俺は全速力でイリヤの下へと急ぐ。
だが相手の方が早いようでもうすぐそこまで迫っていた。
イリヤは動けずにその場で呆然と立ち尽くしている。
死神の鎌が構えられる。
「イリヤァ!」
俺の叫びは無惨にも空気を震わせるだけで何も変わっていなかった。
「凍れ!」
俺の叫びと同じぐらい大きな声が後ろから響く。
途端イリヤの目の前に大きな氷の壁が出現する。
この力…ユキか!
ユキの方を振り向くとニヤリとした笑みを浮かべていた。
してやったりという風だった。
氷の壁に鎌が突き立てられる。
その瞬間壁は崩壊したが飛び散った氷の破片はアインに襲いかかった。
こまごまとした氷の破片は鋭い凶器となりアインの身体に降りそそぐ。
小さな舌打ちを一つ洩らしてアインは後方に避けた。
「イリヤ、大丈夫か!?」
俺はその隙にイリヤを助けに入る。
「お、おに…キョウヤ…わたくしは大丈夫ですわ…」
「は?キョウヤ?」
俺の呼び方が突然キョウヤに変わっていた。
「バカですの?もしあいつにお兄様が生きているとわかれば殺されてしまうんですよ?あいつはお兄様が死んだものだと思ってますの、だから…」
そういう事か…。
俺はあっちの国では死んだ存在だ。
もし生きているとわかれば裏切り者として執拗に命を狙われるということだな。
それに関しては俺もゴメンだった。
俺の周りの人達にも迷惑がかかりそうだったからだ。
「あ~あ…そこの生意気なお嬢様だけを殺す予定だったけど…みんな殺しちゃうね?」
アインから尋常じゃない殺気を感じ取る。
ゾクゾクと背筋に寒気が走る。
足が自然とがくがくと笑っていた。
それだけアイツの威圧感はハンパないものだった。
「じゃあまずは…生意気お嬢様に似てるあんたからだ!」
それはユキをさす言葉だった。
ユキが、俺の大切な女の子が危ない。
俺は震える足にムチ打ってユキを助けに入る。
どこにそんな力があったのか、俺の脚は爆発的な動きを見せる。
ユキは手に氷の槍を顕現させようとしているがそれが完成するのとアインがユキに迫る速度、後者の方が早かった。
アインは持ち前の鎌を引き絞りユキに狙いを定める。
(だけどな…俺の方が早い!)
銀色の輝きを放ちながら鎌は振り下ろされる。
が、それはカキンという鈍い音に遮られた。
陽の光を反射させて輝く剣が鎌の切っ先に当たった音だ。
「俺の女に、手ぇあげてんじゃねぇよ」
どうやら俺は間に合ったようだ。
とっさに口をついたのはそんな言葉だった。
「へぇ…こいつはあんたの女か…なら仲良く死にな!」
鎌にさらに力がこめられる。
「お、お兄ちゃん!」
「ユキ…早く、その槍を…」
ユキは辛そうな俺を心配そうに見るもすぐにやりの顕現にいそしむ。
「お兄ちゃん、ねぇ…はは、これは愉快だな!生きてる間に近親愛者にあえるとはなぁ。フヒヒ、楽しい見世物じゃねぇか!」
さらに下卑た笑いを洩らすアインに俺は怒りを覚えた。
俺たちの愛を侮辱した罪は重いぞ。
「お兄ちゃん!できたよ!」
俺は内心でほくそ笑んだ。
さぁ、報復の時間だ。
俺は一瞬剣の力を抜いて横っ飛びでその場を離れる。
力強く俺を抑えつけていたアインはバランスを崩した。
その瞬間ユキの氷の槍がアインの身体をとらえる。
ずしゅりと生々しい音が響く。
槍の切っ先がアインの身体に刺さったのだ。
ぶしゅっぶしゅっと患部から血が噴き出す。
が、それもユキの槍の効果により氷づけにされていく。
真っ赤な氷が患部からこぼれ落ちていく。
それと同時、刺さった槍の周辺が凍りついていく。
アインは苦痛に満ちた表情を浮かべながらも自分の槍をユキに向かって振りぬいた。
だがその動作も途中で遮られる。
「アイギス…」
鎌の先端は絶対の防御陣を前になす術もなかった。
こいつの敗因は一人だったことだ。
俺達は仲間の力を信じた、それだけだ。
実はキラには一言もアイギスを使えだなんて言っていない。
しかしキラは、自分の力を信じ、仲間を守るためにそれを使った。
アインは苦しげなうめき声をあげながら氷像とかしていく。
真っ赤な瞳はこの世のすべてを恨むように怪しく輝いていた。
が、その瞳もすぐに氷の中に埋まってしまう。
「チェックメイトだ…」
そしてアインは物言わぬ氷像と成り果てた。
「マリナの異能解説コーナー!イエェ~」
「イエェ~」
「って、ユキ!?マリナどうやって連れてきたんだよ?」
「ネムに頼んだのです。ネムの歌でコントロールなのですよ!」
「お、おう…そうか…で、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ、ねぇユキ?」
「ウン、ダイジョウブ。オニーチャンダイシュキー」
「スゲェ片言じゃん!これ大丈夫なの!?」
「ま、マリナが言うから大丈夫なのです!」
「そ、そうか…」
「じゃあ今日はユキが来てるからきっちり前回の分まで解説しちゃうのです!」
「そうだよなぁ…前回グダグダだったもんな」
「さて、ユキの異能は知っての通り氷を操る能力なのです!」
「コオリダヨー」
「氷の盾で守ったりそれをわざと壊して破片で攻撃したりと様々なのです!」
「ソウダヨーコオリデミンナマモルヨー」
「なんか相槌ウザいな…」
「そして真髄は氷の槍なのです!ユキ!」
「ジャジャーン!」
「はい、ここに用意してもらったのはその槍!じゃあケントに向かって突き刺しちゃうのです!」
「エ~イ」
「い、痛い痛い!マリナやめさせろよ!」
「これは実演なのです!だからちょっと痛くても我慢するのです!」
「いやだよ、マリナがやれよ」
「マリナちゃん痛いのも寒いのも嫌なのです!」
「あのなぁ…って寒いの?」
「いいところに気付いたのです、ケント。この槍に触れたモノはみ~んな凍っちゃうのです!」
「コオッチャウノデス~」
「え!?ちょっと早く話せよ…ってホントに凍ってきてるし!」
「この氷はなんと魔法でできた盾、アイギスにも通用するのです!ケントのしょっぼい体なんてすぐに氷漬けなのですよ」
「じゃあ何で俺で試した!?」
「う~ん…テヘ☆」
「か、可愛い…って違くて!あぁもうこんなに凍って…!」
「はいはい、わかったからちょっと黙ってるのです。もうすぐエンディングですよ?」
「え?もう終わり?って俺このまま氷漬けに!」
「じゃあマリナちゃんの異能コーナーしゅーりょー!次もマリナちゃんの活躍を見てるのですよ!」
「ミテネ~!」
「ちょ、ちょっと俺はぁぁぁ…」