「あの~・・・鷹羽さん? 私のしている、この格好は・・・」
「・・・・・・なんですか? なにか言いたいことでもあるんですか? あったら聞いてあげます。聞いてあげるだけですけども」
とりつく島もない調子でぶった切り、部屋の明かりを消した鷹羽理沙はベッドに入って隣で眠る綾奈先生には背中を向ける。完全拒絶姿勢ではあるが、彼女としてはこれでも最大限の譲歩をしているつもりである。
たとえ綾奈先生がパジャマ姿で後ろ手に手錠をかけさせられて、両足首にも同じ物を取り付けられた身動きとれない芋虫みたいな状態でベッドの上に投げ出されたまま放置されていようとも、理沙にとってはこれが譲歩だった。
(私を、あんな恥ずかしい目に遭わせた報いよ報い! いい気味だわ! 自業自得よ! そう言うことにしておくわ!
だって、そうでもしないと私の守ってきた貞操概念や倫理観が崩壊寸前なんだもの!)
知恵を持つことで本能を征服したはずの知的生命体『人類』がもつ倫理とか常識とかの文化的知的活動を、本能だけで破壊しまくるエロティックモンスター柿乃坂綾奈。
そんな驚異の生命体と一晩同じ部屋で同衾しなくてはならなくなった己が不幸を嘆きながら、それでも床に寝かせるのは可哀相だからと同じベッドで寝させてあげられるよう最大限の譲歩を考案するあたり鷹羽理沙の本質は良い子にできていた。
「あの~、鷹羽さん? 明日は入学式ですし、早寝早起きは模範的な良い子の生活なので大変よろしいんですけど・・・寝る前にひとつだけ、下世話な質問しちゃってもかまいませんでしょうか?」
「・・・・・・なんですか?」
「両手両足つながれてる体勢で眠らなくちゃならなくなった私は、その・・・・・・おトイレに行きたくなった時とか、どうすればいいいいんでしょうか?」
イモムシ綾奈先生がちょっとだけ困ったような笑顔で聞いてくる。
確かに今の彼女は(なぜかは知らねど)持参してきた手錠によって、両手を後ろ手に縛られているし、両足はそろえた状態でピンとのばされたままくるぶしで固定されて繋がれている。
這って進むことでトイレまでは行けるかもしれないが、それだけだ。それ以上は行けないし出来ない。
パジャマのズボンは脱げないし、中の下着も降ろせない。そうなると当然ながら・・・生理現象を処理することも不可能なのである。トイレの前でイモムシになりながらお粗相するしか道はない。
さすがの綾奈先生も変態プレイ好きではなかったので、(彼女としては)当然の権利を主張したつもりだったのであるが、主観とは人それぞれであり利害は対立しあうものでもある。
で、結果的に。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ZZZZZZZZZZZZZZZ」
「ちょっ!? 狸寝入り!? 寝たフリで逃げようだなんて卑怯なマネは、先生として許しませんからね鷹羽さん! 私今ちゃんと聞きましたもん!
鷹羽さんご自身の口から『ゼットゼットゼット』っていう効果音をわざわざアルファベット読みで口にすることで先生とのおしゃべりを中断させてしまおうという鷹羽さんの邪悪なたくらみの証拠を、先生はすでに押さえてあるんです! 先生の頭の中に!
さぁ、どうですか!? 難攻不落です! アルカトラズ級です! 取り出せませんし、奪還できませんよ!? これを使って不正をただされたくなかったら速やかに先生を拘束している手錠をはずしてください!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あ、あれ? もしかして本気で寝たフリを続けるおつもりなんじゃあ・・・・・・い、イヤーっ!? 鷹羽さん! 鷹羽さん! 起きてください!起きてください! どうせ起きてるんですから、本当は起きてるところを私に見せてお話ししてください!
先生が悪かったですから! ごめんなさいしますから! 悪い子とした罰として、お仕置きお尻ペンペンを喜んで受けさせられちゃいますから!
だからお願いします! 起ーーきーーてーーくーーだーーさーーいーーっ!!!!
・・・・・・って、あ!? だ、ダメ・・・。別に行きたかったわけでもないのに、行けないとわかった途端に襲いかかってくる生理現象がいきなりぃぃ・・・・・・っっ。
鷹羽さんお願い! 先生を助けて! 助けてくれたら先生、お礼としては、初めてをあげてもいーーーーー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゼットゼットゼット」
「鷹羽さーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっん!?」
ーーーこうして、名門校として名高い鳳梨学園の夜は更けていく・・・・・・・・・。
ーーーと、言うか。
なぜ、知り合って数時間にも満たない短時間のあいだにアレほど多くのエロハプニングを連発しまくれるのだろう? もはやわざとやってるとしか思えない。
女の子同士で共同生活するからには恥ずかしさを耐えなくてはならない場面が出てくるから「今の内に慣れておきましょう!」と、スカートのホックに手をかけて教え子の前で下着姿になり、「恥ずかしさを耐えあう特訓」と称して理沙のスカートにまで手を伸ばしてくる。
入浴時には、「生徒と先生が同室で同棲をしているだなんて思われたら鷹羽さんの将来に関わります! ですからごく自然に見られるよう一緒にお風呂に入りましょう!」などと本末転倒な提案を力強く力説してきて、なし崩し的に一緒に入る羽目になった。
せめて他の生徒たちとカチ合わせしないよう、込み合う時間だけでもズラす工夫をしてみたのだが、よく考えなくても一緒に入らなければすんだ話である。
(・・・あげく、「この学校は女子寮で男の方はいらっしゃいませんし、女性だけで生活しなくてはいけない場所でもあります。共同生活をしていく上でお互いのことをよく知っておかないと色々と不都合なことがあるかもしれませんし・・・」