そこはもはや人だかりと言っていいほどの人数の人が居た。
クロノスタウン入口。
そこに足を踏み入れたキョウヤはやっぱり昨日断わっておけばよかったと思った。
しかしどんなに後悔しても今が変わるわけでもなく…。
しぶしぶ諦めてキョウヤはその人だかりの中に一歩また一歩と進んでいった。
「それではクロノスタウン開店です。皆様楽しいお買い物を」
そのアナウンスを合図に入り口のドアが開け放たれる。
瞬間すさまじい勢いで入口にたかっていた人達が走り出す。
キョウヤもそれに遅れまいと走り出した。
(こいつら全員ケーキ目当てなのか!?こんな人数多いとか聞いてないぞ!?でもこいつら…)
そう、ここにいる客のほとんどは女性。
男、しかも訓練を重ねているキョウヤにとっては目ではなかった。
一気にトップに躍り出るキョウヤ。
「たとえ相手が女だろうと手加減なんてしねぇよ!」
キョウヤは後ろを振り返りそう叫んでやった。
その瞬間キョウヤの横を何かが横ぎった。
(なんだ、あれは…)
横切ったそれを目で追いかける。
それはある一定の時間宙をさまよいそして爆発した。
(はぁ!?あれって…!)
そう、あれは異能だ。
誰かが異能を行使してキョウヤの邪魔をしようとしている。
「おいっ!校外で異能を使うなんて…」
後ろを振り向き異能を放った奴に文句を言ってやろうとしたキョウヤだったがその文句はそこにあった光景により掻き消されてしまう。
そこは殺伐としていた。
どこからか炎が上がり、そしてまた違う場所からは電気が走り…
そこはまるで戦場だったのだ。
(異能を行使してまでゲットしたいケーキって何だよ!?)
その途端またもキョウヤめがけて異能が放たれる。
今度はきっちりキョウヤをロックオンした一撃だった。
「くそっ!イドラウェポン!」
キョウヤは虚空から盾を取り出しガードする。
キョウヤは走る、ケーキ屋を目指して…。
「お買い上げありがとうございました~」
店員のスマイルに心が洗われるようだった。
あの後必死の攻防を繰り返し一番乗りにケーキ屋に到着したキョウヤは無事ショートケーキ10個を確保することができた。
ここで女の子の恐ろしさを再確認したキョウヤであった。
「はぁ…疲れた…」
キョウヤは休憩用ベンチに腰かけため息をつく。
「たぶんこれで1週間分ぐらいは疲れたな…」
そんな冗談を吐きながらキョウヤはグッと伸びをする。
「あれ?そこにいるのは…」
その時後ろから聞きなれた声が聞こえた。
キョウヤは声の主を確認するために後ろを向こうとするが声の主がそれより早くキョウヤに抱きついた。
「やっぱりお兄ちゃんだ!こんなところで会えるなんて嬉しいよ、お兄ちゃん!」
そう言って声の主、ユキはキョウヤに抱きついてその小さな顔を思いっきりキョウヤの背中にうずめた。
「えへへ、お兄ちゃんだぁ~」
ユキはふやけきったその表情でうわ言のようにそう繰り返しつぶやく。
「ユキ、そろそろ離れろって」
キョウヤはそろそろ限界だった。
これ以上そうされているとどうにかしてしまいそうだったのだ。
「あぁ、ゴメンね、お兄ちゃん!嬉しくってつい…」
「あぁ、いや別にいいんだけどね…それでユキはどうしてここに?」
キョウヤはここに来て最大の疑問をユキにぶつけた。
「私?ここに来る理由なんて一つしかないでしょ」
「あぁ、買い物か」
「せいか~い」
やっぱり買い物であった。
まぁここにそれ以外の目的で来るっていう物好きそう相違ないだろうなとキョウヤは思った。
「お兄ちゃん、それって…」
ユキはふと俺の横にあった箱を見て目を輝かせる。
「あぁ、これはオリジナルショートケーキだよ。キラに頼まれてたやつ」
「お兄ちゃんゲットできたんだ!ねぇ、食べていいかな?」
「もともとお前の食べる分も入ってるんだし、いいんじゃないか?」
「やった!これを食べるためにどれだけ待ったことか…」
「そんなに旨いのか?」
そう、あれだけの行列ができるぐらいだ、さぞ旨いことだろう。
「いや、知らないよ。これ食べるの初めてだし」
「え?」
「お兄ちゃんも見たでしょ?これを食べるにはあの人だかりを抜けないといけないんだよ?」
確かにそうだ。
これを手に入れるのは至難の業。
初戦でゲットできたキョウヤはなかなかに運の良いほうだったのだ。
「でもキラがちゃんと買ってきてやるって言ってたのに、結局人任せにしちゃったんだ」
「あぁ、あいつ酷いんだぜ。俺に頼んできてさ」
キョウヤは笑いながらそう言ってやった。
「でも、お兄ちゃんに頼んだからこうやってケーキを食べれるんだよ、私嬉しいよ」
「へへ、そうか」
こういわれてしまうともうさっきまでの不満も疲労もどこかへ飛んで行ってしまうようだった。
「う~ん!おいしいよ、これ!」
ケーキを一口、口にしたユキはうなるようにそう言った。
(本当にうれしそうな表情だなぁ)
キョウヤはユキを眺めながらそう思った。
「お兄ちゃんも一口どうぞ」
その瞬間ユキはキョウヤの口の中にケーキを放り込む。
口の中に放り込まれたケーキは今まで食べたケーキの中で一番おいしかった気がした。
「どう?おいしいでしょ、お兄ちゃん」
「うん!最高だよ、これ!」
このおいしさはこのケーキ特有のモノかユキに食べさせてもらったからか、はたまた両方なのか、キョウヤには判別不能だった。