さて…時間が経過して現在は放課後。
朝にケントと約束をしたので早速彼に話しかけることに。
しかしケントの方から俺に話しかけてきてくれた。
相変わらずケントってこういう事だけは早いよなぁ…と内心で感心する。
「じゃあ行こうか」
「いや、行くってどこにだよ…」
「いいからいいから…ついてこいって」
俺は得体のしれない不安を胸に抱えながらもケントに連れられていく。
そこから数分後。
ケントが突然に足を止めた、どうやら目的地のようだ。
「ここって…」
いかにも厳粛で神聖な場所。
ケントが足を運んだ場所、そこは学園の敷地内にある墓地だった。
この学園で出た戦死者のために作られた場所だ。
俺も少なからず足を運んだことがある場所だ。
しかし…ケントがここに何の用があるのだろうか…?
「お前はさ…知ってるか?」
「知ってるって何を?」
「…俺とお前が編入試験の時にあった女の子のこと」
それって…ナミの事だろうか…?
確かケントはその時の記憶がなくなっているはずなんだけど…
「この前の戦いの時に夢を見た気がするんだ…その夢の中でどこかであったことがある女の子がいたんだよ、その子が助けてくれた…だから俺はその子にお礼がしたいんだ…」
夢、ということはイリヤにやられたあの時の事だろう。
あの後のケントはどこかいつもと違った様子だったから何かあったのは明白だった。
「とにかくさ…俺はその子にちゃんと言っておかないといけないことがある気がして…」
今までとはまた違ったケントの様子に俺は驚いた。
飄々(ひょうひょう)としている奴だと思ってたけどしっかりと芯が通っている奴なんだなと改めて思った。
「わかったよ、こっちだ」
そうしてオレはその場所に案内した。
「この子が…俺を助けてくれた子…?」
太陽の下、きらきらとその光を反射している一つの墓の前、俺達はそこにたたずんでいた。
「ナミ…って言うのか…」
ケントは墓石に刻まれた名前を指でなぞっていく。
自然と彼の目からは涙が流れていた。
涙は頬を伝い陽の光を浴びてキラキラと輝く。
そしてぽつぽつとそれは地面に落ちて小さなシミを作っていく。
俺はそんな友人の姿に言葉を発することができなかった。
「…ゴメンな…ゴメンな…」
墓の前に膝をついてケントは涙交じりの声でそう繰り返していた。
ケントの泣き声だけが静寂な墓地に響く。
友を守れなかった少年の嘆きが墓地に刻み込まれていく。
俺の瞳からも涙が一筋流れ落ちた。
その時一陣のそよ風が俺たちの間を駆け抜けていく。
涙が風で飛ばされていく。
それはまるで死者の魂が頬を伝うそれをふき取ってくれたようだった。
ごとり、と重たい音が俺たちの耳に入った。
見るとナミの墓地に立てかけていた彼女のハンマーが倒れていた。
どうやらその音だったようだ。
墓の隣には必ずその人が愛用していた武器を備える。
それがこの墓地のルールだった。
使者をたたえるためだとか使者があの世でも寂しくないようにだとか色々な理由を聞くがどれが定かかは知る人はいなかった。
それはナミの墓でも例外が無い事でして…
さっきの風で倒れてしまった彼女のハンマー。
「それ…」
ふと、俺たちの後ろでか細い声がした。
振り向くとそこには女の子が両手に花を抱えて立っていた。
年は15,6歳ぐらい、身長は高めだ。
そんなことより俺の目を惹いたのは彼女の身体に纏われた真っ黒なローブ。
まるで魔女の様だった。
そしてもう一つ、彼女の顔だ。
少し幸薄そうでどこか虚ろな瞳。
それにきれいな真っ黒の長髪。
そしてどこか見覚えのある顔だった。
「あなたたち…何者…?」
それに喋り方も少し独特だった。
独特のペースでしゃべる彼女の言葉には魅力的な何かがあった。
「そこ…ボクの…」
「え?」
ボクっ娘!?
いや、そんなことより…彼女はナミの墓を指差した。
「ボクの…お姉ちゃんの…あなたたち…誰…?」
お姉ちゃん!?
そうか…どこか見覚えがある顔だと思ったらナミの妹だったのか。
納得である。
ナミはショートカットだったが…そうだな、髪を切ってもうちょっと元気よさそうにしたらそっくりだと思う。
「…誰…!」
と、俺が勝手に分析している間に彼女のガマンがピークに達したのだろう。
そりゃ自分の姉の墓の前に知らない男が二人いればいい気はしないだろうな。
俺は早速名乗ることに。
「オレは鏡夜、アケボシキョウヤだ…で、こっちはケント、夜舞ケント」
さっきからずっと放心していたケントのかわりに彼の自己紹介も済ます。
「ふぅん…で、何者…?」
「俺達は…そのぉ…お前のお姉さん、ナミと一緒に編入試験を受けたモノだ」
「!?」
その瞬間彼女の幸薄そうな表情が驚きに染まる。
「あなたたち…ボクの…!ボクの…お姉ちゃん…!」
今度口を開いた彼女は明らかに声に怒気を含んでいた。
その時ケントが動いた。
そして彼女の前に膝をつくとまた泣き出した。
「ゴメン…俺が…俺が殺した…俺が殺したんだ…!」
まるで子供のように泣きじゃくるケントに彼女の方がたじろいだ。
感情の捌け口を見つけたケントはもう止まらなかった。
今までたまっていたモノをすべて彼女にぶつける。
彼女の面影にナミを感じながら…。
そして泣き喚くこと数分。
ようやくケントも落ち着いてきたので話を進めることに。
「…それで俺たちは墓参りってわけだ」
一連の事を離し終えると彼女は納得したようにうなずいてくれた。
「ん…悪い人…違うんだね…それでも…ボク…許さないから…」
しかし納得してくれてもまだ許してはくれないようだ。
それはそうだろうな…。
「でも…ありがと…お姉ちゃん…思ってくれて…お姉ちゃん…きっと喜んでる…」
彼女の顔に微笑みの花が咲いた。
しかし元から焼きついた幸薄そうな顔だと判別はつきにくいが…。
だが確実に俺は彼女が喜び微笑んでいるのが分かった。
なんせその顔がもういない姉の顔と重なったからである。
「そうだ…それ…お姉ちゃんの…あげる…ボク…使えないから…」
彼女は倒れていたハンマーを手に取りケントに渡した。
「きっと…ヤマイ君に…持ってもらいたいって…お姉ちゃん…思ってる…だから…」
ケントは力強くそれを受け取る。
その拳には確かに意思の力を感じた。
「ありがとな…えっと…名前、聞いてなかったな」
「そう言えば…ボク…遥(はるか)…常闇遥(とこやみ はるか)…」
「そうか…ありがとな、ハルカ」
「お礼…お姉ちゃんに…」
「そうだな…」
そしてケントはもう一度墓前に向き直った。
「ありがとな…ナミ…」
そして今までで一番の感謝をして俺たちはその場を後にした。
背後にはそよ風が嬉しそうに吹いていたのだった。
「マリナの解説コーナー!」
「またか…で、今日は何を解説してくれるんだマリナ?」
「今日は…オシリスの墓地について、です!」
「墓地かぁ…あんまり気がのらないなぁ…」
「気がのらなくてもやるのです!読んでくれてるみんなは期待して待ってるですよ?」
「じゃあ解説お願い」
「むぅ…なんか今日のケントは少し鬱陶しいのです。なんです?いじめてほしいです?」
「いや、そういうわけじゃ…(ドキドキ)」
「そういう割にはすっごくドキドキしてるです…やっぱりケントの変態は変わらないです。けど今日は我慢するです、ここはお墓なんだから節度もつです」
「はい…」
「じゃあ解説を始めるです!」
「おう!」
「まずオシリスのお墓の立地場所です。基本お墓は学校の敷地にしかないです」
「へぇ、何で?」
「それはオシリスの死者の約6割がたが学生だからです」
「え!?そんなに!?」
「はいです。戦争に駆り出されて真っ先に死ぬのも学生…それを考えるとまぁ当然のことです」
「当然・・・なのか…」
「で、学生以外の死者は卒業した学園の墓地に入るか、もしくは首都の地下に備えられてる共同墓地に入るかのどちらかなのです!」
「へぇ…じゃあ学園を卒業していない奴はみんな共同墓地ってことになるのか」
「そうです、ケントの癖に鋭いです」
「まぁそれぐらいなら…」
「次の特徴です!お墓には必ず死者が使用した武器を備えることです!」
「そういや…ナミの墓にもハンマーが供えられてたな…何でだ?」
「それは諸説あるから詳しくは不明です!」
「不明って…じゃあどんな説があるんだ?」
「う~ん…死者に敬意を払ってだったり、武器に意思が宿っていてそれを弔うためだったり…あとはグー〇ルで調べるのです!」
「グー〇ルって…」
「もしくはヤ〇ーでグ〇るのです!」
「使い方おかしくね!?」
「まぁそんなことはどうでもいいです…さぁケント、一緒に入るお墓を選ぶです!」
「え!?い、今から墓選ぶの!?」
「そうです!だってマリナ達…墓友、です?」
「い、いや…それもいろいろアウトだろ…墓友って…」
「えぇ…ケント、マリナと墓友になってくれないです…?」
「あぁもう!そんなうるんだ瞳で見つめんなよ!」
「いいじゃないです!だってマリナ達…墓友、です?」
「だーかーらー!墓友じゃなぁい!」
「じゃあなんです?」
「え、えっと…そのぉ…ほら、あれだよ…あれ?」
「ムフフ…ケントってばシャイです。素直にマリナちゃんと恋人同士だっていえばいいです」
「は、恥ずかしいだろ…」
「もう…ケントってば…そんなところもマリナちゃんは好きです…///」
「あ、あぁ!ほら!もう尺がないから締めるぞ!」
「え!?ちょ、ちょっと待つです!」
「ではまた次回~」
「ま、まだマリナちゃんの恋人宣言は終って…」