ユキがほかの兵士たちと共にデーモンが出現したという森についたのはその日の夕方であった。
報告があったのは午前、そしてここまでの時間にキョウヤ達は帰ってこなかった。それが意味することはただ一つしかないとユキは思った。
そう、考えたくない最後の答え。キョウヤ達がいるB班は全滅、無惨にもデーモンに殺されてしまった。
他の兵士たちもそのことを考えているのであろう、みんな顔色が暗い。
「もうすぐ目標地点だ!」
と、先頭に立っていた団長が言った。その言葉とともに兵士たちはユキを含め全員が覚悟を決めた。
しかし兵士たちは目標地点につくと驚愕を隠し切れなかった。 全滅とかそういうものが滑稽(こっけい)に思えてしまうほどの驚きが全員を襲った。
そこは森であった。
しかしその一部がきれいになくなっていた。無くなっていたという表現より抉り(えぐり)取られた、吹き飛ばされたという表現があっているだろう。
そして周りを見渡すと一つの黒く大きな肉塊が見つかる。多分あれはデーモンの魔法で焼き尽くされたものであろうと全員そう思った。
その近くには怒りにも憎しみにも恐怖にもとれる顔のまま息絶えている少女の身体がある。その胸には刀が貫かれており、その刀の所持者であろう人物はその遠く先で倒れている。
兵士たちが驚いたのはそれだけではない。デーモンの死骸が3つ転がっていたからである。
1つは頭を激しく損傷させ倒れているもの、1つは片腕と片手首を無くしたモノ、そしてもう1つはデーモンであるかどうかも不明なほどぐちゃぐちゃに潰れたもの。
そして一番兵士たちの驚きを見せたものは1人の少年である。
1人の少年が膝をついて空を見上げている。
少年の顔は感情というものが一切なかった。真顔。本当の真顔である。
しかしその少年は涙を流していた。上を向き無表情のまま涙を流していた。
「キョウヤ…!」
ユキが走り寄り、その少年を抱きしめる。
その少年は安心したようにほほえみ、そして意識を失った。
どうしてこんな状況になったかは誰もわからない。
なぜこうも森がなくなっていたのかも、ぐちゃぐちゃにつぶされたデーモンの死骸があるのも、それにどうして少年が生き残ったのかも。
「全ての真実は追々明かされていくでしょう、だが今はその真実に鍵をかけておきましょう。そして鍵を隠しておきましょう。これを見つけ出せる者たちはいったいどれだけ…いや必ずあの子たちなら見つけ出せるでしょうね…」