終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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狂いだす歯車

朝の衝撃の修羅場(?)から数十分後、俺たちストレンジ・ナイフのメンバーに呼び出しがくらった。

いつもの作戦会議とは違うということが呼び出しの音声からハッキリわかった。

いつもなら冷静な声で細かいことまで長々と話す上官も少し焦った様子で至急作戦室に来いという言葉だけを残すほどだった。

作戦会議室に集まったメンバーにはどこか緊張した空気が流れていた。

その空気がとても居心地の悪いものに感じた。

しかし俺にはこの空気以外にもう一つ居心地の悪さを感じるものがあった。

それはユキとウサギの存在。

昨日ユキに告られて今日ウサギに告られた。

それになぜかウサギは昨日のユキとのキスまで知っていた。

今俺を好いてくれている人物が二人同じ場所にいる。

そう思うだけで俺の胃はきりきりと痛むほどに緊張した。

「どうしたのお兄ちゃん?そんなに緊張した顔して?」

「あ、あぁ…その、なんでもない…心配させて悪かった…」

ユキは俺の答えを聞くと少しいぶかしげな表情を浮かべるもそうと言っていつ映るかわからないモニターに視線を向けた。

ここにメンバーが集まってもう十分を超える。

ちなみにケントは病室、マリナはその看病ということで欠席だ。

それでもそのモニターには何も映らない。

俺達はそのことに一抹の不安をおぼえていた。

 

「待たせて悪かったな、さてそれでは何から話そうか…」

突然の声にここにいたモノはびくりと肩を震わせて音の元を探る。

「あぁ、この音声はそこにあるスピーカーから再生しているものだ、訳あって今はモニターを使えないからな」

まるでこちらの様子が見えているかというほどにベストなタイミングで上官はそう言ってきた。

「突然の召集で君たちも困惑していることだろうがまぁ無理もない。私も今困惑気味だからな」

「ねぇ上官、そんなどうでもいいことはいいから早く本題に入ったら?」

苛立ちのこもった声でそう言ったのはウサギだった。

この状況でこんなことを言えるウサギはバカなのかそれとも肝が据わっているのか…。

「そうだな、では本題に入る。これから話すことは機密事項なので他言無用だ」

機密事項、そう聞いた途端その場にいたモノは全員顔つきを変える。

「廃工場の偵察・破壊任務についていたヨイザキ達の反応がロストした」

それを聞いた瞬間その場の全員の表情が凍りついた。

「あいつらが持っている携帯端末からの情報が途絶えた。相手からのジャミングという可能性も否定はできないが…」

携帯端末からは常に電波がクロノスの本部まで送信されておりそれで現在存在する位置や生体反応を察知できる。

ちなみに所有者の生命反応がなくなれば自然に電波も止まる仕組みだ。

なのでこの携帯端末は戦場での自分の存在証明となる。

この電波が途絶える=死を表すのだ。

「ウソだよね…ねぇウソって言ってよ…!」

そう最初に声を上げたのはキラだった。

「じゃあイツキの反応も消えたってことなの?イツキが消えたら私…」

そういってキラはその場に泣き崩れる。

生まれついたときからずっと一緒にいた片方が突然いなくなる、これほど悲しいことはないだろう。

「なぁ、それってヒカリやデンシも入るのか?」

「もちろんだ、あいつら全員に端末を持たせていた。だから…」

「くそっ…!」

俺は悔しさをぶつけるように地面に拳を打ち付ける。

「お兄ちゃん…」

ユキが心配そうに駆け寄ってくる。

「俺があの場についてればもっと違う結果があったはずなのに…」

「でもまだ生きてるって可能性はあるんでしょ?だったらそれに賭けようよ」

ユキは俺を慰めるように頭をなでる。

それによって気分が落ち着いた俺は上官に対してこう質問した。

「生存率は何パーセントぐらいだ?」

スピーカーからの声の主は一瞬押し黙った後にこう告げた。

「30パーセントぐらいだ…アイツら個々それぞれ反応がなくなっている時点で極めて生存が難しいが反応の消え方に少し気になることがある。それを解析していけばまだ生きている可能性も…」

「そうか…」

「ねぇこれだけじゃないんでしょ?まだ何かあるんだよね?」

今度はネムが声を上げる。

必死に涙を押し殺したような声で。

アイツも弟のヨウがいなくなったんだよな。

悲しみを必死にこらえるその姿に俺は自分の無力さを痛感した。

「あぁ、もう一つは…」

一瞬の空白の後スピーカーから発せられた声は極めて冷静なモノだった。

「黒の国が攻めてきた」

その前のことも衝撃的だったがこちらも相当なモノだ。

「今はオシリスの主力部隊が遠征に出て人手不足だ。なのでお前たちに出撃してもらう」

「ちょっと待てよ!なんで俺たちなんだ!俺はユラやナイトたちを探しに…!」

「これは命令だ!」

上官の今まで聞いたことのない色々な感情がごちゃまぜになったような声を聞き俺の頭はいったん落ち着いた。

この場にいる全員、それも上官含めすべてアイツらを助けたいと思っているがまずは国の防衛が大事だと割り切ったのだ。

「…で、敵の部隊の数は?」

俺は素っ気なくそう尋ねた。

その声の端から少しの怒りが漏れ出していた。

「偵察班から聞いたところざっと1万。その大軍を指揮するのはイリヤ・ドール。この前も現れた奴だ」

俺はその名をきいた瞬間唇を噛みしめた。

俺の妹を名乗る人物、俺の過去を知る人物。

また近いうちにと言っていたがこれは近すぎだろう。

「何かほかに質問はあるか?」

「ねぇ…これって強制参加なの?」

そう言ったのはキラだった。

その声は力なく表情からも絶望が漂っている。

「あぁこの場にいる全員が参加してもらう、出ないと戦力があまりにも足りない」

「おい、それってどういう意味だよ?」

上官のその言葉から不安をおぼえた俺はその言葉の真意を尋ねた。

「今オシリスで行動可能な戦力はクロノスの生徒と教員、あとはそれぞれの街から募る有志だけだ。明らかに戦力不足だ。さっきも言った通り主力部隊は遠征でいないんだ」

「つまりほとんど戦闘経験が浅い学生でやれってことかよ…さすがにそれは無理が…」

俺の言葉が最後まで発せられる寸前部屋のドアが思いっきり開かれた。

 

「おい、キョウヤ。お前がそんな弱気でどうする?俺たちだって結構やればできるんだぜ?お前はもっと仲間の実力を信じろよ」

その声はすごく聞きなれたモノだった。

かつての戦友、いや、今もそうか。そいつの声が俺の心を震わせる。

一度は戦場から離れることを決意した少年が今この場に戻ってきたのだ。

「ケント!お前…」

俺は扉の方を向き友の名を呼ぶ。

「おう、待たせたな!ケント様完全復活だぜ!」

「マリナちゃんもいるですよ!」

ケントの横からひょっこりと飛び出てきたマリナも自己主張。

「でもケント、お前右腕が…」

「は?右腕?んなの左を使えば何とかカバーできるさ。それにイリヤっていうガキにはちょっとばかり痛い目にあってもらわないと俺の気がおさまんねぇ。あのままずっとベッドに横たわってちゃそんなことができねぇからな」

ケントはにっとして笑うと俺たちの輪の中央に立つ。

「おいお前ら!俺たちには確かな力がある!一人一人は弱くたって仲間が集まれば強くなる力がだ。それに早くこの戦いを終わらせていなくなったアイツらの捜索もしないといけないだろ!」

俺はその口車にうまい事のせられたようだ。

一気に鼓動が早まるのを感じて気分は今までにない以上にハイだ。

「はは、けが人にそう言われちゃおしまいだな。よし、俺たちの力を見せつけてやろうぜ!」

俺は唇の端を釣り上げこう叫んだ。

全員の目に意思がこもっていくのが分かる。

それぞれ戦闘準備を始めるために勢いよく部屋を飛び出す。

そんな中キラはケントに近づき頭を下げた。

「ケント、アリガト。おかげでちょっと冷静になれた。イツキの分も頑張るから…!」

「ケント、何にやついてるですか!マリナちゃん以外の子でにやにやするなんて許さないです!」

そう言ってマリナはケントに噛みつく。

そこにはいつもと変わらないケントの姿があった。

俺はそれを横目で見ながら準備に取り掛かった。

 

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