終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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第8章「ショッピングにて」
休日の来訪者


ピピピピ…

「ん~…」

目覚まし時計の音がある時の起床をせかすため部屋中に響き渡る。

「うるさいなぁ…」

少年は五月蝿く泣き喚く目覚まし時計を払い落とした。

そして少年はもう一度眠りに付こうとしてハッとする。

「ヤベッ!?二度寝なんてしてる暇ないぞ…!」

今日は授業がない日、要するに休日だ。

たかが休日だろ?と思う人もいるだろう。

しかしクロノスではほぼ休日がないのである。

なのでたまの休日はめいいっぱい満喫するのがクロノス学生たちの暗黙のルールであった。

そして少年、キョウヤも例外ではなかった。

「ほら、キョウヤ。早く起きて準備しろよ」

キョウヤが寝ているベッドの脇でその声が聞こえる。

ケントだ。

どうして彼がここにいるというと理由は単純である。

万が一ということもあるので目覚まし係として呼んでおいたのである。

「そうだな、早く準備しねぇと…」

なぜこうもキョウヤは急いでいるのか。

それは本日のキョウヤの予定に隠されていた。

「早く行かねぇと一日20個限定のオリジナルショートケーキがゲットできないぞ…」

そう、キョウヤはクロノスタウンにいき限定ショートケーキを買うという予定があったのだ。

何故そんなことになったのかというと理由は1日前に遡る。

 

「キョウヤセンパイ!」

次の授業の準備をしていたキョウヤの背後からそんな声がかかる。

「え~と…キラか」

「そうだよ、センパイ」

キラは怪しい程満面の笑みでキョウヤに近づく。

「センパイは明日って予定あるんですか?」

「明日の予定か…明日は剣の稽古に…」

「予定ないんですね、それはよかった」

「いや、予定なら…!」

キョウヤは慌ててそう言い張る。

何か嫌な予感がしたからだ。

「ウサギちゃん!!」

キラが指を鳴らしたと同時どこに隠れていたのかウサギが姿を現す。

「キョウヤ、これを見よ!」

ウサギの手には広げられた広告が握られていた。

「え~と…マル秘バストアップ術~これであなたも巨乳の仲間入り!~…お前まだ胸大きくなりたいの?」

その広告にはそんな名前の本がでかでかと宣伝されていた。

ウサギは今でも十分な位の巨乳だ。

むしろ足りないのは身長と頭の中身だ。

「胸じゃなくて背を伸ばせよ、背を」

「ウサギちゃん!それじゃないって!」

慌ててその紙をひったくるキラ。

もしかするとこいつの欲しいものだったのか?とキョウヤは思ったが口に出すとまた面倒なことになりかねないと思い黙っていることにした。

ウサギはポケットをあさりまたも広告を取り出してキョウヤの眼前に突き付ける。

「本当のはこっち!」

それはケーキ屋の広告だった。

色とりどりのケーキが所狭しと描かれている。

しかし一番目を引くのは真ん中に大きく描かれたショートケーキだ。

「これがどういう意味か分かるかな、キョウヤは?」

「この中で食べたいのを選べってことか?なら俺は…」

「違うよ!」

ウサギはキョウヤに指を突き付けてそう言った。

そしてその指を左右に振り出す。

昔の刑事ものでやっていそうな動作だ。

「ちっちっち、そうじゃないんだぜ、キョウヤ君」

セリフも古くさかった。

「キョウヤには明日この一日20個限定オリジナルショートケーキを買ってきてもらいます!」

「やっぱりか…」

キョウヤとしてはこの答えを予想していなかったわけではない。

ただ実際にそう言われてしまうと呆れを隠せなかった。

「面倒だから俺はパスだ、ほかの奴をあたってくれ」

「センパイしか頼れる人はいないんだって、だから…!」

「そう言われても…」

「お願いキョウヤ、私のおっぱい触らせてあげるから」

そう言われると断わることができないのが男の性だ。

しかしキョウヤとしてはもうこの誘惑には惑ってはいけなかった。

何故ならユキから思いっきりくぎを刺されていたからだ。

「次にウサギに変な事でもしてみなさい!お兄ちゃんの身体に大きな穴が開いちゃうかもよ…?」

そう言われていたのだ。

「い、いや…遠慮しておくよ…」

断腸の思いで断るキョウヤ。

その目には後悔の涙が浮かんでいた。

「これでもダメとはなかなかのお手前だね、キョウヤは」

「センパイ…」

キラがユラリとキョウヤの前に立つ。

その体からは何とも言えないどす黒いオーラが溢れている気がした。

「ごちゃごちゃ言わずに行ってこいやぁ!」

キラの威圧感のある声に押されてキョウヤは思いっきり首を縦に振ることしかできなかった。

「は、はい・・・行かせていただきます…!」

「ありがとうございます、センパイ」

その声は普段のキラであった。

(なんだったんだ、今の豹変ぶりは…)

どちらの人格が本物のキラかキョウヤは予想がつかなかった。

「じゃあセンパイ、10個お願いしますね」

「10個!?」

キョウヤは驚愕で開いた口がふさがらなかった。

なんせ限定20個のモノを半数買ってこいと言う指令だ。

それはほぼ不可能に近いことだった。

「大丈夫、別に徹夜組になれとか言ってないし、それにセンパイなら絶対ゲットできますよ!」

その根拠はどこから出てきているんだとキョウヤは不安に思った。

しかし自分がこんなに頼りにされているということにまんざらでもない優越感が溢れだしてきた。

「で、買ってきてやるとしてお前ら二人でそんなに食うのか?」

「いいや、違うよ。いくら甘いものが好きだからって10個も二人で平らげられないよ」

「私とキラで2つずつでしょ、それにユキの文が2つ、イツキとネム、サクヤが1つずつ、これで10個だよ!」

この会話には明らかに矛盾が生じていた。

ウサギがそこまでバカなのかとキョウヤは半分呆れながらも口を開いた。

「おい、これじゃ1つ足りないだろ…」

「えっ!?…1,2,3…」

ウサギは自分の指を使い数え始める。

「あれっ!?ホントだ、1つ足りない!」

「ウサギちゃん、あとはセンパイの分だよ」

「俺の分?」

キョウヤ自信これを食べたいなんて思っていなかった。

「うん、買ってきてくれたご褒美に私からのおごりだよ」

後輩からのおごり、それはとってもみっともないことなんじゃないかとキョウヤは思ったがキラとしては悪気なく言ったものだと判断しツッコむのをやめた。

「わかったよ、じゃあ行ってきてやるよ」

 

と、まぁ昨日はこんなことがあったのである。

そして今に至る。

開店時間は午前9時。現時刻は午前7時30分だ。

「ちょっと早く起きすぎたかな…」

支度を整えたキョウヤはそうぼやいた。

コンコン…

その瞬間部屋のドアにノックの音が鳴り響く。

「キョウヤ、いるか?」

その声の主はキョウヤの返事を待たずに部屋に乗り込んできた。

「あぁ、ナイトか。どうした?」

長身の少年、ナイトはキョウヤの目の前まで来るとすぐに頭を下げる。

キョウヤとしてはなぜ頭を下げられるのか全く心当たりがなく逆に不安をあおる材料となった。

「お、おい…どうしたんだよ!?」

「お前に一生の頼みがあって来た!」

そう言ってないとはポケットから財布を取り出しそれをキョウヤに渡した。

「クロノスタウンに行くんだろ?だったら俺のお使いも頼まれてくれ!」

頭が混乱するキョウヤ。

唐突に部屋に入ってきた先輩から全力で頭を下げられお使いを頼まれる。

この状況を誰が理解できるのか。

「わかったから顔を上げろって」

「買ってきてくれるのか!?アリガトウ!」

そう言って顔を上げたナイトの顔はうれし泣きをしていた。

普段のイケメン?な顔はどこへやら、今は相当人に見せられない顔をしていた。

「ナイトセンパイ、その顔面白すぎですよ」

まだ部屋にいたケントが茶化したてる。

瞬間ケントが床に崩れ落ちる。

「さぁ、キョウヤ。話の続きだね」

(ホントこの人よくわからないなぁ…)

ケントを一瞬で戦闘不能状態にしてなおも笑顔でキョウヤに接するその態度。

そこには得体のしれない恐怖が存在した。

「で、何を買ってきたらいいんですか?」

「あぁ、ゲームを買ってきて欲しいんだ」

「ゲームですか、わかりました。で、なんてタイトルのゲームですか?」

それを聞いた瞬間ナイトの顔が不自然にひきつったように見えた。

「あ、あぁ。タイトルならメモしてきたから、これを」

そう言って懐から小さく折りたたまれた紙切れを取り出す。

「えーと…」

「ストップ!!」

紙を開こうとしたキョウヤを全力で止めるナイト。

その動きは目にも止まらぬ華麗な動きだった。

「それは店で開いてくれ、お願いだ!」

そのセリフと共に額を地に付けるナイト。

(そ、その姿勢はっ…!?)

そう、土下座だ。

後輩の前で土下座をするセンパイ。

「いや、そこまでしなくていいですから!」

その後ナイトをなだめるのに20分を消費し疲弊したキョウヤはその重い足でクロノスタウンへ向かったのだ。

 

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