あの後雑談を交えながらユキと一緒にいろんな店舗を見て回っていた時だった。
「あぁ!」
キョウヤは大きな声を出して立ち止まった。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「そういやゲームを買わないといけないんだった!」
そう、すっかり忘れていたがまた今回の買い物の目的をフルコンプしていないのだ。
「ユキ、ゲームショップどこだ!?」
「え~と、あっちだよ」
キョウヤはユキを連れて足早にゲームショップを目指した。
「ねぇお兄ちゃん。なんでそんなに焦ってるの?」
「だって早く行かないと限定特典つき初回生産版が売切れるからだ」
限定特典つき初回生産版
これを買ってこいとナイトに言われたのだ。
「こいつは人気が高くて早く行かないと手に入れられないんだ。この機会を逃したら二度と手に入らない代物なんだからな!」
ナイトからはしつこくそう言い聞かされてきたキョウヤ。
もしここで逃しましたなんて言おうものならどうさせるかキョウヤには安易に想像できた。
「う、うん!よくわからないけどとにかく早く行かないと手に入らないっていう事だけはよくわかったよ」
現時刻午前10時30分
開店から1時間30分たっている。
(頼むぞ、間に合ってくれ…!)
キョウヤはそう思いながらゲームショップの扉をくぐった。
ゲームショップには当たり前だが数々のゲームが揃えられていた。
ただ品物の種類などが相当様々だった。
数10年前に流行ったであろうゲーム機から最新のものまでさまざまなゲームが揃えられていた。
「うわぁ…こんなにいっぱいの中から見つけなくちゃならねぇのか…」
キョウヤは棚を見渡し溜め息を吐いた。
「ねぇお兄ちゃん。そのゲームのタイトルって何?手分けして二人で探したらどうかな?」
「おぉ!その手があったか。ちょっと待ってろ」
キョウヤはがさがさとポケットをあさりそこから小さな紙切れを取り出す。
「ん?それなに、お兄ちゃん?」
「ここにゲームのタイトルが書いてあるんだ」
紙切れを開きながらキョウヤはそう答えた。
そして開いた紙に書いてある文字を読みだした。
「え~と…俺のメイドは妹たち「ご主人様(お兄ちゃん)私たちのご奉仕でえっちなお汁いっぱいぴゅっぴゅしてね☆」~お兄ちゃんラブなツンデレ妹、エッチなご奉仕大好き妹、孕みたがりなロリビッチ妹たちと~・・・って何だこれ?」
文の意味を考えてもう一度その文字列を見る。
(うん、これエロゲだな)
冷静にそう答えたキョウヤの脳。
「お兄ちゃん…」
「いや、これは違うんだぞ!」
キョウヤは慌てて否定する。
しかし時すでに遅しだ。
もうキョウヤの死は確定してしまったのだ。
キョウヤは覚悟を決め目を瞑る。
しかし一向に何も飛んでこない。
普段ならユキの罵声が飛んできてもおかしくないのだが…。
キョウヤは不審に思ってそっと目を開ける。
そこには頬を赤らめそして少しふやけた表情のユキが立っていたのだ。
「お兄ちゃんはメイドがいいのか~。メイド服ってどこに売ってたかなぁ~」
うわ言のようにそうつぶやいているユキ。
「お~い…ユキ。帰ってこ~い」
キョウヤはユキの目の前で手を振ってみる。
しかし一向にユキは反応することなく夢の中だ。
仕方がないのでキョウヤは一人でゲームを探すことにした。
買って帰らないという選択肢もあったがキョウヤとしてはこれを見せつけてナイトに文句を言ってやろうと思ったのだ。
「え~と…」
お目当てのモノはすぐに見つかった。
本日の新作の棚の一番目立つところに陳列されていたからだ。
(エロゲを一番目立つところにおいておくなよ…)
心の中でそうツッコミキョウヤはそれを持ってレジへと向かった。
「お~いユキ、そろそろ行くぞ」
ゲームを購入し終えたキョウヤはまだ入り口付近でトリップしているユキの肩をたたいた。
「はッ!私ってば…あ、お兄ちゃん、買えたんだね」
正気に返ってもお咎めなし。
キョウヤにしてみればこんなにうれしいことはなかった。
「お兄ちゃん、それなぁに?」
ユキはキョウヤの持っているあるモノを指差して答えた。
「あぁ、これか?なんかヒロインたちが着ている衣装なんだって。特典でついてたんだけど…」
ユキが物珍しげにそれを観察する。
「ねぇ、お兄ちゃん…それ欲しいなぁ」
「え?」
ユキは頬を少し赤く染めてそう言ったのだ。
(欲しい、これが?いや、落ち着け、俺。聞き間違いだよな、うん)
「なぁユキ。俺今さっきの言葉あんまりうまく聞き取れなかったからもう一回言ってくれるか?」
「その衣装、私にちょうだい」
今度こそはっきりとちょうだいと言った。
キョウヤとしてはあげることに何の問題も無かった。
むしろあげることがこんなものを買わせたナイトへのあてつけになるんだと思った。
しかしユキにとってこれに何のメリットがあるんだろうか?
この特典の内容はメイド服にスク水、それに縞パンといった内容だ。
(てかこんだけの量を特典に付けて…赤字になるだろ)
キョウヤは内心でそうツッコんでみたが今は関係ないので頭の隅の方へと寄せて本題へと戻した。
何故ユキがこれを欲しがる、欲しがる理由は何だ?
キョウヤの頭の中で様々な考えが浮かんでは消える。
「ねぇダメかな…お兄ちゃん…」
(あぁもう!そんな甘えた声でいうな!)
いつものキョウヤを惑わすあの上目遣いと甘えた声だ。
これにはめっぽう弱いキョウヤは即座にその特典をユキへと渡した。
「あぁ、やるよ、これ。でも何に使うのかは教えろよな?」
「ありがとね、お兄ちゃん!でも何に使うかは秘密だよ!」
「秘密って…」
「でもそれもすぐにわかるようになるって」
ユキの意味深なセリフを聞きキョウヤの中の不安はさらに強まった。
しかしあのユキだ、妙な事には使わないだろうと勝手にそう思い込むことにした。
どん!
急にキョウヤの後ろに痛みが走る。
「なんだ…?」
後ろを振り返りそれを確認する。
しかしそこには何もない。
「あれ…?なんだったんだ、今の…」
「お兄ちゃん、下だよ」
ユキにそう言われて下を向くキョウヤ。
そこには額を抑えた少女がうずくまっていた。
「だ、大丈夫か!?」
「うん…大丈夫だよ…ヒカリ、泣かないもん…」
そう言って目に涙を浮かべる少女。
(泣かないって言ってるのに泣いてるじゃんか…)
そのあとヒカリというその少女を保護し話を聞き出してみるとどうやら連れとはぐれてしまったらしい。
「お兄ちゃんどうしよ?このままヒカリちゃんの連れの人達を探した方がいいんじゃない?」
ユキはそう提案したがキョウヤとしては反対だった。
「いや、でもさ、もし探し回ってる間に入れ違いになったらどうする?ならここで待機してた方がいいと思うんだ」
「それも一理あるかも…」
ユキはそう言いうなだれて考え込む。
「ヒカリの事は気にせずお兄ちゃんたちはデートを続けてください」
『え?』
キョウヤとユキはヒカリの一言によって固まってしまう。
デート、他人から見たら自分たちはそう映ってしまっていたのか。
「ヒカリは気にしません、お兄ちゃんたちが楽しくきんしんそーかんしてても」
「ちょ、ちょっと待て!」
今耳にしてはならない言葉が聞こえた気がした。
「ヒカリちゃん?今の言葉は意味分かって言ってるのかな?」
「意味ですか?もちろん知ってるよ!兄と妹でイチャイチャすることだよね!」
少し違うがだいたいあっていた。
最近の子供は近親相姦なんて言葉も知ってるのか。
「おい、ユキ、それは違うって説明…」
「わ、わわ私がおおお兄ちゃんとデート!?これってやっぱりデートなんだよね!お兄ちゃんととと、デートなんだ…!」
ユキは顔を真っ赤に染めてうつむきながらその言葉を繰り返した。
どうやらユキはまたもトリップしてしまったらしい。
「はぁ…これからどうしようか…?」
「ねぇお姉ちゃんはお兄ちゃんともうちゅーしたの?」
「ちゅー!?私が、お兄ちゃんと…!?いや、まだだけど…いつかはしてみたいなぁなんて」
「うわぁすごいです!やっぱりお姉ちゃんたちはきんしんそーかんだったんだね!」
(スゲェ幸先不安だなぁ…)
使い物にならないユキとヒカリの親を探す、これは相当難易度の高いミッションなんじゃないかとキョウヤはため息をつきながら思ったのだった。