『愚者』と巡る、大いなる旅路   作:K氏

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 2話時点で日間ランキング1位、3話も3位と、いったい何がどうなってんの?(チントン亭並感)

そんな風に嬉しくも困惑したりしてますが、可能な限り頑張って書いていこうと思います(バーニングレンジャー聞きながら)



……これで仕事もらえたりしねーかなー(大川ぶくぶ先生の絵柄)


特異点F【3】

「……ついに、来ましたね」

 

――ああ。

 

 キャスターとの猛特訓の後、あなた達は彼のガイドを受け、例の大聖杯なるものが存在する大空洞へとやってきた。

 キャスターの情報によれば、現在シャドウサーヴァントで残っているのはアーチャーとバーサーカー。その内バーサーカーは、どうやらこちらが何もしてこなければ静かなままらしく、こちらは放置しても無問題。

 アーチャーに関しては、本人たっての希望により、キャスターが一人で相手をする事になった。

 白髪に褐色の肌をした、不思議な雰囲気のするサーヴァントだったと、あなたは記憶している。

 

 なお、キャスターが引き受けると言った際、オルフェウスが「それってよく漫画である『ここは俺に任せて先へ行け!』ってやつじゃないの? 大丈夫?」などと言いだして、一同を沈黙させたのはここだけの話。

 

「この奥に、例のセイバーがいるのね」

 

 そして、アーチャーをキャスターに任せた一行は、その途中で最後の休息を取り終えたところだった。

 

「……さて、どうするマスター? ここから先に行けば後戻りは出来ない。心だけじゃない、色々と準備するなら今の内だよ」

 

 オルフェウスが、あなたの顔を見やるが、あなたの決意は変わらない。それに丁度、所長が隠し持っていたドライフルーツのおかげで、今のあなたは頭に糖分が回ってそれなりに冴えている……ような気がする。

 

――行こう。勝って、キャスターを驚かせてやろう。

 

「……うん。無茶は禁物だけど、その意気だ」

「頑張りましょう、先輩」

 

 そう声を掛けられ、何故かあなたには、彼らが単なるサーヴァントというよりも、どちらかと言えば頼れる先輩と後輩のような、そんな風に思えてしまっていた。

 

 

 

 

「……これが、大聖杯」

「何よこれ……超抜級の魔術炉心じゃない……なんで極東の島国にこんなものがあるのよ……」

 

 大空洞の奥へ奥へと入っていくと、急に開けた空間に出た。

 その最奥に、禍々しい気配と光を放つ何かが見える。

 魔術に詳しくないあなたにも、それがまずいものだという事は、雰囲気で分かる。

 

 そして、所長曰く大聖杯を背に、黒い人影が堂々とした立ち姿で待ち構えていた。

 

――あそこにいるのが、

 

「はい。恐らく、キャスターさんの言っていた……」

 

 漆黒の騎士甲冑に、とても聖剣とは呼び難い、禍々しい赤いラインの走る漆黒の剣。

 どこか色が落ちているようにも思える白い肌と金髪に、顔のほとんどを覆う黒いマスク。

 

 星の聖剣、エクスカリバーの担い手。遥か彼方ブリテン(イギリス)の地から、遠い日本にもその名を轟かせる伝説の騎士王、アーサー・ペンドラゴン。

 

「……俺は魔術には疎いけど、これだけは分かる。()()()()()()

 

 それは、あなたにも分かっている。何故か見た限りでは女性のように見えるが……恐らく、見た目などアテにならないに違いない。

 現にキャスターも、「分かりやすく言えばロケットの擬人化みてぇなもんだ」と言っていた。

 なんで昔の人間の筈のキャスターがロケットなんて知ってるのかと思ったが、英霊がサーヴァントとして召喚されると、聖杯から基本的な現代知識が与えられる仕組みになっているのだそうだ。なんとも便利なものである。

 

――それでも、立ち向かわないと。

 

「その通りだ。……と言っても、あっちはもう気づいてるみたいだけどね」

 

 オルフェウスが、静かにショートソードを抜き放つ。

 彼に合わせるように、マシュも呼吸を整え、あなたを庇うように盾を構えた。

 

「――ほう。面白いサーヴァントがいるな。()()()()()

 

 それと同時に、こちらを確認した――あるいは既に見ていた――らしいセイバーが、地面に突き立てていた漆黒の剣を抜く。聖なる剣と言うにはいささか禍々し過ぎるが、あれこそが世に名高いエクスカリバーなのだろう。

 そして、彼女が魔力で編まれていたバイザーを解除すると、黒い魔力を体中から放出させながら、バイザーに隠されていた金色の瞳であなた達を冷たく睨みつける。

 その威圧感たるや、一般人のあなたはおろか、魔術師である所長も冷や汗を垂らし、マシュが息を呑むほど。唯一、オルフェウスだけはそれに動じず、だが決して油断する素振りすら見せず、この強敵を警戒していた。

 

 彼らの反応を一通り見たセイバーは、今度はまるで物色するように目を細め――マシュに、彼女の持つ大きな盾に視線を突き刺した。

 その視線に気づいたマシュは、一瞬体を強張らせるが、なんとか持ち直す。

 

「……ふむ。ならまずは、そこの娘からだ。その宝具は、面白い」

 

 ニヤリ、とセイバーが口元を歪ませる。その笑みは、おおよそイメージにあるようなアーサー王のする笑みではない。

 あなたは、その笑顔にぞくりとした悪寒を感じた。

 

 ……来る! と、そう確信させられるぐらいに。

 

「構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

「ッ、来るわ!」

 

――マシュ、やるぞ!

 

「はい! マスター!」

 

 マシュの盾を握る力が強くなる。

 対するセイバーは、慣れた手つきで軽く握り、漆黒の聖剣を後ろへ構える。

 その瞬間、彼女が放出していた魔力が、更に爆発的に広がる。

 

『なぁ!? 魔力反応更に増大!? い、一体どれだけの爆発力があるっていうんだ!?』

 

 画面の向こうで、ロマンが慌てふためく。だが、現場にいるあなた達に、そんな風に慌てる暇などない。出来ることは、覚悟する事だけ。

 

「卑王鉄槌、極光は反転する――光を呑め!」

 

 彼女が一言、また一言と詠唱をする度に、エクスカリバーに()()()が収束していく。

 そして、光の収束が一旦収まったかと思った次の瞬間――

 

「――約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガァァン)!!!」

 

 セイバーの雄叫びの如き声と共に、エクスカリバーに集約されていた魔力が放出。レーザーなんて可愛いものじゃない。シルエットこそ普通の剣と同じぐらいのサイズだというのに、そこから放出されるのは、どこぞのロボットアニメで見るような、大出力の極太ビーム。

 さながら黒い光の奔流とでも呼ぶべきエネルギーの塊が、あなた達に向かって真っすぐ飛んでくる。

 このままでは、直撃は免れない。その威力は、恐らくキャスターの宝具の比ではないだろう。

 

 だから――マシュは退かない。ここで逃げ出せば、自分の後ろにいる仲間達が……何より、先輩が死んでしまうから。

 

 マシュは、漆黒の光を前にして、一呼吸入れる。覚悟は、決まった。

 

「――宝具、展開します!」

 

 そして、マシュはおもむろに盾を地面へと突き立て――

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

「――で、出ました。出ましたよ! マスター!」

 

――ああ。おめでとう、マシュ。

 

「ったく、やりゃあ出来んじゃねぇか」

「はいっ! キャスターさん、ありがとうございます!」

「いいって事よ。それより――」

「え? あの――ひゃあ!?」

「――感謝なら、これで十分ってな!」

「あ、アナタってサーヴァントは!」

 

――このスケベサーヴァント!

 

「んだよ、宝具一発分魔力使ったんだから、これぐらい許してくれたって構わねぇだろ? なぁ、前髪の兄ちゃん」

「……どうでもいい」

 

「――オホン! とにかく、これでマシュも宝具を使えるようになったわね! けど、真名が無いんじゃ不便でしょ。いい呪文(スペル)を考えてあげる」

 

「宝具の疑似展開なんだから……そうね、アナタにとっても意味のあるカルデアから取って――」

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 力強く思い切り地面に突き立てられた盾を中心に、黒い光を迎え撃つかのように青い光が広がる。光は巨大な魔法陣を描き出し、その左右に朧気ながら城壁の如き壁を形成する。

 

 それこそは、彼女の「守りたい」という一途な思いから生まれた守護障壁。

 

「――仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」

 

 彼女の思いから具現化した守りの壁に、騎士王の放った一撃が衝突する。

 不浄の黒と、清浄の青。それら二つがぶつかり合い、拮抗する。

 黒い濁流の勢いは凄まじく、マシュも押し流されてしまいそうになる。

 

「う――ああぁぁぁ!!!」

 

 だが、彼女は諦めない。膝を着くわけにはいかない。屈するわけにはいかない。マスター(先輩)に胸を張って誇れるようなサーヴァントである為にも。

 

 やがて、魔力の奔流が途絶え――そこには、二本の足で立つマシュの姿があった。既に満身創痍でありながらも、彼女は気力と思いだけで、ただでさえ強大な力を持つセイバーの宝具を受け止め切ったのだ。

 あなたは、此処に来る前にキャスターから聞いた助言を思い出す。

 

『いいか。お嬢ちゃんの宝具は、奴さんの宝具との相性は抜群だ。だが、いくら宝具の相性が良くて、お嬢ちゃんがそれなりに戦えるようにはなっても、その技量は奴には及ばねぇ。宝具を使えば、奴からの一撃は防げても恐らくはかなり消耗しちまうだろうよ。そこを、残ったお前さんらでなんとかサポートしなくちゃならねぇ』

 

 ……ならば、次の手は――

 

「……ほう」

 

 一方、宝具を放ったセイバーは、あれだけの攻撃を放ちながらもなお、余裕綽々といった様子であった。

 恐らく、今の彼女なら今と同等の威力の宝具を何発も放てるに違いない。

 

「今のを耐え――」

「はァッ!」

 

 だが、自らの宝具を防ぎ切ったマシュに感心したような口ぶりの彼女に、無粋にも不意打ち気味に刃を突き立てんとする者がいた。オルフェウスだ。

 だがその一突きは、彼が正面から攻めた事もあってか、あと数十cmのところで防がれた。

 

「――ッ! 小癪な!」

 

 突然の攻撃に、セイバーは眉を顰める。

 見るからに反転(オルタ化)している彼女でも、まだ騎士道精神に僅かにでもこだわる部分があったのか、それともマシュを誉めてやろうと思った矢先に攻撃されて苛立ったのか、そこまでは定かではない。

 

「っと、流石に防がれるか」

「ふん。今の正面からの一撃を不意打ちとでも言うつもりか? 貴様、剣は持っているが、恐らくセイバーではあるまい。なるほど、その立ち回りはアサシン()()か、それとも道化師か?」

(流石は騎士王、か)

 

 オルフェウスは余裕そうな態度を見せながらも、心の内で舌を巻く。伊達に一国の王をやっていた訳ではないらしい。優れた実力者揃いの円卓の騎士を統べるだけあって、観察眼もあるようだ。

 ……もっとも、最後はその円卓の崩壊によって、ブリテンは終わったのだが。

 余談だが、円卓にも一人、彼女に気に入られていた宮仕えの道化師がおり、各々が優れているが故に、常に危うかった円卓の騎士達を、彼が自ら笑いを取って繋ぎ止めていたという説もあるとかないとか。

 

「……さぁ。道化師は、ちょっと近いかもね。けど、俺のクラスを当てるのは、一筋縄じゃいかない」

 

 中らずと雖も遠からず。実際の大アルカナにおいても愚者と同一視される存在である道化師は、同時にオルフェウスの知る限り、愚者と同じく始まりの0を冠するアルカナであり、同時に愚者の逆位置とも言うべき性質のものだ。だが、果たして彼女はそもそもタロットを知っているのだろうか、と疑問を抱く。

 しかし、世間にはアーサー王のタロットなるものがあるのを思い出し、案外知ってるんじゃないかと考え、挑発を兼ねた笑みを浮かべた。

 そして、オルフェウスは右手に構えた剣を左手で逆手に持つと、左腰辺りからあるものを抜き放つ。

 

「それは……拳銃か。見覚えがあるぞ。それで私を()()か?」

 

 抜かれたのは、ステンレスシルバーのフレームを持った拳銃。そう、マシュの特訓が始まる直前に、彼が突き付けたあの銃だ。

 

「いいや。()()って意味なら正しいけど――こいつで()()のは、()()

 

 そう言うなり、オルフェウスはその銃口をセイバーに――ではなく、己の蟀谷に当てる。

 

「ちょっ、アイツ一体何してるの!? アナタ! さっさと止めなさい!」

「お、オルフェウスさん!? まさか自害を――」

 

 これには、流石に味方である所長とマシュも慌てふためく。

 あなたも同様に慌て、所長に促されるままに止めようとして――そこで思い直す。

 

『……ま、俺は撃たないし、そもそも()()()()

 

 あの時に言っていた言葉。そこに込められた意味とは何か。

 それを思案していると、オルフェウスが持つ拳銃のグリップに淡く輝く蒼い光が、あなたの目に入った。

 その光を目にした瞬間、あなたはオルフェウスのステータスを閲覧した時に見た、あるスキルの存在を思い出す。

 

(自害? ……いや、恐らくは別の何か――スキルか宝具の発動の為の予備動作か!)

 

 同時に、セイバーもまたオルフェウスの秘めた何かに勘付いていた。彼女の高ランクの直感が、彼女に警鐘を鳴らしているのだ。

 すぐさま、彼女はエクスカリバーを構え、魔力放出でブーストしながら跳躍。

 

「――ぺ」

 

 一文字、紡がれる。セイバーとの距離は、まだ遠い。だが、彼女の魔力放出ならすぐに届くだろう。

 

「――ル」

 

 一文字、紡がれる。これで、距離は半分。……しかし、彼は慌てない。

 

「――ソ」

 

 一文字、紡がれる。既に、目と鼻の先にセイバーがいる。美しい顔だと、他人事のように思ってしまう。揺れる金髪に、いつかの彼女を思い出す。

 

「――ナ」

 

 そして、最後の一文字が紡がれ――硝子の割れるような音と共に、セイバーの体が吹っ飛んだ。

 

「きゃっ」

 

 耳に何やら所長の可愛らしい悲鳴が届くが、そんなものがどうでもよくなるぐらい、あなたは目の前の光景に目を奪われていた。

 

 オルフェウスが自らの蟀谷を撃ち抜いた瞬間、反対側の蟀谷から脳漿の代わりに光の欠片が弾け飛び、その欠片が彼の周囲を舞う。

 それと同時に、オルフェウスの足下から青い炎が吹き上がり、欠片と一緒に渦を巻く。

 

(……笑ってる?)

 

 何故だろうか。今のあなたからは、オルフェウスの決して逞しくはないものの、しかし頼り甲斐を感じさせる背中しか見えないのに。何故かその表情が、手に取るように分かる。不思議な感覚だ。

 

 これは、そう――心で繋がっているような。

 

『――我は汝、汝は我』

 

 不意に聞こえた声に、あなたは頭の中がちりつくような感覚に襲われる。

 

『我は汝の心の海よりいでし者』

 

 その声と共に、それは徐々に姿を現していく。少年の内より出た欠片が集まり、形を成していく。

 一見してそれは人型のようではあるが、肌は勿論のこと、上腕二頭筋や太ももには肉が無く、代わりに金属で繋がれており、明らかに人間ではない。

 

『――幽玄の奏者、()()()()()()なり』

 

 白と水色の、背中に大きな竪琴を背負ったその異形は、動かない口で自らをそう名乗った。

 

「オル、フェウス?」

「で、では、あの方は一体……」

 

 突然現れた異形への困惑。それに支配されている二人を他所に、あなたは――彼を僅かに理解したような、そんな気分になった。

 元より、彼は偽名としてオルフェウスの名を名乗っていた。その本当の由来がどこにあるかは定かではないが、恐らくあれが関係しているのだろうと、そう察する事は出来た。

 そして、彼のスキルにあった『心象具現・疑似降魔(ペルソナ)』。それが、今しがた彼が召喚した存在なのだろう。

 

「召喚術の類か? まぁいい。叩き伏せるのみ」

 

 そして、突如として現出した謎の異形を前にしても、セイバーは全く怯まない。寧ろ、冷静に状況を把握しようとしているようでもある。

 しかし、そんな彼女の観察眼をもってしても、目の前の存在がほとんど理解できないでいた。スキルによって出現したものというのはわかる。だが、目に映る情報だけで分かったのはそれだけ。

 

「オルフェウス」

『アギ』

 

 だから、突然異形が竪琴を手に取り、それを弾くと同時に炎がセイバーのいる場所で吹き上がっても、対処のしようがなかった。

 

「なッ――」

 

 それはまさに自然発火。自身の体を包み込む炎に、セイバーは()()()()()()()驚く。

 だが、すぐさまその炎を振り払うと、後ろに飛んで距離を取る。

 そこへ、異形が立て続けに竪琴を弾き、彼女の着地点を次々と燃やす。

 だが、セイバーも負けてはいない。まるで未来予知でもしたかのように、炎を次々と避けていく。

 

 ――そして気づく。()()()()()()()()。そして()()()()()

 

「……最初は驚かされたが、なるほど。貴様も中々、面白い。だが、少々迂闊なのではないか? わざわざ攻撃を打ち止めにするなど」

「……そっちこそ、どういうつもりか分かってる癖に」

 

 獰猛さを一切隠す事の無い笑みを浮かべるセイバーに、アルターエゴの少年も異形――ペルソナを引っ込め、不敵な笑みを浮かべて返す。

 そんな少年の意図は、あなたにも伝わっていた。

 

「お待たせしました! マシュ・キリエライト、戦線に復帰します!」

 

 そう、今までのは陽動だ。マシュの体力を戦闘可能な状態にまで持っていく為の。

 マシュがアルターエゴの少年と並び立ち、あなたと所長もそれに合わせて少し前進する。

 

「さて、これで二対一。これぐらいのハンデは構わないだろ、騎士王?」

「構わんとも。未熟なサーヴァント一人……いや、()()()()

「……やっぱ気づかれたか」

 

 少年が自嘲気味に笑う。そして、背後にいるあなたの方へと視線を向けた。

 

「さぁ。ここからが本番だ。俺が君の剣で、彼女は盾。そして君は、それらをどう扱うかを決める頭だ。ここからは、君が俺達に指示を出すんだ」

 

 その言葉に、あなたは頷く。

 ……ここまでのは、所謂チュートリアルだ。今自分の元にいる二人のサーヴァントがそれぞれ何が出来るか、それを把握する為の時間。

 オルフェウスも……否、アルターエゴの少年も、セイバーがただ者ではないからこそ、ペルソナという手札を切った。

 あなたは、それらを知った上で、上手く彼らに指示を出さなければならない。

 勝つか負けるかではない。生きるか、死ぬか。実際の戦いの果てにあるのは、その二つだけなのだから。

 

――……ああ。責任重大だね。

 

「大丈夫です! マスターは、私が守ります!」

「そういう事。気楽にやれ、とは流石に言わないけど、とにかく君が思うようにやればいい。俺達も出来る限りそれに応えるし、ピンチになれば手助けぐらい出来る」

 

 二人のサーヴァントのやる気を受け、あなたは真っすぐ正面を見据える。

 待ち受けるは強敵、セイバー。

 

 勝てるかどうかではない。勝たなくては、死あるのみなのだ。

 

――行くぞ、二人とも。

 

「了解です、マスター!」

「さぁ、行こうか」

 

 そして、最初の特異点での、最後の決戦の幕が上がった。

 

 

 

 


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