あの後一通り遊び終えたキョウヤ達は門限ギリギリに寮に到着した。
そしてそれから少し時間が流れ今に至る。
「さぁナイト、自白してもらおうか、何で俺にこんなものを買いに行かせた?」
その手には事の発端のエロゲが握られている。
それをナイトに見せつけるようにして迫る。
「え~と…それは…」
「あぁ言っておくけど自分で買うのが恥ずかしかったとか言う理由は無しだぜ?」
キョウヤはまず一手潰す。
この理由を出されればどういっても反論の余地はないからだ。
「キョウヤと一緒にこいつを楽しみたかったからだよ」
「は?俺と…?」
「あぁ、そうだよ。シスコンスキルの高いお前なら一緒に楽しんでもらえると思ってだな…」
シスコンスキルが高いのは自分でも自覚している。
しかしそれでナイトと一緒にエロゲを楽しむというのは御免こうむりたいことだった。
しかも男二人でエロゲなんて最悪なシチュエーションだ。
「いや、そんな気回ししなくていいから」
キョウヤはきっぱりと断る。
死んでも男と一緒にエロゲなんてしたくなかった。
「とりあえず一番プレイさせてやるからさ、な?」
もう怒る気力が消え失せたキョウヤは盛大にため息をついた。
誰だってこんな妙な事を言われ続ければあきれるさ。
「あぁもうそれでいいから」
キョウヤは適当に相槌を打ってパッケージを机の上に乱雑に置いた。
「お前!何乱雑に扱ってるんだよ!それ俺のなんだぞ!」
どこに怒ってるんだかとキョウヤはあきれもう一つため息をつく。
「そういやさ特典についてただろ、あれ」
「あれ?」
「そうだよ、あれだよあれ」
あれと言われてもキョウヤにはピンとこなかった。
特典の中身など詳しく知っているわけではないキョウヤはナイトが何を指しているのかが理解できなかった。
「あぁもうあれだよ!その…ヒロインが着てるメイド服とかの!」
「あぁ、あれか。あれならユキが欲しいって言ったからあげちゃったよ」
何故かわからないが欲しがっていたユキにあげたのだった。
それを聞いた瞬間ナイトは絶望の淵に落とされたような顔をした。
「お前…それ本当か…?」
「あぁ本当だ。それにあの様子じゃたぶん言っても返してもらえないんじゃないかな」
あの嬉しそうにあれを抱えたユキを思い出しそう付け加えた。
「まさか…俺はアレを一番楽しみにしてたんだぞ…リコのメイド服、ユウのスク水、サナの縞パンで俺の滾った欲を解消しようと体験版プレイ時からずっと楽しみにしていたんだぞ!」
「黙れ変態が!」
キョウヤは反射的にナイトの鳩尾に拳を突き入れる。
ナイトは床に手をつき肩を震わせる。
しかしすぐに顔を上げぶっきらぼうにこういった。
「もうお前にそのゲームあげるよ。もうあれがないと楽しめないからな…」
その顔は疲れ切ったような顔をしていた。
キョウヤとしては大迷惑だったが自分が良かれと思った行為でこんなにナイトが傷ついたのだから当然の報いかと飲み込んだ。
コンコンとドアのノックの音が聞こえた。
キョウヤとナイトはお互いに時計を見やる。
時刻としては23時30分
とても訪問者が訪れる時刻ではなかった。
「ねぇ、入ってもいいかな…?」
ユキだ、ユキが訪ねてきたのである。
こんな時刻に訪れるのも不審な事だがキョウヤはユキを部屋に招き入れることにした。
「あぁいいぞ。鍵開いてるから入ってこいよ」
ドアを開け入ってきたユキの姿に二人は驚愕した。
なんとそこには例のあのメイド服を纏ったユキが立っていたのである。
「ど、どうした、その格好!?」
「これ?お兄…じゃなかった、ご主人様にご奉仕するメイドの格好だよ」
さも当然のようにユキはそう答える。
「いやおかしいだろ!なんでそんな…」
「だってご主人様はメイドさんが好きなんでしょ?だから…その…ご奉仕を…」
「だからなんでそうなる!?」
「ご主人様が買ってたえっちなゲームの内容がメイドさんのだったから…」
キョウヤの頭の中はもうぐちゃぐちゃだった。
突然のユキの来訪、さらにはメイド服でのご奉仕など言われてもさらに混乱するだけだった。
しかしユキは一番重要な事を勘違いしているのでそれを訂正しないといけなかった。
「あのな、あのゲームは俺のじゃなくてナイトのモノだ。買ってきてくれって頼まれたんだよ」
突然矛先が向いたナイトは一瞬びくっとしたがすぐに平然な顔に戻ってこういった。
「あれはキョウヤのだよ、確実に」
「え?ナイト…?」
「俺は嘘は言ってないよ。あれは今はキョウヤのモノだ」
そうだった、あれは今キョウヤの所持物として扱われている。
確かに買ってきてと頼んだのはナイトだったが現在キョウヤのモノになっているのであれば弁解の仕様がない。
「ご主人様、嘘はいけませんよ」
そう言ってゆっくりとキョウヤに迫っていくユキ。
「ナイトがいるけど…まぁ問題ないよね、ご主人様…」
一歩、さらに一歩距離を詰めていくユキ。
その表情は近付いてくるごとにふやけた表情になってくる。
そしてキョウヤの目の前まで来たユキはそこで膝をつきキョウヤのズボンのベルトに手をかける。
「ご主人様、すいません不手際で。でもすぐにご奉仕を開始しますから…」
これはヤバい。
非常にヤバい。
このまま進むと何が待っているのかはキョウヤでもすぐにわかった。
「あ、あぁー!俺眠くなってきたなぁ。今日はもう寝るからほらユキも早く部屋に帰って寝ろ」
ぎこちなくそう言ったキョウヤは力づくでもユキを部屋から追い出し部屋に鍵をかけた。
ユキがキョウヤの方を悲しそうなしかしどこか申し訳なさそうな目で見つめていたがキョウヤは見ないようにしてユキを部屋から出した。
「はぁ…なんだったんだよ、あれは…」
一息ついてからベッドに腰を下ろすキョウヤ。
「なぁ、キョウヤ」
「あ?なんだナイト?あれについては何も聞くなよ」
キョウヤはおどけてそう言ってみたもののナイトの顔を見て一瞬で凍りつく。
彼はいかにも真剣な顔でこちらを見据える。
「あいつ、お前に惚れてるぞ」
「え?」
真剣な顔で放たれた言葉はあまりにも間の抜けた言葉だった。
「ただ惚れているだけじゃない、べた惚れだ。もうお前しか眼中にないみたいな感じだぞ」
「いや、何言って…」
「本当だぞ。俺の恋愛観に間違いはない」
何ふざけたことを言ってるんだとキョウヤは思った。
さすがにそれはいい過ぎだと思った。
「お前の恋愛観なんて大したことないんじゃねぇの?」
「いいや、数百人の女の子とデートしてきた俺ならわかる、あれは確実だ」
「どうせゲームだろ?」
「あぁ、ゲームだよ。でもそれでも少しはリアルに通ずるところはある」
いかにも馬鹿げたことだがナイトの言葉にはそれなりの重みがあった。
それはもはや信じるしかなかった。
「キョウヤ、覚悟だけはしっかり持ってろよ」
「覚悟?なんで…?」
「お前の選択次第ではほかに悲しむ女の子がいるからだよ」
全く意味が分からなかった。
ナイトが言っていることの意味が。
「お前はユキのほかに3人の女の子に惚れられている。まぁ名前は出さないが心当たりがあるならその子だろうな」
3人
ユキのほかにもあと3人にも惚れられていたのだ。
しかしそう言われても実際ぴんと来ない。
「まぁどの子を選ぶかはお前次第だ。それで後悔だけはするなよ。それじゃオヤスミ」
ナイトはそう言って部屋を出ていった。
キョウヤはベッドに倒れ込み今の言葉を思い返す。
ユキを含め4人の女の子が自分に惚れている。
しかしキョウヤとしては全く心当たりがなかった。
色々な思考を巡らせるキョウヤだったがいつのまにか眠りへと落ちていた。