俺は今寮のうす寒い廊下を歩いていた。
一部屋ごとに暖房が完備されているのに廊下には全くそれがないというのはどうなんだろうかと俺は毎回の如く不満に思った。
「俺を部屋に呼びつけるなんて…なんの用だろう、マリナ?」
そう、俺は今マリナの部屋へと御呼ばれされていたのだ。
(そういやマリナの部屋って初めて…)
「はッ!?まさかこれは…フラグか!」
俺は妄想に頭を膨らます。
「ご主人様、お帰りなさいです!ご主人様のためにマリナ、お部屋のお掃除がんばったのですよ!褒めてほしいのです!」
いつものメイド姿のまま目を輝かせて俺を求めてくるマリナ。
それで俺にギュッとしてきたり…
(いや、マリナにメイドは普通だよなぁ…何かもうちょっと違う気が…)
歩きながらうんうんとうなり俺はまた妄想を展開する。
部屋に入ればマリナが裸エプロンで
「お帰りです、旦那様!ごはんにするです、お風呂にするです?それとも…マ・リ・ナ?」
って感じで頬を赤らめながら出てきてくれたり!
(いや、待てよ…マリナにはもっと最適なシチュがあるはず…)
さらに俺は妄想を膨らます。
部屋に入った瞬間
「お帰り!ケントおにーちゃん!ねぇねぇケントおにーちゃん!マリナと遊ぶですぅ!マリナ、おにーちゃんがいなくてさびしかったんですよ!え?お風呂に入りたいですか?もぉしょうがないのです!マリナちゃんがおにーちゃんの背中ごしごししてあげるのです!」
って言ってお風呂に直行したり…
(あぁ!スゲェいい!…っとよだれが…)
俺は口の端から垂れるよだれをふき取りながらもまた妄想を膨らます。
「フフ、ケント、今からマリナちゃんが調教してやるのです!マリナなしでは生きていけない体にしてやるのです!ありがたいと思うのです!ほら!もっと痛めつけてやるからいい声でなくのですよ、この豚ケント!」
(あっ…やばい、これ!…妄想だけでもぅ抑えらんねぇ…!)
「さぁてマリナ、今行くからな!ちゃんと調教の準備して待ってろよ!」
俺はうきうきとしながら軽々とした足取りでマリナの部屋へと向かった。
「マリナ、入るぞぉ?」
俺はマリナの部屋の前までつくと一応ドアをノックした。
調教の準備が終わらずに入ってしまうとマリナが怒りそうだったからだ。
いや、怒ったマリナにもっと調教してもらう手も…
「う、うん…入ってくるのです!」
俺のそんな考えを遮るようにマリナの声が部屋の中から聞こえる。
俺は勢いよくドアを開けた。
「ま~りな~!」
と、そこには俺の予想をはるかに上回ってきたマリナの姿があった。
「どうです、ケント?可愛いですか?」
「あ、あぁ…やばい、これ…」
そこにはぺたんとお尻を地面につけているマリナの姿が。
そのマリナの背には大きな赤いカバン、頭には黄色い大きな帽子がかぶせられていた。
「やったです!これもナイトのおかげです!このらんどせるとがくせーぼーならケントはすっごく喜ぶってあたってたのです!」
マリナは嬉しそうにそう言う。
これはどうやらナイトの差し金らしい。
(ナイトさん…ナイスです!)
マリナの幼い体躯にあわない大きなランドセルは付けているだけで萌えを感じさせ黄色い帽子に覆われたふわふわの髪の毛が俺の心をむしばんでいく。
しかも服装もいつもと違うメイド服ではなく初等部の学生服ときた。
これはまさに神の組み合わせだ。
「な、なぁマリナ…その…写真…とっていいか?」
「いいのですよ!なんってたってケントへのプレゼントですから!」
「俺へのプレゼント…?」
「今日はクリスマスです。その…ケントに喜んでもらえるのって何かなって…それで、このかっこ・・・です…」
マリナは頬を赤らめながら途切れ途切れにそう言う。
その態度、容姿、ランドセル…その全てが俺の心をとらえて離さなかった。
「俺からも何か渡せたらよかったんだけど…クリスマスの事すっかり忘れてたよ…」
「いいのです!」
「え?」
マリナは満面の笑みを俺に向けてそう言った。
「マリナはケントがいてくれるだけで嬉しいのです!ケントと過ごす時間がマリナちゃんにとってのプレゼントです!…だから、今日は…マリナちゃんにいっぱいケントとの思い出…くださいです…」
俺は目頭が熱くなってくるのが分かった。
しかしそれをマリナに悟られるわけにはいかない。
俺はこぼれ出てくる涙を必死に抑えて顔に笑みを貼りつける。
「はは、ありがとな、マリナ…よし、じゃあいっぱい思いで作るか!」
「はいです!」
マリナのその笑顔は俺が今まで見たことのないほど輝いて見えた。
多分俺はその日のその笑顔を絶対に忘れることができないだろう。