「キョウヤぁ、まだなのぉ?私もう飽きちゃったんだけど」
そう言って俺にぐったりと寄り添ってくるのはウサギだ。
「気を引き締めろっての。いつ黒の軍勢が襲ってくるとも限らないんだしさ」
「えぇ~!でもぉ~」
俺達は今黒の軍勢と戦うために歩を進めている。
せめて来ている黒の軍勢を見つけて速攻でたたいて兵の数を減らす、それが今の俺たちに与えられた任務だ。
簡単に言えば捨て駒戦略なんだが。
俺達が適当に数を減らしている間に飢えの連中はゆっくりと準備を整えて俺たちのおこぼれを食らう。
(チッ…こんな作戦なんて上の連中は何考えてるんだよ…)
俺は心の中で舌打ちをした。
「ねぇキョウヤぁ。おんぶしてよぉ。私もう歩けない」
ウサギはついにへたり込んでダダをこね始める。
そんなウサギが本当の子供のように見えてしまい俺は苦笑するもウサギをオブるために一度しゃがみ込む。
「ったく…ほら、乗れよ」
「やったぁ!アリガト、キョウヤ!」
ウサギはぴょんと遠慮のかけらもなく俺の背に乗る。
少しふらっとするもすぐに体制を整え俺は立ち上がった。
「うわぁ、キョウヤたかぁい!いっつもこんな目線で世界を見てたんだぁ」
ウサギは本当にはしゃいだ子供のような声を上げてきょろきょろと視線を動かす。
本当にこいつが今朝告白してきた人物と同じなんて考えられなかった。
(ん…ちょっと待て俺…)
俺の頭が急速に回転し出す。
(いまの状況、相当ヤバいんじゃないか…?そ、それに背中にウサギのむ、胸が…)
「ん?どうしたのキョウヤ?顔赤いよ?」
「い、いや、大丈夫だ」
俺は必死に平静を装うも一度感じてしまった感覚をシャットアウトすることはできなかった。
大きな胸が背中に当たるたびにぽよぽよと動き心地よい感覚を俺に与えてくれる。
「ほんとかなぁ?ちょっとおでこ貸して」
ウサギはそう言うとぎゅっと背中を抱きしめ俺に近寄ったと思うとおもむろに片手を外して俺のおでこへともってくる。
その動作でさらに胸が押し付けられる。
むぎゅっと変形した胸の感触が俺の背中を侵食する。
「う~ん…ちょっと熱い…?キョウヤ、ほんとに大丈夫?」
「だ、大丈夫だって、ははは」
俺はかわいた笑みでそうごまかすしかできなかった。
後ろにある胸でドキドキしていましたなんて口が裂けても言えることじゃなかった。
「あ!お兄ちゃん、なにウサギおんぶしてるの!私もおんぶぅ!」
ウサギをおんぶしている俺を見て嫉妬したのだろう、ユキが俺に近寄ってくる。
「ねぇお兄ちゃん!おんぶしてって!」
ユキはぴょんぴょんとはねて俺にアピールしてくる。
「キョウヤぁ、ワタシまだおんぶされてたいなぁ…」
俺の中で盛大な葛藤が生まれる。
ユキもおんぶしてみたい、ユキの兄として妹をおんぶしたいという気持ち。
でもまだウサギのおっぱいを堪能していたいという邪(よこしま)な気持ちがぶつかりあう。
ユキをおんぶしてもそのつるぺったんな胸じゃウサギのボリュームにはかなわないし、逆にずっとウサギを抱えていれば俺の動悸がおかしくなるのは目に見えている。
(あぁもう!俺はどっちを選べばいいんだよぉ!)
「あ!キョウヤ、あれ!あれ見て!」
唐突にウサギが前方を指差して叫ぶ。
俺はどうせくだらないものだろうと思い適当にその方向をながし見る。
しかし俺の予想とは全く違うものが目に入ってきた。
ざっと見ても1000は超えるであろう軍勢がこちらに向けて歩いてきているものだった。
「お、お兄ちゃん…あれって…」
「あぁ、黒だ…黒が来たぞ!」
俺は後ろにいる奴らにも聞こえるように叫ぶ。
俺の声が聞こえた奴らは皆一様にそれぞれの得物を手にして気を引き締める。
「おい、ウサギ、そろそろ降りてくれ」
「ぶぅ!もっとキョウヤの背中感じたかったのになぁ」
ウサギは不機嫌そうに俺の背から飛び降りた。
そして愛用の銃を2丁懐から取り出して弾を込め始めた。
俺は後方を振り返る。
後方には戦闘準備ができた仲間たちが俺の合図を心待ちにしている。
今回の戦闘は少ないメンバーをさらに班分けという形で分断して超小規模な機動部隊で分散して闘うというものだった。
俺達は第1班、そしてすべての班の行動を仕切るリーダーの役割も果たしていた。
メンバーは俺、ユキ、ウサギ、キラ、ネムの5人だ。
ちなみにケントとマリナは第3班だ。
俺は全員に目配せをしてそして唇の端を釣り上げて腰に提げた剣を天高く掲げる。
「よし、お前ら!早くこいつらを倒してナイトたちを探しに行くぞ!」
『おぉ!』
そして俺たちは大軍勢に向けて立ち向かった。