ユキはキョウヤがいる病室の前で立っていた。
理由は簡単だ、まだ部屋に入るための心の準備が出来ていないからだ。
昨日はキョウヤを怒らせてしまった、傷ついたキョウヤを追い込んでしまった。
どういう顔で部屋に入っていいかわからないユキはかれこれ10分間部屋の前で突っ立っていたのだ。
「はぁ、悩んでいても仕方ない、覚悟を決めろユキ!」
そう言い自分を励ましドアに手をかけた。
その時急にドアが開き中から大柄な男が一人出てきたのである。
「あぁ、済まない。もう入っていいぞ」
その男はそう言いユキが部屋に入れるように扉を開けたままにした。
「あ、ありがとうございます、教官…」
そう、この男はクロノスの教官であった。確か担当は編入試験を担当していたはずである。
「お、ユキ。来てくれたのか、早く入ってこいよ」
奥からそう声がしたので覗いてみるとキョウヤが微笑みながら手招きをしていた。
それを見たユキは少し安心した。キョウヤが許してくれてないかもと思わなくなっただけでも安心である。
ユキは部屋に入りいつもの場所、ベッドの脇に腰かけた。
「ごめんな、さっきまで教官と話しててな。待っててくれてありがとな」
そう言い笑いかけるキョウヤ。
ユキはそれを聞き少し恥ずかしげにうつむいた。
キョウヤにそれを言われて恥ずかしいからうつむいたのではなく、教官が中にいることに気付かなかった自分を恥じてうつむいているのである。
「何恥ずかしがってるんだよ、いつものユキらしくないぞ?」
が、キョウヤはそのことに全く気付いていなかった。
「キョウヤのバカ…」
そううつむきながらつぶやくユキ。しかしその口元は笑っていた。
「そうだ、教官と何話してたの?別に言えないことなら無理に言わなくてもいいから」
ユキはその疑問をキョウヤにぶつけてみることにした。
「編入確定だってさ、明日からだとよ」
少し面倒くさそうに言ったつもりだったがその声からは明らかにうれしいという思いが漏れ出していた。
「クラスは決まってたの?教えてくれるとうれしいな」
「俺がクロノスに来てからのお楽しみ…って言いたいところなんだけど実際学校で会えるかどうかわからないから言っておくよ」
キョウヤはそこから真剣な表情に切り替えそう言った。
「特別クラスだってさ、確か別名は「ストレンジ・ナイフ」だったと思う。観察対象者っていうことでこのクラス行きだって言ってたが…っておい、聞いてるのか?」
キョウヤが話している間ユキは少し放心気味だったのである。
「あぁ、ごめんね。あまりの嬉しさに放心しちゃった」
そう言って舌を可愛く舌を出すユキ。
今の会話のどこに嬉しくなるんだとキョウヤは思ったが案外早くその答えが返ってきた。
「私も実は特別クラスなんだ!これからも一緒だね、キョウヤ!」
嬉しさのあまり早口になるユキ。
「あぁ、これからもよろしくな」
あらためて挨拶するキョウヤ、しかしその表情はどこか照れくささが残っていた。
「そういやクラスメイトってどんな奴らなんだ…?」
その疑問を口にした途端ユキは困ったようにこう言った。
「え~と…個性的な人たちだよ…」
その答えを聞き少し不安をおぼえたキョウヤだったがユキがいれば何とかなるだろうと思った。