終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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アイドル少女の実力

「あれ?センパイどうしてここに?」

ネムのライブ会場で待機していたキョウヤに声がかかる。

「キラか、どうした…ってお前も何でこんなとこにいるんだよ!?」

キラもウサギと一緒にキョウヤにケーキを頼んだ人物だ。

「え~と…えへへ、何でだろ?」

「ごまかしても無駄だぞ」

笑顔ではにかみながらそんなことをいうキラを半眼を作り睨むキョウヤ。

「おい、ウサギ、ちょっとこい」

ウサギも呼びつけて本格的な説教タイムだ。

「お前らどうしてここに…いや、それはいい、ここに来る予定があるならどうしてオレにケーキを買いに行かせたんだ?」

そう、そこが一番の重要なポイントだ。

あの戦争まがいの競争を何も知らないままに参加させられたのだ。

「だってほら、か弱い女の子にあんなところに行って来いってのは…ねぇ?」

キラはそう言ってウサギに目配せをする。

「お前らのどこがか弱いって?お前らの能力があればケーキなんてすぐに買えるだろ?」

キラのアイギスさえあれば問題なくケーキをゲットできたはずだ、それなのになぜいかなかったのか。

「センパイ、実は私朝が弱いんだよ。だから開店時間に完全に起きて参加するのは不可能だったんだよ」

「いや、そんなどうでもいい理由で俺に買いに行かせたのかよ!?」

「ダメ…だったかな…?」

上目づかいでそう聞くの反則だ。

つい許しそうになった自分を全力で否定する。

「別にいいじゃん、キョウヤが楽しめてるんだから」

「は?」

キョウヤが訳が分からないというようにウサギに答えを求めた。

「だってキョウヤはここに来たからユキと会えたし私とも会えた、それにネムのコンサートだって見れる。今日こんなことする予定あったの?」

ウサギの言い分はもっともだった。

なにしろキョウヤはこの休日を鍛錬に使う予定だったのだから。

「そうだな…そう考えてみると悪くも無いような…」

「でしょ!だから私たちに感謝を…イテ、何するの!」

キョウヤは胸を張りそう言うウサギにデコピンを食らわせる。

「調子にのりすぎだぞ。…でもまぁとりあえずありがとうとは言っておくよ」

「もう、素直じゃないんだからぁ」

「そうですよ、センパイ!もっと素直にならないと!」

「お前らそんな態度とるんだったらこのケーキ俺が全部食べちまうぞ?」

笑いながらそう冗談を口にするキョウヤ。

しかしその冗談はあまりにも効果的すぎたようだ。

二人は一瞬で態度を改めたのだった。

 

「まぁ、それはさておき…もうすぐはじまりますよ、センパイ」

「あぁ、そうだな」

キョウヤ達はステージの方へ向き集中する。

妙な緊張感が会場の中に漂った。

そこでは小さな音でも大きく聞こえるような程無音だった。

しかし一瞬でその静寂は崩壊する。

ステージ脇に備えられた大型スピーカーから大音量の曲が流れた。

その瞬間会場のボルテージが一気に上がる。

キョウヤ達も例外はなく興奮で胸がざわついた。

「お前ら!今日は私のライブに来てありがと―!」

その声とともにステージに躍り出てきたのはネムだ。

この前着ていた衣装とは全く違う印象を与えるコスチュームに身を包んでいる。

アイドルはもっと鮮やかな色のコスチュームを着るものだが彼女のそれは黒だった。

ゴスロリにも似た衣装を着こなし登場したのだ。

「さぁお前ら!今日は私と精一杯楽しんでいくよ!」

そして何より違うのは口調だ。

普段の印象とは全く違う強気な口調。

普段から少し強気な口調だがそれとは違う。

相手を下に見ている感じのそれとどこか似ているのだ。

「今日はお前らの為に私の歌をささげる!その耳にしかと焼き付けてよね!」

そしてどこか中二くさいのだ。

「なぁ?あれホントにネムか…?」

不審に思ったキョウヤは隣にいたユキに尋ねた。

「うん、そうだよ。あの子大衆の前でステージに立つとなんだか人が変わっちゃうみたいだよ」

「へ、へぇ…そうなのか…」

二重人格みたいなものかなとキョウヤはそれを聞いて思った。

「さぁ、ワタシのステージに熱狂しすぎてヘルまでぶっ飛ばないようにね!」

歓声が収まらない。

四方八方から歓声の荒らしが飛び交う。

これがトップアイドル、ネムの実力だった。

「まずはこれからいくよ!LOVE PANIC ENDLESS」

そこから彼女の怒涛のステージは始まったのだ。

 

「今日はありがとう!これからも応援してね!」

そう言ってネムはステージから降りた。

しかし彼女が降りた後も会場のボルテージは一向に下がらなかった。

これがトップアイドルの実力なのだ。

会場から人が一人消えるとそれに続くようにまた一人と姿を消す。

キョウヤ達も冷めない余韻の中会場を後にしようと立ち上がる。

「あ、キョウヤさんじゃないですか。姉さんのステージ観に来てくれたんですか」

その時会場のどこかにいたであろう羊パーカーが特徴の少年、ヨウが声をかけてきた。

「あぁ、すごかったな、あれは。さすが人気アイドルって感じだったよ」

ヨウは自分の事のように照れる。

本当に姉想いないい子だなとキョウヤは密かに思った。

「あれ?そこにいる子って…」

その時ヨウはふとヒカリに目をやった。

「あれ?そう言えばその子は誰かきき忘れてたよ」

ヨウに続きウサギまでもそんなことを言い出す。

「あぁ、この子はヒカリって言ってな、迷子なんだよ」

「ヒカリ…」

そう言ってヨウは目を閉じて何かを考える素振りをする。

「あぁ!この子ユラさんの妹だよ!」

『え?』

一同は驚きに口を開けヒカリを見つめる。

ユラというのはキョウヤ達のクラスメートで無口な少年のことだ。

(ユラとヒカリが兄妹…?いや、あり得ないだろ、普通。だってあのガタイがいい奴とこんな愛くるしい子が兄妹なわけ…)

「ユラ兄ちゃんを知ってるの?」

その瞬間キョウヤの考えが音を立てて崩壊した。

ユラ兄ちゃん、確実にそう言ったヒカリ。

それはまぎれもなく二人が兄妹だということを示している。

「そんな…この二人が兄妹なんて…嘘だっ!!」

その時のキョウヤの表情は相当なまでにおかしいものだっただろう。

「俺とヒカリが兄妹で何がおかしいんだ?」

そう言ってキョウヤの背後に現れたのはユラだった。

「ユラ兄ちゃん!」

ヒカリはついに再会を果たした兄に抱きついた。

「言っておくがこいつは義理の妹だから、そこは勘違いするな」

義理の妹、なら納得だ。

(そうだよな、こんな奴の妹がこんなに可愛いわけがない…!)

「おい、お前変な事思ってるだろ」

「い、いや…全く何も…!」

声が震えるのが分かった。

多分これで本音を言えば確実に殺される、本能でそう察知したのだ。

「まぁいいだろう。それよりお前ら早く帰らないと門限まで間に合わなくなるぞ?」

そう言われて時計を見る。

現時刻18時30分。

門限まであと1時間30分だ。

「まだちょっと時間あるしちょっとだけ遊んで行こうよお兄ちゃん!」

ユキはそう提案し全員もそれにのる。

しかしキョウヤの財布のライフは0だ。

キョウヤはここでリタイアしようとしたがユキは無理やりキョウヤの手を取り走った。

「お兄ちゃんも行こうよ!お金なんて無くてもいいからいっぱい楽しも!」

精一杯の笑顔でそう言うユキ。

キョウヤはそれについていくことしかできなかった。

 

 

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