「はぁ…どうやって切り出そうか…?」
俺は今クロノスの自室でため息をついていた。
今までの経緯を説明しよう。
俺はあの戦いの後救護に駆け付けた連中と一緒にクロノスへと無事帰ってくることができた。
ケントはそこですぐに医務室で治療を受けている。
そこでユキに俺の正体を明かそうとして行き詰ったのだ。
自分が最強の暗黒騎士だっていうことももちろん言わなければならないからだ。
もし実の兄が大量の殺戮者だったらどう思うだろうか?
そう思えば思うほど俺はユキには言えなくなっていたのだ。
「くっそー…どうするかな…」
思考は堂々巡りだった。
さっきから考えることはほとんど同じ、詰みの状態だ。
考えてばかりじゃ埒が明かないと思い外に出ようとするも足がすくんで動かない。
完全に行き詰った状態だった。
そしてふと机の方に目を向けてみるとナイトからもらったゲームが目に入った。
「ちょっと息抜きでもするか…」
ナイトからもらったという点ではとてつもなく危なげな雰囲気だったが俺は一気に起動させた。
「お兄ちゃん…私お兄ちゃんのことが好きなの…」
「うん、俺も好きだよ。リコちゃんのこと大好きだ」
「嬉しいよお兄ちゃん、じゃあキスより先のことしちゃおっか?」
「うん、俺もしたい…」
「もぅお兄ちゃん、ホントエッチなんだからぁ」
「ふへへ…って俺は何ゲームの娘と会話してるんだ!?」
俺はふと我に返った。
このゲームが相当面白くて主人公に感情移入しすぎてどうやらゲームの世界にトリップしてしまったようだ。
「はぁ…ほんと俺何してるんだろ…」
我に返ると一気に虚無感が襲ってくるものだ。
この場合いつもの倍以上だ、今日の事はもう忘れてしまいたいぐらいだ。
ゲームの中ではさっきの娘が主人公と情事をしているシーンだった。
不意にその娘の姿とユキが重なり脳内でいけない妄想が働いてしまう。
「って俺は何考えてるんだ!?もう疲れてるのかな…」
俺はパソコンの電源も落とさずにベッドに横たわる。
ベッドに横たわると今日のことが一気に脳内で再生される。
俺にもう一人妹がいたこと、俺がハデス・グレイだったこと、ケントの腕が飛ばされたこと、ユキが本当の妹だったこと…
少し意識に靄がかかってきたところでちょうど部屋のドアがノックされた。
「あいてるから勝手にどうぞ~」
俺は気だるげにそう返事をした。
「お兄ちゃん…え~と、こんばんは?」
その姿を見て俺はびくっとした。
そこから現れたのはユキだった。
俺はその場で少し慌てふためく。
しかしユキもどこか落ち着かないといった感じだ。
「お兄ちゃん、え~と…その…どこから話したらいいのかな…?」
「俺もユキに話があるんだけど…やっぱりどこから話したらいいかわからないや」
二人は少し苦笑しあった。
少し場の雰囲気が落ち着いたところでユキが深呼吸をして覚悟が決まったような表情をして俺に向き直る。
「お兄ちゃん!あのね、私実は…お兄ちゃんの本当の妹なの!・・・ってあれ?驚かないの?」
俺は笑みを浮かべてこう言った。
「驚くも何も俺が言いたいことと一緒だったからさ。俺もそれを言おうとしてたんだよ」
「お兄ちゃんもだったの!?な~んだ、無駄に緊張しちゃったよ」
「はは、俺もだ」
二人はそこで笑いあったがすぐに静寂が訪れる。
ユキは俺の顔をちらちらと見ながら何か言いたそうにしている。
「ん?なんだ?まだ言いたいことでもあるのか?」
「え~と、あのねお兄ちゃん…」
ユキは少し目を瞑って一息ついたあと俺にこう言ってきた。
「私ね、お兄ちゃんのことが好きなの。それも抑えられないぐらいに」
「え?」
衝撃が俺の体を走り抜ける。
ここは夢の世界かと思い自分の手の甲をつねるがちゃんと痛覚はあった。
こんなゲームみたいなこと許されていいんだろうか。
「今日一日お兄ちゃんが本当のお兄ちゃんだって聞いてそれで思ったの、嬉しく思う自分と悲しく思う自分がいるって」
目を伏せながらユキは言葉を続ける。
「それでね私よく考えてみてそこで結論に至ったの…お兄ちゃんが好きって」
「いや、待てよ…でもさ俺たちって本当の…」
「うん、わかってるよ!けどもう無理、私お兄ちゃんが大好きなの!それも兄としてじゃなくて男として!」
ユキは必死でそう訴えかけてくる。
「だからさお兄ちゃん…キス…しよ?」
「いや…でも…お前は俺の妹だしこんなことするのって…」
俺はしどろもどろになりながらこう答える。
俺はどこかこの答えの抜け道を探っているのかもしれない。
「じゃあ妹じゃなかったらキスしてくれたの?私のこと愛してくれたの?」
「そんなことはないさ!」
俺は力強くきっぱりとそう答えてしまった。
その答えを出せばもう後には引けなくなる。
「じゃあキスしてよ…!」
ユキは泣きながら俺にそう訴えかけてくる。
俺はユキの頬に伝う涙をぬぐい優しくこう言い放った。
「俺はお前が大好きだ、今は妹への好きか女への好きかはわからない。けどお前を傷つけたくないんだ…!」
そう、俺の答えはそれだった。
「もしここで俺が好きって本心をぶつけちまうとお前を傷つけるんだよ…兄妹で恋するなんて傷つくことしかできないんだよ…」
俺も無意識に涙があふれてきていた。
自分が好きな相手を想ってのことだったがこの選択はあまりにも悲しすぎる。
もしこの展開を神が仕組んだものなら今すぐその神をぶっ殺してやりたいぐらいだ。
「私は傷ついてもいい、ううん、お兄ちゃんと一緒なら傷ついても大丈夫だから…!」
「それでもだめだ…!それに俺はお前を愛する資格なんて…」
その言葉を放とうとした次の瞬間俺の言葉はその口ごと封じられた。
俺の唇にユキの唇が重なってきたのだ。
その時俺の中に渦巻くすべてのモノが瓦解する音がした。
そしてユキの唇にのみ集中する。
(あぁ…ユキの唇柔らかいな…それに女の子特有のいい匂いもする…)
その口づけはほんの数旬だったが俺には10秒も1分もそれ以上の時間にすら感じられた。
「もぅ!お兄ちゃんは理屈ばっかりで!私が好きか嫌いかではっきりさせたらどうなの!」
「俺は…」
俺は一呼吸おいてその解答を言の葉にのせた。
「俺はユキが好きだ。大好きだ。前も言ったとおり本当の好きかどうかはわからない。でもお前と一緒にいてその答えを見つけさせてくれ!」
俺は思いのたけを飾らない言葉でつないでいった。
自分でも臭いとは思っている。
でもこれ以上ウマい言葉が見つからなかった。
「お兄ちゃん…嬉しいよ!」
「ユキ…なぁこれから俺と一緒にたくさん傷ついてくれるか?」
「うん!私もいっぱいお兄ちゃんと同じ傷を受ける!だから私のこと好きになって!大好きになって!世界一愛して!」
そして俺たちはもう一度口づけを交わした。
今度は一方的ではなく同意の上での愛し合うキス。
お互いの感情をぶつけるように口づけを交わす。
「あはっ…そう言えば私さっきのキス、初めてなんだよ?お兄ちゃんに初めて奪われちゃったなぁ…責任とって最後まで愛してよね!」
「はは、わかってるよ、ユキ」
今更俺も初めてだったなんて言えないよなぁ。