編入生
「どんな人たちがくるのかなぁ…楽しみだねお兄ちゃん!」
「あぁ、そうだな」
翌日の朝、俺はそんな話をしながら妹と一緒に登校していた。
朝の陽ざしが辺りに照りつけてキラキラと輝きを放っていた。
とてもすがすがしい朝だ。
「あ、そうだ!お兄ちゃん、おなか大丈夫?」
「え?おなか?」
「うん…昨日ちょっとつらそうにしてたから…」
そう言えば…確かに昨日は結構食いすぎた…。
でも今は何ともない。
若いっていいよね。
「いや、大丈夫大丈夫。心配してくれてありがとな」
俺はくしゃくしゃとユキの頭をなでてやる。
すべすべの金色の髪が指に絡んできていくらでも触っていたくなる。
妹は気持ちよさそうに、しかしちょっと困ったように目を細めた。
「もぅお兄ちゃん!あんまりなでなでしないでよ!髪の毛せっかくセットしたのに崩れちゃうじゃない!」
「ごめんごめん」
「でも…もうちょっとだけなら…」
ユキはそうぼそりと呟いた。
俺の中でいたずら心が湧き上がってくる。
「ん?なんか言ったか?」
「え、え~と…そのぉ…何でもない!」
「何でもないって顔してないけどなぁ?」
「むぅ…お兄ちゃん意地悪だぁ…絶対わかってるのにぃ!」
「ばれた?まぁ大切な妹の事なんだ、全部お見通しだよ」
そしてまたわしゃわしゃと頭をなでてやる。
「お兄ちゃぁん」
ただ頭を撫でてやっただけなのにユキの口からは少し甘いと息が漏れ出ていた。
「キョウヤ!何朝からイチャイチャしてるの!?ウサギちゃんも混ぜて!」
俺がユキの頭をなでるのに夢中でウサギが目の前に立っていたことに気付かなかった。
ウサギは少し不機嫌そうにそこに立っていたのだ。
「はいはいウサギちゃん落ち着いて…センパイもだよ?そんなことしてたら遅刻だよ?」
どうやらウサギと一緒にキラもいたようだ。
心配そうに俺の顔を覗いてくる彼女。
朝の光が彼女の姿を輝かせてみせていた。
そんな姿に若干俺は見惚れてしまっていた。
「って遅刻!?」
見惚れている暇はどうやらなかったようだ。
「いくぞ、ユキ!」
「う、うんお兄ちゃん!」
俺は妹の手を引いて学校へと走る。
妹の手はやけに温かかった。
「はい!じゃあ編入生を紹介しますね!」
遅刻を免れた俺たちは今こうして教室で編入生の登場を待っていた。
教壇の上では俺たちの担任玉木魅闇が笑顔を浮かべて廊下に手招きをしていた。
どうやら教室に入ってこいというサインらしい。
ガラガラと教室の扉が開く。
教室のすべての緊張がピークに達する。
コツコツと音をたてながら教室内に足が踏み込んでくる。
俺達は黙ってそれを見守っていた。
「はい!今回の編入生はこの3人です!みんな拍手~」
そして教室に入ってきたのは3人。
教室のみんなはまるで品評会をするみたいに彼らを見ていた。
かくいう俺もその品評会に参加していた。
「じゃあ自己紹介ね!」
「あ、はい…」
まずは一番初めに入ってきた真っ黒なローブの少女が口を開いた。
「えと…ボク…ハルカ…トコヨミハルカ…です…ヨロシク…」
相変わらずハルカはあのしゃべり方だった。
しかしあのしゃべり方にも少し不自然な所があった。
いつもより間の開け方が不安定だ。
どうやら緊張しているらしい。
その証拠に彼女は自己紹介を終えると同時にローブのフードを深くかぶってしまったのだ。
ハルカは予想以上に恥ずかしがり屋さんのようだ。
さて次は二人目だ。
二人目は男だった。
真っ黒な軍服を身に纏い腰にはこれまた軍人のようなサーベルが装備されていた。
歳はだいたい10代後半~20ぐらいだろうか?
身長はだいたい170後半といったところか。
真っ黒な黒髪、きりりとした顔立ちもどこか軍人を思わせる。
「俺大和 龍星(やまと りゅうせい)というッス!ヨロシクお願いするッス!」
極めつけはびしっと敬礼。
本物の軍人みたいだな…。
俺の感想はそれだけだった。
そして俺は3人目に目を向けた。
これまたほかの二人に引けを取らないほど特徴的だ。
まずは服装だ。
黒のローブ、軍服ときて次は和服だ。
着物…とまではいかないが確かにその類の服だ。
着やすいように改良が施してあるようだ。
うすい青色の生地に赤色の模様が刻み込まれた着物。
憶測だがあれは金魚か鯉(こい)を描いているのではないかと思った。
真っ黒でつやがある黒髪が教室に漏れてきた風でなびいた。
ふわりといい香りが漂った気がした。
「私は榛名 真夜(はるな まよ)と申します。皆様、ヨロシクお願いいたします…気軽にマヨと読んでくださいね」
そしてこの笑顔である。
顔だちからは14~16ぐらいのイメージがあるが少し高めの身長がそのイメージを崩してくる。
長身童顔の着物娘は口元に手を持ってきてクスクスと笑う。
そのお上品な姿にクラス中が釘付けになってしまっていた。
「え、え~と…君たちは開いてる席に座ってね…これから仲良くしていくよーに!」
タイミングを見逃してしまった先生があたふたしながら編入生3人に声をかける。
3人はそれぞれ開いている席に腰を落ち着けた。
どうやらまた変人が増えるようだ…。
俺は憂鬱な気分のほかに確かに喜んでいる自分を感じていた。
「マリナの解説コーナーの時間です!今日はクロノスの編入制度についてです!」
「あ、それなら俺知ってるぞ。なんてったって経験者なんだからな!」
「は?何言ってるです?ケントは編入試験のこと覚えてないですよ?」
「…そう言えば…筆記試験をしたのは覚えてるけどそれ以降は…」
「もう…やっぱりケントはどこか抜けてるです…いいですよ、マリナちゃんがしっかり教えてやるです!」
「お願いします…」
「まずはケントの言った通り筆記試験です。試験といっても一般常識しか問われないです、正直これは誰でもパスできるです」
「確かに…簡単すぎたな…」
「クロノスに入るには知識より常識がいるってことです!それに通ったら次は実施し件です。この結果でクロノスに入れるかどうかが決まるです」
「へぇ…」
「試験はオシリス領土の森の中に潜むモンスターを指定数狩ってくることです。狩猟数に応じてクラスも決まるのです」
「成績がいい奴から1組2組ってところか?」
「ケントのくせによくわかってるのです!ただ…その試験で少しでも異端分子を見つけるとマリナ達のクラスに入れられるです」
「異端分子っていうと…俺みたいなやつか…詳しいことはあんまり覚えてないけどな」
「まぁバカみたいなケントは放っておいて次に行くです」
「バカっていうなよ…」
「今回の編入試験についてですが…極秘情報をゲットしたのです!」
「え!?マジで!?」
「マジです…今回イリヤ達が編入するための試験ですが…どうやら元からこのクラスに入れるための試験だったようです」
「え?どういうこと?」
「クラス分けをしてないってことです。試験を受けたら速攻でここに入れられるってことです…その証拠にイリヤも簡単な説明を受けただけって言ってたですよ?」
「あ、確かに言ってた気も…」
「たぶん前回の戦いが原因です…あれで人数が減ってクラスが機能しなくなるのを恐れたです…」
「あぁ…なるほど…そういう事か…」
「まぁマリナちゃんの推測です、あんまりあてにするなです!」
「推測かよ…」
「きりもいいし今回はこれでバイバイです!」
「なんかムリヤリな気もするけど…バイバイ!」