこと言ってるですか!早くしないと倒れるですよ!?」
「言葉で信用してくれないなら行動で示すのみだ。秘技風裂斬(ふうれつざん)!」
ケントは思い切り剣を横に振るった。
瞬間剣をふるった軌道上から強烈な風が吹き荒れる。いや、剣の軌道上の風が斬りつけられ無理に風向きを変えられたのだ。
乱れた風にのせられ花びらはケントへと向かわず四方八方に分散する。
「どうだ?逃げなくてもよかっただろ?」
ケントはそう言ってマリナに笑いかけるがマリナにしては心配で仕方なかったのだ。
「ケントのバカ!何心配させるですか!」
「俺のことを心配してくれていたっ!?あ、ありがとうございます、マリナ様!」
マリナはしまったという顔をしケントから顔を背けた。
「ふ、ふん!誰がケントなんて心配するですか!調子に乗りすぎです!」
そう言ったマリナの頬はかすかに赤く染まっていた。
「ちょっと、何そこで二人盛り上がってるの!?試合中なんでしょ!もっとしっかり戦いなさいよ!」
サクヤは怒り気味にそういうとマリナめがけて駆け出した。
マリナはウィップを両手に持ち両手が使えない状態、一方サクヤは片腕のみ使えない状態。
これを見ればはっきりとわかるはずだ、サクヤの方が有利だと。
「ちっ…!」
マリナは舌打ちしウィップを戻すために腕を引く。
しかしサクヤは右腕に絡みついているウィップを右手で持ち固定した。
当然そうされるとウィップは動かすことが出来ずにマリナは完全に手詰まりである。
「早くそのウィップから手を離さないと攻撃が当たっちゃうよ!」
「なめてもらっちゃ困るですよ。マリナにも秘策はあるのです」
そう言ったマリナはウィップから片手を離しメイド服の内側から小瓶を取り出す。
マリナはその小瓶のふたを口で外し瓶の口をウィップに向ける。
すると小瓶から赤い炎が噴き出しウィップにまとわりついていく。
「ウィップを持ってると危ないのはどっちですか?もちろんサクヤの方が危ないに決まってるですよね?」
サクヤは舌打ちしウィップを持っていた手を離しいったん距離を取る。
「なぁ、何を使ったんだ?」
横からケントが訳が分からないという表情を浮かべながら尋ねてくる。
「これは魔法瓶です。マリナの異能で練成した魔法をこの特殊な瓶に入れていつでも使えるようにしたものです」
「どういう仕組みかわからないけど、言いたいことはわかった」
「へぇ、ケントのくせに理解できる頭脳を持ってたのですね。意外です」
「へへ、俺だってそれぐらいわかるぜ」
「わかったから調子にのるなです!それよりもうすぐ次の一手がくるですよ」
マリナがそう言ったのでサクヤの方を向いてみるとサクヤは腰に下げていたレイピアを抜くところだった。
「ケントはサクヤの攻撃を受け止めて隙を作るです。隙が出来たらマリナが攻撃を入れるです。この炎を維持できる時間もあまりないです、だからすばやくいくですよ!」
「オーケー!」
ケントがそういうと同時にサクヤに駆け寄り剣をふるう。
金属同士がぶつかりあう音が何度も響き渡る。
隙を作ると言っていたケントだったがサクヤの上手い立ち回りによりまったく隙を作れないでいた。
「まだまだですよ、ワタシをもっと楽しませて!」
サクヤは至って余裕だったがケントの方は既に疲労しているようだった。
「ケント、いったん下がるです!」
マリナの掛け声とともにいったん後退するケント。
それとほぼ同時にマリナが前進し炎を纏ったウィップをサクヤに向けてふるう。
「そんなの効かないよ」
サクヤは桜の壁を作りマリナの攻撃を受け止める。
「それは本当ですか?」
マリナは不敵に微笑みウィップを振り下ろした。
瞬間桜の壁が燃えてなくなった。
「どうやらその壁は炎に弱いみたいですよ?知らなかったんですか?」
「私がそんなことを知らないとでも思ったの?それすらも計算に入れていたってことを気付きなさい!」
サクヤはウィップを振り下ろし自由がきかないマリナめがけて素早く突きを連続で放つ。
サクヤは壁が燃やされることを解っていて壁を展開していた。マリナが攻撃したあとの隙を狙うために。
「これでどう!?」
サクヤがレイピアを横に振るい一撃を食らわせようとする。
しかしケントがその間に割って入りそれを受け止める。
「大丈夫ですか、マリナ様?マリナ様をいたぶった罪、どう償ってもらおうか?」
ケントはサクヤを睨みつけそう言い放つ。
「穿て!鬼神斬(きじんざん)!」
全身の力を剣に込めて振るう。
それを受け止めるべくサクヤはまたも楯を展開させる。
しかしケントはそれすらも軽く払いのけ思いきり振りかぶったのち勢いよく振り下ろした。
サクヤはそれをレイピアで受け止めるもケントの勢いに押されていた。
「マリナ様!早く!」
その合図とともにケントの背後にいたマリナが勢いよく飛び出しそしてサクヤに向けてウィップを振りかざす。
防御するすべもなくそれを受けたサクヤは後方に吹き飛ばされた。
「へぇ、結構やるじゃない。でも、これならどうかな?」
サクヤはそう言いケントに向かって駆け出しレイピアをふるう。
ケントは攻撃を防ぐために剣を横に向けて防御の体制をとる。
「はぁ…そんなんだから弱いんだよ、キミは」
「え?」
サクヤはケントに攻撃をせずにケントの横をすり抜けた。
ケントに攻撃すると見せかけて防御をしたところをすり抜ける、それがサクヤが行った一連の動作だ。
サクヤの標的はマリナだったのだ。
「じゃあ覚悟して!「螺旋の桜」(チェリー・スパイラル)」
サクヤの構えているレイピアに桜の花びらが集まる。
そしてそれは螺旋状に渦巻き始めた。そのさまはまるでドリルの様である。
「これで終わり!」
そしてマリナ向けてレイピアを撃ちこむ。
マリナはなす術もなくそれを食らうと思われた。
しかしマリナへの攻撃は一向に来ない。
マリナは閉じていた瞳をゆっくりと恐る恐る開いた。
するとそこにはレイピアに貫かれているケントの姿があった。
「へへ、女の子にこんな攻撃受けさせるわけにはいかねぇだろ。後は頼んだぜ…」
ケントはそう言い気絶した。
「なっ…!?何バカなことしてるですか、ケント!マリナちゃんを最後まで守ってくれるんじゃなかったんですか!?こんなところで退場なんておかしいですよ!」
マリナは大声で泣き叫びながらケントを揺さぶる。
あれほどの攻撃を食らったのだからもうケントは戦えない。
「ケント…!」
「さぁ、早くたちなさい。立って戦いなさい」
サクヤは冷たくそう言い放った。その言葉は冷酷そのものであった。
マリナはケントが持っていた剣を持ちサクヤに斬りかかる。
しかしその攻撃はどれもサクヤに避けられてしまう。
「もっと真剣に戦いなさいよ」
「だ、黙れです!よくも…よくもケントを…!」
マリナは泣き叫びながら剣をふるう、だがそれも虚しくサクヤには届かない。
「戦闘に個人的な感情を持ちだしたら勝てるモノも勝てないわよ」
「う、うるさいです!お前に何が分かるですか!」
「何もわからないわよ、何もね…だから私は戦い続けるの」
サクヤは悲しそうな顔をしたがそれも一瞬、マリナを鋭くにらむような顔つきに変わった。
「そこの彼は死んだわけじゃないんだから。そんなに怒らなくてもいいんじゃない?」
「死んでなかったらいいっていう問題じゃないんです!ケントを…よくもケントを…!!」
マリナは顔をくしゃくしゃにしながら剣をふるい続ける。だがどの一撃もサクヤには届かない。
「はぁ…これじゃあ埒が明かないわね。もう終わりにしましょうか」
そう言ったサクヤはレイピアをマリナに向けて振り上げた。
マリナのその小さな体が宙に舞い試合終了の合図が闘技場に鳴り響いた。