終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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マリナとケント

私は今病室のドアの前で立ちすくんでいる。

さっきからどうにも落ち着かない。

この部屋にはケガをしたケントがいる。

私はそのお見舞いに来たのだけれど気恥ずかしさや恐怖といった感情がごちゃ混ぜとなり一歩を踏み出せないでいた。

(しっかりするです、マリナ!早くケントにあうのです!)

心の中でもう何十回も繰り返した言葉をつぶやく。

私はとことんこんな私が嫌だった。

普段はみんなから押しが強いとか言われてきたけどこんな大切なことを目の前にすると途端に感情に押しつぶされそうになる。

(もう!こんなことでくじけちゃダメです!マリナは新しい一歩を踏み出すのです!)

私はそう自分に言い聞かせて震える一歩を踏み出す。

 

「ケント、お見舞いに来てやったのです!」

私は元気なふりをしながらそう言って病室に入る。

部屋の備え付けのベッド、そこから窓の外を眺めていたケントはこちらを振り向いた。

その顔はいつものような明るさはなく暗く冷たい、まるで生気のこもっていない様だった。

「あぁ、マリナか…」

ケントは力なくそうつぶやく。

ケントの右腕は話に聞いていた通り存在しなかったが私はそれに触れることをせずにいつもの調子で話しかける。

「どうです、今日のマリナちゃんは?いつもと少し違うですよ?」

私はそう言ってふふんと一回転してみせる。

「あぁ…ツインテールにしたのか…可愛いよ…」

その声には全く感情がこもっておらずそう言ったのが本心かどうかもわからないモノだった。

いつものケントならここでバカみたいに絡んでくるはずなのにそれすらもない。

私はそんなケントを見て少しくじけそうになるも会話を続けた。

「えへへ、ユキをイメージしてみたですよ!」

 

その後数十分ほど会話をしてみるもケントの口から感情がこもった言葉は返ってこなかった。

「ねぇケント?ケントはこれからどうするですか?」

私はついにその質問を投げかけた。

「あぁ、俺、ここから去るよ。中退する…」

私はそれを聞き違いだと思いたかった。

しかしケントは今までの力のない声とは裏腹に意思のこもった声を出していた。

いやでもそれが真実だと思ってしまった。

「ど、どうしてですか?ケントがここから去る意味なんて…」

ケントは私の言葉を遮りこういった。

「俺にはもう何もないんだ…右腕がないから剣もふるえない…それに俺は…仲間を殺したんだ…」

そこからは衝撃の連続だった。

ケントはどうやらイリヤに眠らされた時全てを思い出したらしい。

編入試験の時に不可抗力であれ仲間を殺したことを…。

「だから仲間殺しの俺なんて…」

「ケントはバカです!ずっとバカです!」

私は声を荒げていた。

「どうしてそんな理由で去るですか!仲間を殺したからですか!?そのおかげでマリナちゃんやみんなと会えたんですよ!それに死んだ奴の分まで頑張らなくてどうするですか!」

私は涙ぐみながらそう言った。

例えケントを止めるためだとはいえ殺人を肯定して美化している自分に酷い嫌悪感を覚えた。

しかし今はそんなことにかまっている余裕はない。

私はまだまだ言った、ケントに思いのすべてを。

「それに右が使えなくたって左で頑張ればいいのです!諦めるなです!努力するのです!」

私はついにケントに泣きつく。

感情が抑えられなくなっていた。

「それにマリナのことはどうするですか!恋人のマリナをおいてどこかに行くなんて許さないです!」

「マリナ…俺たちもう終わりにしよう。お前も俺のことなんか忘れて他の奴と幸せになれ…」

そう言ったケントの頬は濡れていた。

「ケント…嘘が下手です…」

私はそう言ってケントの頬を伝う滴をなめとる。

「しょっぱ…」

私はその辛さに顔をしかめた。

「ケント泣いてるのです。気付いてないですか?」

それを聞いたケントは左手を自分の頬にあてがい苦笑した。

「はは、ほんとだ、泣いてやがる…」

「マリナ、ケントのことが大好きなんです。もうどこかに行くとか言っちゃヤです…」

「でも俺、もう戦えない…」

ケントは肩を落としてそう言う。

「もうマリナを護れなくなる…!」

「そんなことはいいのです!マリナにとってはケントがそばにいてくれるだけでいいのです!そりゃ戦ってるケントもかっこよくて好きです。でもマリナは普段のケントが大好きなんです!」

そう言った私はケントの唇を奪う。

ケントは一瞬戸惑ったがすぐに私に合わせるように唇をついばむ。

どれだけこうしていただろうか。

私はケントの唇から離れると満面の笑みでケントを見た。

「ケント、大好きなのです!もうマリナを寂しくさせないで!」

ケントはそう言った私を思いっきり抱き締めた。

小さな声でゴメンとなんども呟きながら…。

 

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