終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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第14章「それぞれの戦い」
アイドル少女の葛藤 Nem's view


私は今廃屋の屋根の上でマイクを持ってたたずんでいる。

案外廃屋と言っても屋根は丈夫なようで私がのってもきしむ音一つ聞こえない。

しかし今の私はその無音がとても恐ろしく感じていた。

今から私はここから自分の異能「歌姫【ディーヴァ】」の大技を放つ。

私の音で相手を操るという何とも常識離れした大技。

しかしこの技にはとてつもない集中力、そして使用者に結構な負担がかかる。

失敗したらどうしよう、私にできるか…などという不安が頭の奥をかき回す。

頭の奥が不安で侵食され立っているのがやっとなほどの足の震えが私を襲う。

過去にも数回この能力を使ったことがあるのだがその時はこんなにも緊張しなかった。

(やっぱり私、ヨウがいないとだめかも…)

だいたい私がこれを使う時は必ず横に弟のヨウがいる。

ヨウは私の大事な弟でたった一人の家族だ。

あの子がいたから今の私がいる、ヨウがいなかったら私はとうの昔に壊れていたかもしれない。

 

もう何年前のことになるだろうか、母親が死んでから。

父親はヨウが生まれてちょっとしたらどこかに消えてしまった。

浮気か何かは私には知ることもなかったがとにかく大好きだった父が消えたことにより私たち家族の心にはぽっかりと穴が開いたようだった。

母もその数年後に病気で死んだ。

取り残された私は失意の中で生きていくことしかできなかった。

その時からだろうか、私の異能が覚醒したのが。

毎日のように私はヨウと買い物に出かけた。

私達の家から市場まではそう遠くない距離にあった。

しかし幼い私たちにとっては十分な道のりだった。

ヨウは毎回のように疲れたと駄々をこねた。

その度に私はヨウの手をぎゅっと握って歌を歌ってあげた。

そうするとヨウはぎゅっと唇を結んで涙をのみ込み歩き出す。

だから私はずっと歌った、たった一人の弟の為に。

ある日私がいつもと同じようにヨウの為に歌っていると今まで見向きもしなかった人たちがだんだんと私の周りに群がり始めた。

そして賛美の言葉が飛び交いお金や食べ物などをくれる人さえ出た。

私が歌うのをやめるとその人たちは悲しそうな目で私を見てきた。

幼い私はたくさんの人を悲しませたくないという思いからずっと歌い続けた。

私を取り巻くようにできた群衆の群れ、その中から一人の男が出てきて私の運命を大きく動かした。

その歌声は異能によるものだ、それを活かしてみないか?という様な事を私は言われた。

幼かった私はその言葉の意味がよく理解できていなかったがアイドルになれるという言葉を聞いた途端跳びあがりそうなほどうれしくなった。

アイドルは今も昔も女の子の憧れ、当時の私もその例外ではなかった。

しかし私の服の袖をぎゅっとつかむ弟の姿を見て思いとどまる。

アイドルになれば毎日が忙しい、絶対にヨウに迷惑をかけてしまう、寂しい思いをさせてしまう。

弟のため、私はその話を丁重にお断りした。

その数年後か、唐突にヨウがこう言ってきた。

「お姉ちゃんアイドルになりたいんでしょ?ずっと僕に気を使ってたんだよね…?僕、もう一人でも大丈夫だから、ね?」

今でもその言葉をおぼえている。

ヨウは私よりもしっかりしている、ちゃんと自立も出来る。

それはわかっているものの私はじゃあアイドルになるねとは言えなかった。

ヨウが心配だった、弟離れできないダメな姉貴の例だ。

「僕の心配してるの、お姉ちゃん?顔を見たらわかるよ、だってお姉ちゃんとずっといるんだから…じゃあ僕、お姉ちゃんのマネージャーさんになるよ。僕がずっと後ろでお姉ちゃんのこと見てるから、だから夢をあきらめないで?」

その言葉が胸に突き刺さった。

自然と涙が頬を伝う。

私はむせび泣く声でうんうんとうなづいたのだった。

それからというもの姉弟二人の二人三脚でのアイドル生活が始まった。

最初の方は大変で辛かったけどヨウが支えてくれたので乗り切れた。

そして時が流れてまぁいろいろあって今に至る。

 

「ヨウ…逢いたいよ…」

今ヨウは行方不明になっている。

ヨウの事を思い出し私は奥から溢れてくる感情に押しつぶされる。

こんな状態で歌うなんてできなかった。

「姉さん」

どこからかヨウの声が聞こえた気がした。

「頑張って、姉さん」

周りを見渡しても人は誰もいない、いるのは歪な人形の軍勢だ。

「姉さんなら僕がいなくても大丈夫だよ。だからほら…歌お?」

私の脳内が勝手に聴かせている言葉、幻聴、しかしそれはこんな簡単な言葉で片付けてはいけない。

これはヨウの想いだ、絶対に。

私は震える足に力を込めて立つ。

目を瞑り周りと一体となる。

風の音、砂の音、草の音、その全てが音を奏でて私の耳を刺激する。

心臓の音が大きくなりそれが周りの音と一体となりちょうどいいビートを築いていく。

私は大きく息を吸い込みカッと目を見開く。

「♪私の想いよ、届いて。大切な君の為に、このキモチ歌にのせて送るよ♪」

私の特別野外ライブ。

音を奏でる楽器たちは自然の音。

衣装はいつものようにかわいいものではなくシンプルなモノ。

歌を聴かせるのは人ではなく人形の群れ。

いつも横にいる少年はもういない。

「♪いつもありがとうって言いたくて、でも恥ずかしくて言えないの。君を前にするとなんだか照れくさくなっちゃって…君を思うと胸が苦しくなるの Why?なぜ?どうしてなの?どうかしちゃったのかな?♪」

しかし私はそれでも歌を紡ぐ。

歪な野外ステージで輝きを放つ。

「♪このキモチ、おかしいの。私を壊していくの。君を思うだけで壊れちゃう。I love youが言いたいの♪」

私とヨウが作った始まりの歌、私の大切な歌。

今の私とヨウを繋ぐ一本のライン。

自分の感情を全て爆発させてラストスパートをかける。

「♪You どうしてなの?私の想いを全てくみとって笑顔を向けてくれる。You 君といると安心するのはどうして?You いつまでもありがとう、大好きだよ!愛 Love YOU!♪」

歌が終わる。

ヨウと私、二人で作った歌が。

私は大きく肩で息をする。

心臓のバクバクがおさまらない。

(成功…したのかな…)

ドキドキしながら屋根の上から見渡す。

そこにはさっきまで縦横無尽に広がり自由勝手に動いていた人形たちが静止している様が見て取れた。

(これは…成功?)

私はためしに一つ命令を出してみる。

「その場に傅(かしず)け!」

すると一瞬にして私の目の前の人形たちは傅く。

(やった…!成功したよ、ヨウ!)

私は驚きと達成感で胸がいっぱいになった。

 




-マリナの異能講座-
「みんな~!マリナちゃんだよぉ!今回からマリナちゃんが異能について簡単に解説しちゃうよ!」
「幼女が必死に背伸び…デュフ」
「ケントぉ?何か言ったですぅ?」
「い、いえ!何も!…ほ、ほらマリナ様、尺も少ないですし進めて…」
「そうですね。バカケントに付き合ってる暇はないですね。じゃあ今回の異能はネムのディーヴァです!」
「ディーヴァ?どういう能力なんだ?」
「歌声を武器にする能力です!歌の力で仲間の強化をしたり、あいてにダメージをあたえたり…」
「あんまり本編じゃ触れられなかったけど…?」
「ほ、本編じゃ書かれてないですけどちゃんとこんな異能としての能力の説明は必要なのです!いちいちはむかうなです!ケントのくせに!」
「本編じゃ屋根の上で歌ってたけどあれはなんだったの?」
「もぅ…ケントはバカですねぇ…ショーがないです!教えてやるのです!あれはネムの大技、歌の力で相手を操る力です!」
「なんでそういうことができるの?」
「むぅ…そこはよくわかんないですけど…たぶん相手を魅了して操ってるんですよ!」
「そう言うもんなのか?」
「そういうモノなのですよ!で、これを使うには結構リスクが付きまとうのです。アカペラできかせるから音程を取るのが難しいのです、あとリズムもですけど」
「そりゃ難しそうだ」
「それに失敗すればきいた相手はどうなるかわからないのです。もしかしたら暴れまわったりも…」
「はぁ…そりゃヤバいな。でもネムはちゃんと成功させたんだろ?スゲェじゃん」
「なんてったってネムはトップアイドルなんですから!」
「マリナが威張るなよ…」
「うるさい!ケントのくせに生意気です!」
「あ、あぁマリナ様!もっと…もっといじめてくださぁい!」
「い、いじめるのは次の説明の時に持越しです!尺がないのです!」
「そ、そんなぁ…マリナ様ぁ…」

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