終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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第11章「妹様はお嬢様」
過去


「なぁ、俺のことをお兄様って…俺のことを何か知ってるのか?」

キョウヤはイリヤと呼ばれた少女にそう尋ねた。

彼女は敵ではあるがキョウヤにしてみればそんなことどうでもよかった。

ただ自分の正体が何でどこから来たのかなどが知れればよかったのだ。

「お兄様…?何言ってるんですか?私には訳が分かりません」

彼女は不安げな表情を向けたままそう答える。

「どうしてそんなことを聞くのですか?もしかしてオシリスの連中に記憶を奪われてしまったのですか!?」

「記憶がないのは確かだけど…奪われてはないと思うぞ」

キョウヤは力なくそう答える。

もしかすると本当にそうかもしれないという思いが溢れてきたからだ。

「そんなことオシリスでするわけないじゃない、あなたってバカなの?」

キョウヤ達の話を横から聞いていたサクヤがそう一瞥する。

「だいたいあなたがキョウヤの妹って話も不審なのよ」

サクヤは目の前のゴスロリ少女に喰いつくようにそう言う。

「キョウヤ…今のその名前がお兄様の名前なんですね…あぁ、前はもっとカッコいい名前でしたのに…!」

イリヤは涙をふく素振りを見せながらそう嘆く。

(俺の前の名前…?この名前が俺の本当の名前じゃない…?)

キョウヤの身体に戦慄が走った。

自分が唯一覚えていたモノさえ虚無のモノだという可能性を突き付けられたからだ。

「お兄様、本当に覚えていらっしゃらないのですか?」

「あぁ、ゴメン…覚えてないんだ…」

キョウヤはその言葉を聞いたときはっとした。

なぜかその少女に謝ってしまっていたからだ。

無意識に口から出た言葉とは言えこんな言葉を発するなんて何か特別な意図があるのだろうか。

「そんなのキョウヤがあなたの言っているお兄様じゃないからでしょ!」

「そんなことはありません。間違いなくあれはお兄様、ハデス・グレイですの!」

(ハデス・グレイ…?確かどこかできいた気が…)

キョウヤは記憶の糸を探りその名を探す。

そしてある最悪の日の記憶からそのワードを掴んだ。

あの日、そう編入試験の日だ。

デーモン共が探していた人物が確かハデス・グレイだった。

確かその人物は急に戦場に現れなくなった暗黒騎士だったらしいが…。

「そんなのデタラメよ!第一はデスは死んだはずじゃない!」

サクヤは息を荒げてそう反論を返す。

「誰かお兄様の死体を見た人はいるのですか?いないでしょう?なら死んだとは考えられませんの」

イリヤは勝ち誇ったようにそう言った。

「で、でも…」

そこで言いよどんだサクヤに対しイリヤは怒涛の言葉攻めを始めた。

「第一あんなに強いお兄様が死ぬはずありませんの。どこかで必ず生きている、私はそれを信じて今まで生きてきたのですから。第一あなたみたいな方がお兄様の何を知っていてそれを言っているのです」

イリヤの言葉は至極冷ややかなモノだった。

冷たすぎて聴く者の心をすり減らすナイフの様だった。

「でもその派ですがキョウヤっていう根拠は無いはずよ、あなたが勝手に勘違いしているだけかもしれないじゃない」

そうだった、その根拠がなければキョウヤ自信が最強の暗黒騎士ではないと証明できる。

しかしそれを言い放ったサクヤはしまったという表情をしていた。

(サクヤ…?おかしい、あいつがこんなに動揺するなんて…)

「お兄様がお兄様である証拠はその能力を見れば一目瞭然ですの」

サクヤはそこでびくっと身体を震わせる。

やはりナニか会話の流れがおかしくなってきている。

「お兄様の能力、それは異空間から自分がストックしている武器を取り出すこと。ねぇ、お兄様?心当たりがない?」

一瞬で体の血の気が引くのが分かった。

キョウヤの力はイリヤが言っていた通りのモノだった。

ここで武器を出せばキョウヤには後がなくなってしまう。

しかしこの少女から過去を引き出すにはこの方法しかなかった。

「これでいいのか?」

キョウヤは何もない空間から剣を引き抜いてイリヤに見せる。

「あぁやはりお兄様だったのですね!この剣も確かにお兄様の…」

「それだけじゃ証明にならない!ほかの証拠の提出を要求するわ!」

サクヤがイリヤの言葉を遮りそう叫んだ。

「おい、サクヤ…お前本当にどうした?」

「キョウヤは黙っててよ!」

サクヤはすごい形相でキョウヤを睨みつける。

その鋭い瞳からは涙が少しこぼれ落ちていた。

「左手首に傷跡がある筈ですの。それを確認していただけますか、お兄様?」

キョウヤは急いで自分の左手首を見た。

今まであまり気にしたことが無かったが確かにそこには線状痕があった。

今までの記憶を辿ってみるがキョウヤにはこんな傷を作ることをしたことが無かったのだ。

「確かに…傷跡がある…」

「それはあなたが言ってる傷とは違うかもしれないじゃない!」

サクヤはそれでもなおイリヤに噛みつく。

イリヤはやれやれとため息をつき冷ややかな声でそう言った。

「お兄様の傷は線状痕、これが確認できたらこの不毛な争いをいったん止めさせてもらいますわよ」

これ以上二人には反論の余地が残っていなかった。

キョウヤは傷があるとは言ったが線状痕まで入っていなかった。

それを言い当てたということは間違いなくこのイリヤという少女は自分の妹であり、そして自分はハデスだという事だった。

「やっぱりわたくしの目に狂いはなかったのです。さぁお兄様、一緒に約束の続きを果たしましょう」

イリヤはそう言ってキョウヤに手を伸ばす。

「うるさい!私はお前の言葉など信じない、キョウヤは私が全力で守る!」

サクヤは虚しいほどに叫んだ。

「もういいよ、サクヤ。ありがとな、でもこれ以上の反論はいいから」

キョウヤはサクヤを諭すようにそう優しく言った。

「でもなんでこんなことを…?」

サクヤは目に涙をためて嗚咽混じりながらもこういった。

「だって…キョウヤがハデスだとわかったら上の連中がキョウヤを狙ってくるに違いないじゃない。ワタシはこれ以上仲間が死ぬなんて嫌なの!」

「サクヤ…」

サクヤの意図が分かりキョウヤは苦笑交じりにそう言った。

「俺には絶対に死ねない理由がある、だから安心しろ、これが事実で上から狙われたとしても俺は絶対に生き延びてみせるから」

相当臭いセリフを吐いたとキョウヤ自信内心ではため息交じりだったがそれでサクヤが喜ぶならと精一杯の思いをぶつけた。

「何わたくしを差し置いてそこで盛り上がってるんですの!?」

イリヤは嫉妬がこもった声音でそう言ってきた。

「お前のことを差し置くわけねぇだろ、今回の主賓様なんだからな。サクヤ、ちょっと待ってろよ、確実に決着をつけてきてやるから」

混乱しきったサクヤに笑みを向けてキョウヤはイリヤの方へと向かって言った。

 

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