終焉ペレストロイカ   作:如月ライト

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案外優しい娘

「はぁ…今日は結構食ってしまった…」

俺はベッドの上で腹を抱えて横たわっていた。

あの後寮に帰ると妹のユキが待ち構えていて晩御飯を一緒に食べに行くことになったのだが…。

ユキは加減を知らずバカみたいに頼むので後処理が大変だった。

今の俺はもう食べ物すら見れない状況に陥っていた。

そんな中…。

「おい、キョウヤいるか!?」

そんな声とともに勢いよくドアがノックされた。

この声は…ケントか?

しかしやけに機嫌がよさそうだな…。

その声は今すぐにでもスキップをしだしそうな勢いのそれだった。

俺は重たい腹を抱えながらドアを開ける。

「キョウヤ!なぁみてくれよ、俺を!」

そう言ってケントはくるんと一回転する。

男がそうしてもキモいだけなんだけど…。

湧き上がってくる吐き気をどうにかこらえて俺は口を開いた。

「ファッションショーがしたいなら帰ってくれ…今そんな気分じゃないから…」

「いやいやいや!もっとよくみろって!ほら、な!?」

「生憎俺は男を見て喜ぶ趣味はない…お前は男に見られて喜ぶ趣味があったのか?」

「いや!ねぇから!だ~か~ら~!ほら!これこれ!」

ケントはバッと勢いよく俺の目の前に腕を突き出してきた。

そしてそれを横に振ったり縦に動かしたりとを繰り返した。

「ワカンネぇの!?ほら、もっとよくみて!」

俺はしぶしぶケントの動き回る右腕を見た。

…ん?動き回る…右腕?

いや、確かケントの右腕はふっとんだはずだが…?

「ふっふっふ…分かったようだね」

「あぁ…俺が夢落ちしてるってことがな」

「いや!これ現実!」

「だってケントの腕があるわけねぇじゃん…」

「イリヤが治してくれたんだよ!」

「…イリヤが?」

いや、でもどうやってだ?

アイツの専門は人形を扱うことだが…。

治癒系は専門ではなさそうなんだが…。

「あいつ人間そっくりのマネキン作ってさ、その腕を俺にくっつけたんだよ。そしたら何と…完全に俺の腕になったんだよ!」

要するにマネキンの腕にケントの神経を結びつけたってことだろうか?

だがそんなこと可能なのか…?

「いやぁ…ほんとアイツいい娘だよ、この前はゴメンねって言いながら治してくれたんだから」

イリヤがそんなことを…。

少し怪しいがイリヤの善意を疑うわけにはいかないな。

「よかったじゃねぇか」

「だろ?やっぱりキョウヤはそう言ってくれると思ってたよ、俺が初めてみせた相手だからなぁ…キモいとか言われたらどうしようかと…」

「初めて…?」

「う、うん…」

「いや、お前…初めに見せるなら俺以外に適任のやつがいるだろ?」

そう、ケントを一番心配しているアイツが…。

「え?思い浮かばねぇんだけど?」

「お前なぁ…俺より絶対お前の腕のことを心配してたやつが一人いたよな?」

それでも頭に疑問符を浮かべるケント。

こいつのバカさ加減というか鈍感さにはあきれるばかりである。

「はぁ…マリナだよ、マリナ!あいつにいちばんにみせに行くべきだったと思わないか?」

ケントははっとした表情を浮かべた。

どうやらやっとわかったようだ。

すると一瞬であたふたし出した。

「あぁ…ドアがノックされたけど誰もいないやー、よし、寝よう」

「え?キョウヤ?」

「誰かに名前を呼ばれた気がするけど気のせいだよねー」

我ながら白々しい。

だが今まで支えてくれた親友への恩返しができるなら…。

「ありがと…キョウヤ…」

俺の意図を察してくれたのかケントはさっと俺の部屋を後にした。

「頑張れよ…ケント…」

俺はポツリ、去りゆく友の背中にそうつぶやいた…。

 




「マリナの解説コーナー!」
「お!今日はマリナやる気だな」
「当たり前です!ケントの腕が治ったからです!」
「あぁ、そういう事か」
「マリナちゃんずっと心配してたんです!でもよかったです~…これでいっぱいマリナちゃんのことをぎゅっとしてもらえるです!」
「ははは、今すぐにでもぎゅっとしてやろうか?」
「え?いいのです!?」
「そこ!イチャイチャするなですの!」
「うわ…!ビックリした…なんだ…イリヤか…」
「なんだとはなんですの!?私が出てきてあげたのですのよ?もっと喜びなさい?」
「いや…喜べって言われても…」
「イリヤ!今日はその腕をどうやってなおしたのかを解説するです!そのバカケントはほっといて早く解説するです!」
「そうですわね…では…わたくしの作ったその腕は性能の高いマネキンですの!」
「マネキンなのはわかってるです!」
「もともとわたくしの人形には神経を入れることによって動かすことができますの!その原理を応用してマネキンに神経をとおしてそれをケントの腕に残っていた神経と繋ぎ合わせたのですわ!」
「あぁ…それでケントの意思で動かすことができるのですね」
「そうですの!それにこのマネキンは人間の人体そっくりの素材でできてますので触っただけではそれがニセモノかどうかなんてわかりませんのよ」
「もちろんその素材は企業秘密です?」
「わかってるじゃないの!マリナって鋭いですのね」
「もちろんです!マリナちゃんは賢いんです!」
「マリナが賢いねぇ…」
「何か文句あるです、ケント?」
「い、いえ!何も…!」
「むぅ…その顔は絶対文句がある顔です!イリヤ!一緒にケントをやってやるです!」
「オッケーですの!わたくしもうっぷんがたまってたのですわ…いいストレス解消ですの…」
「え、え~と…?」
「ケント!覚悟です!」
「覚悟ですのよ!」
「やっぱりそうなるのかよー!」
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