終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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ワナ

「はぁはぁ…さっきの奴も攻撃してこないしそろそろ走るのやめないか?」

ケントは息を切らせながらそう言った。

さすがにこの長距離を遠距離で走るのは困難だろう。

しかしここにいるものは皆化物じみた体力を持っているものばかりなのでケントのその要望も通る筈がない。

ユラは妹であるヒカリを抱えて走っているし、ナイトもデンシを抱えて走る。

それに体力がなさそうなミンも少し息を切らしているもついてきている。

「ケント、お前帰ったら体力向上の特訓な」

キョウヤはというとまだかろうじて軽口を叩けるぐらいの体力は残っていた。

「もうすぐ森を抜けるよ、みんな頑張って!」

サクヤはそう言って皆を励ます。

もうすぐそこには広々とした荒野が広がっている。

「ケントあとちょっとだ早く!」

ケントは残りの力を振り絞り走る。

そして森を抜けるところがるように倒れ込んだ。

しかしその動作に違和感。

正確に言うと着地地点に違和感があった。

ケントが倒れ込むと同時に足元が光り出す。

「ケント!早く動け、足元に魔方陣がある!」

魔方陣は発動するまでどういう効果があるのかわからない。

強いものだと対象者に大ダメージを与えたりすることもできるものだ。

ケントは必死になって体勢を立て直そうとするが身体が言うことを聞いてくれないようだ。

全く動く気配がない。

「ヤベェ…」

ケントがそう言った瞬間足元の魔法陣が激しい光を放ち作動した。

光が収まりケントの方に目をやる。

しかしそこにはユラが立っていてその横にケントが横たわっていた。

寸でのところでユラがケントを助けたが逆にユラが魔方陣の餌食になってしまったというところだ。

「ちっ…捕縛魔砲か…」

ユラの足元の魔法人から光の檻が現れてユラを閉じ込める。

「ユラ兄ちゃん!」

「動くなヒカリっ!」

ユラは彼の元へ駆け寄ろうとしているヒカリに怒鳴る。

「ここは多分魔方陣だらけだ、迂闊に動けばすぐに餌食になる。それに全部が全部捕縛魔砲だとは限らない」

ユラはヒカリを心配して怒鳴ったのだ。

しかしユラの言うとおりだ、この先へ進めばもっと魔方陣が仕掛けられているかもしれない。

そこを無傷で通るにはかなりの難易度だと言えるだろう。

「どうすれば…」

「キョウヤさん、僕が行くよ。僕の能力なら魔方陣を無効化できる」

ヨウがすすんで前へ出る。

自分に任せろと言っていたがかなり心配だ。

ヨウが少し歩を進めると足元の魔法陣が作動する。

目映い光が放たれる瞬間ヨウは能力を発動させた。

「身代わり羊(スケープゴート)!」

魔方陣が発動された場所には小さな羊の人形が置かれていてヨウはその隣に立っていた。

「僕の能力の一つ、スケープゴート。トラップなどにかかれば身代わりになってくれるんですよ。まぁでもタイミングがずれれば意味ないんですけどね」

ヨウは少し卑下するように言ったがキョウヤはすごい能力だと思った。

これで目に見えないトラップを解除しながら移動することができるとわかり少し希望が湧いてきた。

「お前たち、俺のことはいいから先に進んでくれ。俺はここに残るから」

ユラはそう言って先を促す。

しかしヒカリは嫌だと泣きながら首を振る。

「ヒカリ、お前ももう俺がいなくても大丈夫だろ?絶対に俺も追いつくから先に行っててくれ」

それでもヒカリはその場を動こうとしない。

よほど兄と離れたくないらしい。

「俺がお前をおいて先に逝くわけないだろ?だからちょっとだけバイバイだ。…早く行け!」

全く動こうとしないヒカリにユラは痺れを切らし叫ぶ。

ヒカリはびくりと肩を震わせ目に涙をためながら歩を進め始めた。

「キョウヤ、ヒカリのことヨロシクな」

「あぁ、わかってるよ。何があっても俺がお前のかわりに守ってやるから」

キョウヤは意思のこもった瞳をユラにぶつけヒカリの後を追った。

 

「おいデンシ、お前の能力でこいつを解除できないのか?」

ユラはデンシに声をかけた。

デンシの能力は物体の構造さえわかれば破壊できる能力だ。

それは魔砲にも適用される。

「でもこの魔法の構造が…」

「それは俺が解析する。だからお前はここに残れ。あとナイトも残ってくれ、いやな予感がする」

ユラはナイトにも声をかける。

「え?でも俺まで抜けると…」

「あっちはサクヤがいるから問題ないだろう。それよりこれはもしかするとアイツが近いかもしれないな…」

「あいつか…なら俺も残るか」

そう言ってナイトとデンシはユラの元へ残った。

 

主要戦力が二人も抜けたメンバーはなおも魔方陣の荒野を進んでいた。

しかしヨウの能力をもってしても完ぺきには避けきれずところどころ傷を負う。

「そうだ、私の能力なら…」

突然イツキが声を発する。

どうやら傷が増えるヨウを見かねて試行錯誤を繰り返したんだろう。

「ねぇ私に任せてくれるかな?」

「あぁ、行ってこい」

キョウヤはイツキの肩をたたき先へ進ませる。

イツキが魔方陣にかかる。

魔方陣は輝きを放ち爆風をおこしイツキの身体を飲み込む。

しかしイツキは何もなかったように歩を進める。

それはその先でも同じことだった。

魔方陣からは様々なトラップが発動されるもイツキは平然と無傷でそこを横切る。

「イツキ、お前の能力って…?」

「私の能力は完全防御(パーフェクトガードナー)完全に私自身への攻撃をシャットアウトできるの」

どうやら攻撃を無効化できる能力らしい。

「でもそれは私を対象にしている攻撃じゃないと発動しないの。たとえば先輩に向けて放たれた魔法を私が代わりに防ぐことはできない」

イツキはしゃべりながらも歩を進めて次々と魔法陣の攻撃を防ぐ。

「ったくイツキもこんな能力持ってるなら早く言えよ」

「ごめんね、私あんまり能力使ったことないから自信なくて…」

イツキは申し訳なさそうにこちらを振り向いて謝る。

「何か来るぞ!防御の姿勢を取って!」

急にサクヤが声を荒げてそう言う。

その数秒後頭上から魔法の矢が降りそそぐ。

「なんだ、敵か…?」

キョウヤは辺りを見渡し進行方向に一人の人影を見つけた。

「ごきげんよう皆様、どうです?私の歓迎気にいって下さりましたか?」

流ちょうなお嬢様言葉を並べて話してくる影は一歩また一歩とこちらへ近づきその全貌があらわになる。

その姿を見たキョウヤは驚愕した。

なにせユキとそっくりな少女だったからだ。

美しい金髪に幼さの残る顔立ち、それに身長だってほとんど同じくらいだ。

ただ違うのはその姿がゴスロリという事とその言葉遣いと声、そして髪の結び方だ。

髪をストレートになびかせて凛とした感じが出ている。

「どうも皆様、お初にお目にかかります。私はイリヤ・ドールですわ」

少女はスカートのすそを少し持ち上げお辞儀をした。

その少女の名前、イリヤ・ドールというのを聞いてキョウヤ以外凍りついた。

彼女は黒の国の有能な兵士だったのだ。

数々の戦闘でその姿を目撃されておりカノジョが出てきた戦は負け知らずという伝説まである。

キョウヤは記憶が抜け落ちているためそのことは全く分からなかったが。

しかし全員からにじみ出る恐怖と戦慄した感情がキョウヤを震え上がらせた。

「こんな辺鄙(へんぴ)なところに誰が来るものかと思っていましたが、やってくるものなのですね。少しお顔を拝見させていただきますわ」

彼女は一人一人の顔をまじまじと見つめる。

そしてキョウヤの顔を見るなり彼女はその場に凍りついたように動かなくなった。

「え~と…俺が何か…?」

キョウヤは敵だというのにそんなことを聞いていた。

それぐらい不思議な事だったからだ。

「もしかして…お兄様・・・ですの?」

「はい?」

「そうですの!間違いなくお兄様ですの!こんなところにいたんですのね、お兄様!」

キョウヤは全く記憶にもなかったが彼女の目は輝いていてそれが本当だと証明していた。

(俺に妹が…それ以前にこいつ俺の過去を知っている?)

「あぁお兄様、ずっと逢いたかったですわ」

イリヤと呼ばれる少女は嬉しそうにキョウヤを見つめ陶酔しきっていた。

 

 

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