予想外の共闘者
作戦が渡されて数日、キョウヤ達は準備を整えある場所に集合していた。
「で、何でこんな裏通りの所にあるもんから出発なんだよ?」
ケントが至極まっとうな理由を発する。
それはそうだろう。
今いるここはほとんど人通りも無ければ目立った施設も無い荒んだ場所だったからだ。
「俺達は今から隠密行動をするんだぞ?なのに目立った場所から出発するのはどうだ?」
「そうか、そう言う理由だったのか。やっぱナイトさんはスゲェや、年期が違う!」
この程度のことで褒めるなと口では言っているナイトだったがその表情は明らかに緩んでいた。
(ナイトってもしかして褒めるのに弱いのか…?)
キョウヤはそれを試してみようとしたがユラに即座に制止させられる。
「お前ら遊んでる暇はないぞ。早くポイントまで行っておかないと後が怖いぞ?」
「ポイント?」
イツキが横から意味が分からないという顔をしていた。
「お前話聞いてなかったのか?」
「ごめんね、その時はちょっと眠たかったから…」
イツキは申し訳なさそうに頭を下げた。
ユラは仕方ないという感じで頭をかきむしり説明を始めた。
「今から俺たちはここからオシリス領ギリギリの街にある宿へ向かう。そこで今回の作戦の重要人物と合流し、馬を借りる。その宿が今回のポイントになる」
「うん、わかったよ、ありがとう。でもヨイザキ先輩、重要人物って誰ですか?」
「それはまだわかってない、上官が話さなくてもいいと判断したんだろうな」
そう、あの上官この前の作戦会議でも会話してみたが(モニター越しだが)かなりの面倒くさがりで話す必要はないと思ったことはとことんはなさないのだ。
しかし過去の実績から見てもこのことが裏目に出たことはないらしい。
何でも本当に必要な情報だけ頭に入っていれば他の事に気を回す必要がなくなるらしい。
「無駄話をしてる時間も惜しいから早く行きましょうよ?」
そう声をかけたのはサクヤだった。
いつもお堅いイメージがあるが今日はそれ以上だ。
常に真面目な顔をして凛とした表情をさらに引き締めている。
「そうだな。でさ、ここからその宿までどれぐらいでつく?1時間?もしかしてそれ以下?」
「惜しいなケント、正解は約3時間だ」
「3時間!?てか全然惜しくもない!?ナイトさん、何かの冗談…ですよね?」
ケントは恐る恐ると言った感じで尋ねたがナイトは笑顔でそのセリフを切り落とした。
「まったく冗談じゃないぞ、今から3時間ぶっ通しで歩いてもらう」
それを聞いて新人3人は驚きと絶望に満ちた顔を作った。
どうやらやる気を出端からそがれてしまったようだ。
「はぁはぁ…やっと着いた…」
あれから歩き続けて3時間、やっとのことで宿にたどり着いた。
初めのうちは仲良く談笑できるほどの余裕があったが2時間を超えたあたりから新人3人はほぼ無言でひたすら歩いていた。
もちろんそれ以外のメンバーは余裕な顔をしていたが。
「これぐらいでへばってちゃダメですよケントさん」
「ヨウか…お前よくその小っちゃい体で平気だよな」
ケントは疲れ切った顔でようの頭をわしゃわしゃと撫でる。
ヨウはその手をいやそうに振り払い少し怒った様子でこういった。
「こんなんじゃこの先ほかの作戦にも参加できませんよ?あと小さいとか言わないでくれませんか?」
最後のセリフは笑顔で放っていたが言葉自体に棘が含まれていた。
正直怖い。
「そうだぞケント。それぐらいでへばってちゃダメじゃないか」
「キョウヤ、お前もへばってたじゃないか」
「う~ん…俺疲れてたけどあと1時間は歩けたぞ?」
そう言ったキョウヤはとても生き生きとしていた。
今までずっと歩き続けてきたとは思えないぐらいだ。
「キョウヤさんって意外とスタミナあるんですね。今度一緒にケントさんの体力向上メニューを作りませんか?」
「なかなかいいこと言うじゃん、ヨウも」
2人は笑いながらそんな会話を交わす。
しかしその間ケントはもう疲れ切った様子、笑いの一つも起きない。
我慢の限界だったのか消衰しきった顔で先に宿に入ると言って姿を消した。
「どうしますか?僕たちも宿に入りますか?」
「そうだな、そうするか」
そう言って二人も宿の中へと足を踏み入れた。
宿の扉を開く、数秒のブランクの後キョウヤの身体に大きな物体がぶつかってくる。
「ぐふっ…!?なんだこれ…?」
なんとかその物体を抱え込むことに成功したキョウヤはその物体にくるまれている布のようなものをはがす。
すると中から出てきたのは何と小さな女の子の頭だった。
キョウヤがはがしたのはどうやら服のフードだったらしい、その少女は大きすぎる服を着ているうえにパーカーまでつけていたのだ。
(ん…?こいつ…)
キョウヤにはその少女に見覚えがあった。
短髪に大きな瞳の小さな少女。
「キョウヤお兄ちゃん!久しぶりだね!」
「やっぱりヒカリだったのか」
この間迷子だったところを助けた少女、ヒカリだ。
「えへへ~キョウヤお兄ちゃんと一緒に作戦いけるなんてヒカリ嬉しいよ」
(ん…?作戦…?)
「なぁ、ヒカリはどうしてここにいるんだ?」
まずこの場違いな少女にこの質問を尋ねてみる。
訊きたいことは様々あるがこの質問をぶつければ大抵のことは理解できる気がした。
「お兄ちゃんきいてないの?ヒカリ今回の作戦に参加するんだよ、それもじゅーよー人物としてね!」
キョウヤは一瞬驚きで声が出せなかった。
こんな小さな女の子を先頭に駆り出すほどにオシリスは堕ちているはずもない。
ならなぜこんなことになっているのか訳が分からなかった。
それに重要人物と言っていたがそのことについても疑問まみれだ。
「話なら俺がするよ」
奥からナイトが姿を現しこうなった経緯を話し始める。
「へぇ、それでなのか…」
さっきの話を要約しよう。
どうやらヒカリは能力者であり今回の研究所の偵察任務には必要な人物らしい。
で、その能力というのは物体の構造を知るという力。
何でも触れた物体の内部構造や性質が分かるほか建物の内部の情報や構造が分かったりする能力らしい。
そしてその能力で研究所が危険と判断された場合はもう一人の能力者、今はまだいないがその人物に頼り研究所を破壊するらしい。
キョウヤ達の本当の任務はその護衛と補佐らしい。
「じゃあわかったところで今日はもう解散だ。まだもう一人の能力者も来てないし後は自由に過ごせってさ」
「そうか、わかったよ」
ナイトはひとつ咳払いをしキョウヤの方を向きこう言った。
「で、キョウヤ君。ちょっとヒカリちゃんと遊ばせてくれないかな?いや、何ちょっと知識が少ない幼女にえっちな教育とかしようなんて微塵も考えてないからな」
キョウヤはすぐさまナイトの鳩尾に一発食らわせ再起不能状態まで追いやった。