終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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ミラースノー

無数の槍の連撃を華麗にかわすキョウヤだったがその顔には疲労が見え隠れしていた。

なにせウサギの十五夜を防いだとはいえ完全に防げずに何発かくらっているのだから、ダメージも蓄積されているはずだ。

ユキも軽快な槍の動きが鈍ってきていた。

長さを自在に変えるということは重さも変わるということ、その都度力の加減をしていれば疲労が蓄積されるのも早い。

疲労困憊の他者、二人とも試合を早く終わらせるために大きな動きに出ることを決意する。

キョウヤは残りの力を振り絞りユキの懐まで一気に駆け寄る。

ユキは槍の長さを通常の長さに戻し重量感を減らした。

通常の長さに戻すことにより動きも上げる働きがあった。

「いくぞユキ!」

キョウヤはユキの目前まで来て剣を振るった。

しかし惜しいところで足がもつれてユキに倒れ込んだ。

「うわっ…!?」

「え?キョウヤ…!?」

結果キョウヤはユキを押し倒すような体制になった。

「イテテ…大丈夫か、ユキ?」

対戦相手を気遣うなどおかしなことだがキョウヤはとりあえず謝っておいた。

「うん、だいじょう…ひゃん」

突然ユキが妙な声を出したのでキョウヤはすごく心配した。

「おい、今の声なんだ?大丈夫なのか?」

「ちょ、ちょっとキョウヤ…ん~…早く退いて…」

涙目になりながら訴えるユキ。

そこに尋常じゃなく危ういものを感じ取りキョウヤは手に力を込めた。

「ひゃ!?キョ、キョウヤ…ゆ、ゆっくりと力こめないで立ち上がって…」

「え?なんで…?」

「だ、だって…その…」

「なんだよ!ハッキリ言ってくれ!」

キョウヤは力強くそう言い放つ、その時同時に手にも力がこもった。

「ひゃん!だから力入れないでって…」

「だからどうしてだよ!?」

「あぁ、もう!言うよ!キョウヤの手が胸に当たってるの!」

ユキが頬を赤らめ涙目になりながらそう言う。

「え?胸…?そういえばさっきから手に少し柔らかいものが…」

「わぁー!もうこれ以上言わないで!それより早く退いて!」

「あ、あぁ悪い…今退くから」

そう言いキョウヤは立ち上がろうとする。しかしその手に力がこもりまたも柔らかい感触を感じてしまう。

「やぁ…もう…キョウヤ!なんで立ち上がろうとするの!?いったん横側に寝転がってそこから立ち上がったらいいじゃない!」

「あ、あぁその手があったか…」

キョウヤは安心したように、しかし少し残念な様子でユキから離れた。

 

「はぁ…もうこれじゃ戦う気力もないよ…」

ユキはあきれたようにそう言ったがキョウヤにしてみればそれは困ることだった。

「いや、ちょっと待てよ!俺は最後までユキと戦いたい!」

「私の戦意を無くしたのは自分だってこと気付いてないの?」

ジト目のままユキがそう尋ねた。

「い、いや…それは…」

キョウヤが慌てて否定する言葉を探そうとする。

「隙ありっ!」

そう言ったユキは慌てるキョウヤに向かって氷の槍を放つ。

「うわっ!?」

キョウヤは間一髪それを避ける。

「お、おい!これはどういうことだよ!?」

「どういう事って…奇襲だけど?」

ユキはさも当然というようにさらっと言ってのける。

「戦いたいのは私も同じなの!さぁキョウヤ!私の胸をもんだんだからその覚悟はできてるよねぇ?」

「あぁ、この一撃で決めてやるよ!」

キョウヤは自分の脇にあった剣を拾い上げて走った。

身体の力を剣に込めてユキめがけて振るった。

「そんなの効かないよ!」

ユキは軽々とその攻撃を槍で受け止めた。

そして槍で受け止められた剣はそこから凍り始める。

「なら…こいつでどうだ!」

キョウヤは今までもっていた剣を捨て空中に手を伸ばし掴む。

するとその手の中にはどこから出現したかわからない刀が握られていた。

「これで…終わりだ!」

キョウヤは剣を振りぬきぜったいに防げないと自信のある攻撃を繰り出す。

その自信はキョウヤの心の奥底に根付いていたモノであった。

しかしその一撃はガキンっ!と音を立てユキの槍に防がれる。

『え?』

それに驚いたのはキョウヤだけではなくユキもだった。

キョウヤの驚きはなぜ自分の自信の攻撃が防がれたのかだ。

しかしユキの驚きはなぜキョウヤがその攻撃を使ったのかだった。

「お兄…ちゃん…?」

「え?」

ユキが小声でそうつぶやいたのをキョウヤは聞き逃さなかった。

「なんでお兄ちゃんの攻撃をキョウヤが使えるの…?」

ユキは驚きに目をぱちくりさせキョウヤを見据える。

「この攻撃はお兄ちゃんが自分で研究して考えた技なんだよ…?なのになんでキョウヤが…?」

「え…?分からない…何で俺がこの技を使えるなんて、わからないよ…」

キョウヤは疑問で頭がいっぱいになっていた。

それはもはや戦える状態ではなかった。

「ねぇ…キョウヤはお兄ちゃんを殺したんでしょ?だからこの技についても知っている…そうだよ、きっとそうだ」

ユキの目からは輝きが消え失せ何かに憑りつかれたような虚ろな目になっていた。

「俺がユキの兄を殺した…?」

「待っててお兄ちゃん…今私が仇を取るから、絶対にお兄ちゃんを殺した奴を殺すから!」

ユキはそういうと右手を上に掲げてそこに氷の槍を出現させる。

「この一撃は本気の一撃だよ。お兄ちゃんを殺した奴を殺すにはもってこいの技だね」

もはやキョウヤはショックで動くことが出来なかった。

自分が人を殺したということを言われパニックになっていたのだ。

「さぁ貫いて!氷女王の息吹(アイシクル・ブレス)!」

今までの比ではないぐらいの冷気を帯びた槍がキョウヤを襲う。

これで貫かれれば誰だってただでは済まないだろう。

「お兄ちゃんを殺したんだ!死をもって償え!」

ユキはもう完全に我を失っていた。

今戦っている相手が大切な人物、キョウヤだということも忘れて。

槍がキョウヤを貫く、その瞬間。

「アイギスっ!」

キョウヤの目の前に巨大な盾が現れる。

「センパイ!ボサっとしないで早くユキの目を覚ましてあげて!私のアイギスもそう長くは持たない!」

その言葉を聞いたキョウヤはもう一度だけ立ち上がる勇気を湧き出させた。

「あぁ、待ってろユキ。お前を縛っているその闇を払いのける!」

キョウヤはユキめがけて駆け出した。

その頭の中にはある一つの異能の言葉がぐるぐるとまわっていた。

「なぁ、ユキ…俺は絶対に違う、お前の兄を殺してはいない。だから俺の呼びかけに答えてくれ…!氷女王の槍(ブリザード・スピア)!」

キョウヤの手を冷気が包み込む。

そしてその手には光を反射して輝く氷の槍が握られていたのだ。

「ユキ!少し痛いが我慢しろよ!」

キョウヤはそう言ってその槍をユキの足に刺す。

足を狙ったのは心臓や頭など大事な部分が凍るのを遅らせることを目的としてだ。

「うあぁぁぁ!?」

ユキが悲痛の叫びをあげてうずくまる。

それをキョウヤが力強く抱きしめた。

「ユキ!ゴメンな…でも、信じてくれ。俺じゃない、絶対に俺じゃないんだ…だから、目を覚ましてくれよ―!」

泣きながら叫ぶキョウヤ。

「ん…?キョウヤ…?え!?私どうして…?」

「ゴメンな、ゴメンな…」

キョウヤはユキを強く抱きしめたまま謝り続けた。

「よしよし…キョウヤ…私はもう大丈夫だから…」

その瞬間試合終了の鐘が鳴り響いたのだった。

 

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