今にも死にそうな二人が、そこにいた。
一人は泣きじゃくりながら少年にしがみついている。
一人はその少女を護るようにして死を覚悟している。
その二人に引導を渡すのは一人の少女。
手に死神のような鎌を持っている。
俺はその鎌には見覚えがあった。
そいつは忘れもしない、俺の因縁の相手だ。
鎌をもった少女はそれを振りかざしている。
そこから振り下ろすまでの時間がやけにスローモーションに見えた。
振り下ろすときの少女の顔が少し悲痛気にゆがんでいたのは気のせいではないだろう。
キンッ
という鈍い金属音が放たれた。
鎌もちの少女は訳が分からないという顔をしていた。
抱き合った二人はいまだに状況を飲み込めないでいる。
俺はにやりと笑っていまだにバカ面を下げている3人に向かってこう言ってやった。
「主役夜舞ケントは遅れてやってくる、ってな」
今までの流れを軽く説明しよう。
俺はあの後意識を取り戻した。
目覚めるとそこにはマリナの泣き顔があった。
「もう!バカケント!心配させるなです!」
「ゴメンな…」
俺は左手で泣きじゃくる少女の頭を撫でた。
(そういえば…何か忘れている気が…)
夢の中で何かあったような、でも思い出せないような…
俺の中でいろいろなことが思い出されては消えていく。
一人の少女の顔が頭に浮かんだ。
俺はそいつのことを必死に思い出そうとする。
だが俺の記憶から抜け落ちていく少女をどうすることもできなかった。
「…ケント!何ぼーっとしてるです!」
「あ、ごめん」
記憶の整理をしていた間に数回ほどマリナは俺のことを呼んでくれていたらしい。
そこから今まで俺が寝ていた時に起きたことを聞かされた。
「へぇ…キョウヤ達が危ないってか…じゃあちょっと助けてくるか」
俺はそう言って立ち上がった。
「もちろん、マリナもついてきてくれるよな?」
「もちろんです!バカケントは目を離したらすぐむちゃするんですから!マリナちゃんがついておいてやるのです!」
俺はそういうと走り出した。
もう記憶の中の少女の姿は消えてなくなっていた。
しかし胸の奥の奥の方にそいつは生きているような気がした。
で、今に至る、と。
俺はイリヤの鎌を受け止めてそれを弾き飛ばす。
「あのときはお世話になったな…イリヤ!」
俺はイリヤを思いっきり睨みつけた。
これから始まる戦いの渦の中に潜る決心はついた。
その中でどんなことが起きても俺はもう決して逃げないだろう。
「…ったく、ケントのくせにかっこつけすぎ。ちょっとは俺の出番もよこせよ?」
「なんだ?嫉妬か、キョウヤ」
俺の横にはさっきまで少女、ウサギを抱きかかえていたキョウヤが立っていた。
「ウサギはいいのか?」
「あぁ、キラに任せておいた」
チラリと後方を見るとキラの腕の中すやすやと眠るウサギの姿があった。
こんな場所で寝れるウサギのバカさ加減に俺はあきれて苦笑した。
「もう!お兄ちゃんもケントも私を置いてかないでよね!」
「悪いなユキ…」
そう言ってユキも近づいてくる。
キョウヤ、マリナ、ユキ、俺含めて4人。
俺たちは全員一つの目標を睨む。
イリヤ、俺たちの標的は少したじろぐも楽しげに微笑んでいた。
「お兄様…それとその周りのおバカっぽい方々…」
「またおバカって言った!もう許さないから!」
「そうです!マリナちゃんはおバカじゃないです!ケントならともかく…訂正を要求するです!」
イリヤはそんな二人の言葉を無視するように一人で楽しげに声高らかにこういった。
「私のパーティーにようこそ・・・歓迎いたしますわ!」