終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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第21章「ラーメンとギョーザと一時の至福」
幸薄の微笑


「へぇ…お二人とも…同じ学校なんだ…」

「そうそう、んで同じクラスでもあるんだよ!なぁキョウヤ?」

「お、おう…」

あの墓前の落ち込み様が嘘みたいなテンションのケントに俺は少し引き気味だ。

こっちの方がケントらしいと言えばそうなんだけど…でもなぁ…。

「それでさ、この後どうする?もう用事も終わったしぱぁっと遊びにいかね?もちろんハルカちゃんも!」

俺達はあの後ともに歩いていたがどこかに行く予定もなかったのである。

そのケントの言葉をきいたハルカは困り顔を浮かべる。

「あの…ボク…約束…」

か細くそうつぶやいたがケントには届かなかったようで…。

「よし!お前らついてこい!俺おススメの店に連れていってやるぜ!」

「え?…ちょっと…ボク…いくなんて…!」

しかしその声もいつも以上に元気なケントには届いていなかった。

 

さてはて…俺たちはケントに連れてこられた場所は学校近くにある一軒のお店だった。

最初の方は抵抗していたハルカだったがもう無駄だと判断したのだろう。

彼女はおとなしく俺たちについてきていた。

(って俺が何とか逃がしてやればよかったのか?)

今思えばそういうチャンスがないわけではなかった。

むしろいっぱいあった。

だがそうしなかった。

俺はこの少女に興味を抱いてしまっているのだろうな…。

もっと彼女のことを知りたいと思ってしまっている。

「アケボシ君…どうしたの…?ヤマイ君…お店…入っちゃったよ…?」

「あ、あぁゴメン、ちょっと考えごとしてたわ」

どうやら俺がいろんなことを考えているうちにケントは店内へ入っていってしまったらしい。

ハルカは店の入り口で心配そうにこちらを眺めていた。

俺はそんなハルカを安心させるように微笑みながら一緒に店内へと足を踏み入れた。

そこはいかにも老舗の料理店みたいな風貌だった。

それに店内にはいい香りが漂っている。

とてもおなかがすく匂いである。

「ふわぁ…おいしそうな匂い…おなか…空いてきちゃいそう…」

ハルカもそう感じたようで嬉しそうに目を細めていた。

さっきからずっと幸薄な顔をしていたので妙に新鮮にそして可愛らしく感じた。

「ほらお前ら、こっちこっち!」

と、店の奥からケントがこちらに手を振っていた。

俺達はそちらに歩み寄り席へと座る。

年期の入ったイスがぎぎぃと軋んだ音をたてた。

「大将!いつもの3つね!」

と、ケントはどうやら店の主人らしき厳(いか)つい男にそう声をかけていた。

威勢のいい掛け声とともに何かを火にかける音が聞こえ

てきた。

「じゃあ料理ができるまでちょっと話そうか」

「う、うん…」

しかしいきなり話そうと言われても何を話せばいいかわからない訳で…。

しばし沈黙の間が続いた。

「あ、あの…」

が、その沈黙を打ち破ったのは意外にもハルカだった。

「その…きいていいかどうかわからないけど…ヤマイ君…何で服…袖とおしてないの…?」

ハルカはどうやらケントの片腕が気になるようだ。

普段ケントはジャケットを羽織っているしファッションか何かで片袖をとおしていないと思っているのだろう。

「あぁ、これか?これはな袖を通してないっていうより袖を通すものがないんだ」

そう言ってケントはプランと右の袖をつかみあげてみせた。

どうやらそれで彼女は把握したようだ。

なんともばつの悪そうな顔でゴメンと呟いていた。

「別に気にしてないよ、そんなこと。よく訊かれるし。別にこれで不便と思ったこともないし…それに名誉の負傷ってなんかカッコいいだろ?」

カッコいいかどうかはともかくとして…。

こいつがこの腕のせいで不便を感じているという場面は見たことが無かった。

元々力があったので重いものを運ぶのも片手でいけたし剣の腕だって左だけで結構極めている。

むしろ左にしたことでテクニックが上がったような気さえする。

この後適当な話を交えながら数分…

厨房から大将が顔を出した。

「はいよ、いつもの3つ!」

そうしてドンと俺たちの前におかれたものはラーメンだった。

おいしそうなにおいが湯気にのって俺の鼻をくすぐる。

しょうゆベースのいい香りだ。

「ここのラーメンおいしいんだよねぇ。ほらみろよこのスープ!すっごい透き通ってるだろ?こんなにきれいなスープ作れんのってここだけじゃないかな」

確かに…スープの透明度が半端ない。

しょうゆベースでここまで透き通るモノなのか。

ごくりと喉が鳴る。

俺は端を手に取って戦闘態勢に入る。

敵はラーメン、目標は完食だ!

「いただきm…」

いただきますと言おうとした瞬間PiPiPiと電子音が鳴り響いた。

それも俺のポケットの中で。

今から食おうと思っていたのに…。

俺はうんざりしながらもポケットから鳴り響いていた携帯端末を取り出す。

どうやら着信だったようで俺はそれに出た。

「もしもし、お兄様ですの?」

「あぁ、イリヤか。どした?」

「大したことではないんですけど…人を探しているんですの」

「へぇ…人を…俺の知ってる人か?」

「いや、知らないと思いますの…でもその人特徴的だから一目見たらわかると思いますの」

「それで?どんな特徴が?」

「え~と…身長はわたくしよりちょっと高いぐらいですの、それでちょっと幸薄そうな顔ですの。一番の特徴は真っ黒なローブを着ているんですの。お兄様は見ていませんの?」

おいおい、それって…。

「これは言っても無駄かもしれませんけど…ハルカって名前ですの」

ビンゴだ!

イリヤが探しているのはこの少女だった。

それにハルカはさっき約束があるって言ってたけど…イリヤとだったのか。

「あぁ、それなら…」

俺はハルカがここにいることと今までの経緯を一通り話し終えた。

「わかりましたの、それじゃあ今からそっちに向かいますの!」

そう言って通話は終った。

「なんだったんだ?」

「え、え~と…イリヤがこっちに来るらしい」

 

 

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