本編の内容とは一切関係ないですのであしからず…
Happy Birthday to
「ったく…ユキの奴急に呼び出してなんだよ…」
少し前急に俺の妹、ユキが部屋に来てくれるようにと頼んできた。
普段も何かと呼ばれることがあるので言っているのだが…。
妹の頼みならどこか断れないというのが俺の心情だ。
今も文句を言いながらユキの部屋へと向かっていた。
「ユキ、来たぞ」
ドアをノックして応答を待つ。
「お、お兄ちゃん!?まだ早いよ…ちょっと待ってて!」
いつもなら俺が来たとわかるや否や満面の笑みで出迎えてくれるのに…。
しかも中からドタドタと騒がしい音が聞こえるし…。
俺はそれを少し不安に思った。
何か悪だくみをしていなければいいが…。
「あ、いいよお兄ちゃん!入ってきて」
数分待った後に部屋からユキの声がかかる。
ドアノブを握る手に自然と力がこもる。
俺は意を決して勢いよくドアを開いた。
その瞬間
『ハッピーバースデー!』
何重もの声が重なって聞こえる。
そしてその後にクラッカーの乾いた音がいくつも響いた。
それに俺は目をぱちくりさせるしかなかった。
「え、え~と…?」
俺はうろたえながらもそこにいる人たちに目を向けた。
ユキはもちろんそのルームメイトウサギにケント、マリナ、イツキにキラが集まっていた。
何が何だかわからずに俺は頭に疑問符を浮かべる。
「ん?何バカな顔してるです?もしかして自分の誕生日を忘れちゃってるです?」
自分の誕生日?
今日がか?
記憶のない俺にはそんなもの失われてしまっていた。
「も、もしかして本当です!?」
「あ、あぁ…ゴメン…」
「お兄ちゃんの誕生日は今日4月3日何だから!覚えておいてよ!?」
なんだかいたたまれない気持ちだ。
みんなが祝ってくれてるのに俺は覚えてないなんて…。
しかし胸の奥底からジーンと湧き出てくる感情がある。
記憶はないがこころは覚えていたという事だろうか。
「その…ありがとな、お前ら」
自然と目頭が熱くなってくるのが分かった。
「お、キョウヤ泣いてるのか?いいぞ、俺の胸で泣いても…おぶふっ!?」
バカなことを言っていたケントに俺は鳩尾に拳を突き入れる。
その場に倒れ込み腹を抑えてうめくケントに周りのみんなは愛想笑いしか浮かべられなかった。
いや、一人だけ例外のやつもいるが…。
「ざまぁみろなのです!ほら、クソ虫ケント!もっとマリナちゃんがいじめてやるのです!」
「あ!い、痛い!もっと!もっとしてくだしゃいぃぃ!」
え~と…お楽しみ中の奴らは置いておくとして…。
「ほんとありがとな。俺なんかのために…」
「もぅ…お兄ちゃん!主賓が泣いてちゃダメでしょ!」
そうだな…まだ泣くのは早いか…
俺は目元をぬぐい滴を飛ばす。
キラキラとしたしずくが手の甲についたが気にしないでおいた。
「はいセンパイ!プレゼントです!」
「私たち姉妹からね!センパイがどういうのが欲しいかわかんなかったけど…」
イツキキラは仲良く一つのプレゼントの箱を二人で持ち俺に手渡してくる。
少し大きめのそれを受け取りその場で封を開けた。
「これは…」
「どうかな?実用性マックスでしょ?」
「センパイが使ってくれるとうれしいです…」
キラは自信満々に、イツキは控えめに反応を示してくれる。
しかしこれを貰っても…。
「何貰ったの?私にも見せてよ!」
ウサギが小さな体をぴょんぴょんとはね上げながら箱の中身を覗いてくる。
しかし箱の中身を見たウサギは一瞬怪訝そうな顔を浮かべる。
「ちょっと…ノートの詰め合わせって…私なら願い下げだけどなぁ…」
失礼なことをいうウサギをたしなめる。
まぁノートの詰め合わせは実用性高いけど…
確かにおバカなウサギには無用の代物か。
「いや、俺は嬉しいよ。ちゃんと使わせてもらうよ、ありがとな」
俺が礼を言うと二人は嬉しそうにはにかんでくれた。
それは見ているだけでこっちまで嬉しくなりそうな満面の笑みだった。
「お兄ちゃん、そろそろ奥に入ってパーティーしよっか!」
「え~!?ウサギはまだプレゼント渡してないよ!?」
「玄関で渡さなくてもいいでしょ?ほら皆行った行った」
ユキは全員を奥の方へと押し込んでいく。
「ケント!いつまで倒れてるです!早くいくですよ!」
一人不憫な奴もいるが…気にしないでおこう。
俺はチラリと奥を覗く。
そこには盛大な飾り付けがされておりテーブルの上にも大量のごちそうが。
ほんと俺のために…。
「お兄ちゃんも奥に行ってね」
「おう」
俺は靴を脱ぎ捨てて廊下を歩く。
「あ、ちょっと待って!」
不意にユキが俺のことを引きとめてくる。
俺はその場で足を止めてふりむいた。
するとユキはトテトテと小走りでこちらへと近寄ってくる。
「お誕生日おめでとうお兄ちゃん!」
赤みがかった頬に嬉しそうな瞳が俺の目前まで迫る。
そして俺たちの距離はゼロになった。
唇に唇が当たる。
一瞬の事だったが俺の中では数分の事に感じた。
「これはお兄ちゃんの恋人としてのプレゼントなんだからね…妹としてのプレゼントはもうちょっとだけお預け…」
「ユキ…」
少し視線を逸らしてそういうユキに俺は嬉しさを隠し切れなかった。
多分これは最高の誕生日プレゼントだろう。
「ほらお兄ちゃん!ボーっとしないの!早くいこ!」
まるで照れ隠しのようにユキはそう急かした。
俺は唇に残るわずかな柔らかさを感じながらこの日、誕生日を満喫したのだった。