走る衝撃
「行方不明になったみんなが戦死扱いになるって…!」
その知らせに俺たちはただ立ちすくむしかなかった。
無言の波紋が辺りに広まっていく。
「お、お兄様…?どういうことですの…?」
「僕も…よくわからない…です…」
そんな中事態をあまり飲み込めていない新参組がオロオロと俺たちを見ていた。
だが俺たちの誰もこのことについて口を割りたいとは思わなかった。
これは最悪の事態なのだから…。
「あのね…」
と、そんな中口を開いたのはなんとユキだった。
ポツリポツリとユキは言葉をはいていく。
「今行方が分かってないクラスメイトがいるってことは知ってるよね?今探索が行われているんだけど…それが打ち切られたら問答無用でみんなは死んだことになるの…」
「そ、それはわかりますが…それだけではないのでしょう?まだ何か理由が…」
「そ、それは…このクラスで死んだ人は記録には残らないの…」
そう、このクラスの特性上記録には残してもらえないのだ。
元々このクラスは極秘任務を主として受け持つクラスだ。
極秘任務にかかわった者の記録はすべての記録から抹消されてしまう。
もちろん戸籍からも…。
それが意味するのはこの世に存在していた記録がなくなること。
元々そんな存在などいなかったという風に消されてしまうことだ。
そうしてオレたちの記憶からも抜け落ちていきかれらはいたかどうかもわからない曖昧な存在にされてしまうわけだ。
「…ねぇキラ、その話どこから?」
「職員室から聞こえてきたの…今ネムちゃんが盗み聞きしてくれてるから」
「よし…俺たちも行くぞ…」
俺はみんなにそう言って職員室へと向かった。
道中何度も足がもつれそうになった。
が、転んでいる間も惜しい。
俺はひたすらに職員室を目指した。
「ネム!今どうなってる!」
「しっ…今いいところだから…」
職員室の扉の前に張り付いていたネムは人差し指を口の前までもってきて一喝。
俺もネムにならってドアの前に張り付く。
心臓がドクンドクンと脈打ちこの先の会話をきかせないという風に暴れまわる。
だが俺はこれをきかなければいけない。
心臓の音をどうにか押さえつけて俺は耳を澄ました。
「どうしてですか!まだ彼らが生きているかもしれないのに!」
聞こえてきたのは俺たちの担任の声だった。
普段はおっとりした風な口調なのにこのときの声はとてもあらぶっていた。
それほどまでに教え子のことを心配しているのだろう。
「探索を続けてもう何日が経過したと思ってる?生存の可能性はほぼ0に等しいことぐらいキミもわかっているだろう」
もう一つは厳格な老人の声だった。
「あの人…軍のえらいさんなの…結構な地位の人だったと思う…」
と、横からネムがそう声をかけてくれた。
「それにいつまでも探索に人手を割くわけにはいかない!」
ひときわ大きい声でその老人がどなる。
壁越しの俺さえびくりと肩を震わせてしまうほどに。
「しかし…彼らの力があれば今の兵力は十分に拡張できるのですよ!?それならば探した方が!」
その大声に一瞬ひるんだ先生だったが負けじと大声を発して抵抗を見せる。
「生きているかどうかもわからない兵力をあてにするだと?ばかばかしい!」
そこから先は不毛な言い争いだった。
両者一歩も譲らず話は平行線だ。
いや、むしろ悪い方に傾いているといった方がいいかもしれない。
何しろ相手の決定を覆す決定打をこちらは持ち合わせていないのだから…。
「このままじゃまずいな…俺たちでどうにかするしか…」
そんなことを思っていると…
「どけ!じゃまだ!」
と、唐突に俺は肩を掴まれて後ろへと押し倒される。
「いって…何すんだよ!」
俺はそいつを睨みつける。
が、そいつは俺のことなどまるで眼中に内容に職員室の中へと入っていった。
「なんだよ、あいつ…」
「確かあの人…今中にいるお偉いさんの直属の部下だったはず…」
そんな奴がここに何の用だ?
それに少し慌てて見えるのは俺の気のせいか…?
「お報せがあります!」
そいつは大きな声を張り上げてそう言った。
なんだか嫌な予感がする。
本能が俺にそう告げていた。
「なんだ…?早く言え!」
お知らせがあると言いながら全く口を開かないそいつにしびれを切らしたのか老人は怒りをあらわにして怒鳴る。
ガタガタとそいつの身体が震えているのがみえる。
どうやら俺の予感は的中のようだ。
これは明らかに悪い報告だ。
「あの…実は…」
そいつが口を開いたのと同時、俺の端末がけたたましい電子音をあげる。
俺のモノだけではない、ネムもほぼ同じタイミングで端末が声を上げた。
こんな大事な時に何事か…俺は舌打ちを一つして端末を開いた。
そしてそこに書いてある内容に目を通して絶句した。
その内容がドッキリか何かであればいいと願う。
が、そんな甘い願いなど叶うはずもなく…。
「青と緑の国が…」
そこにかかれていた内容は…
「我々に宣戦布告をしてきました…」
そいつが口にした言葉と同じものだった…。