ランスとエールの冒険 +まとめSS   作:RuiCa

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トリダシタ村を出発する話

「ふん、シィルの腹の中に子供が出来てしまうとは」

 妹か弟ができるのは嬉しいことだ、とエールはランスに言った。

「便利な奴隷がいないと気軽に出かけられん。セックスも出来んしつまらんつまらーん!」

 大きな子供のように駄々をこねる父、それを謝る父の奴隷で助手で恋人であるシィル、それを微笑ましく見てる母クルックー。

 エールにとってここ最近、慣れ親しんだ光景であった。

 

 エールが長田君と出かけた二回目の大冒険。

 その旅の終わり間際、アイスの町にてエールはランスとシィルに再会した。

 その時シィルのお腹の中に子供がいると言うことを知り、身の安全を考えて二人を匿うようにトリダシタ村に招待したのだった。

 リセット以外の魔王の子がエールの存在を知らなかったように、トリダシタ村ならば安全に暮らせるだろう。

 

「大体何でこの俺様が碌な女もいないこんな田舎のちんけな村にいなければならんのだ」

「魔王であったランスを恨む人間は大勢いるでしょうから安全のためです」

「すいません。クルックーさん……」

 少し大きくなったお腹をさすりながらシィルが謝る。

「お前が子供なんぞ作るからこういうことになるのだ!」

 シィルさんを妊娠させたのは父だから父のせい、とエールが言うとその頭がぽかっと叩かれる。

「まぁまぁ、アニキも娘さんとゆっくりすればいいじゃないか」

 そう言ったのは父曰くちんけな村にそぐわぬ長身美女でモデルでもあるアルカネーゼである。

 エールは知らなかったのだが、父の女の一人であったらしい。行きつけのパン屋でありこれまたエールの剣やガードの師匠でもあったサチコさんも父の女だったらしいが、こっちはお互い覚えてなかった。

 

 サチコはエールの父親を知らなかったようでとても驚いていたが、アルカネーゼは知っていたらしくむしろ長年サチコが知らなかったことに呆れ……とても驚いたようだ。

 エールから事情を聞き、死んでいたと思ってたシィルが生きていたことを知ったさいも驚きはしたものの二人は喜んで一緒に村に歓迎してくれる。

 細かいことを詮索したりもせず、自分を可愛がってくれるのもあってエールは二人が大好きだった。

 母であるクルックーもきっと同じだろうか、かつては護衛をしていアッという二人とは友人関係に落ち着いている。 

 

「ふん、つまらん。大体娘に優しくしたところでセックスも何もできんのだ。そんな女に優しくしてやる趣味はない」

「リセットにはあんなに良いパパしてたじゃないか……」

 エールはその話を詳しく聞きたかったが、いつもの通り面倒くさがって話してくれないだろうしあとでまたシィルに聞こう、と思った。

 

 シィルはエールからランスの冒険話をせがまれてよく話相手をしていた。

「俺様の英雄譚をしっかり話すんだぞ」

 ランスは大笑いでそういって、シィルは焦る。

 リーザスをヘルマン軍から救ったり、ゼスを魔軍から救ったり、魔人戦争の話まで本当に英雄譚と呼べる話は聞くだけでエールはとてもワクワクした。

 聞いていると、たまにアルカネーゼやサチコが何とも苦い顔をしていることがあるのでもしかしたらごまかしたり脚色されていたりするのかもしれない。

 それとランス俺様の女という単語について聞こうとするとシィルがまだエールには早い話だとしどろもどろになるのが見ていて楽しい。

 

 エールから見たシィルは父に好きだと言わせただけあって優しく温かく、妊婦さんなのに心配になってしまうぐらいに働き者でもあり、なるほど包容力の高そうな人だ。

 たまにシィルが自分のことを助手と話しては、ランスからぽかっと頭を叩かれているのでけっこうお茶目な人なのかもしれないな、とエールは考えている。

 ちなみにランスがシィルに告白した話をすると「うがー!」っとなって怒りだして、シィルをぽかぽかと叩き出し 照れてるのか、とエールが聞けば今度はエールのほっぺたをむにーっと伸ばしてくるのでこの話はもう言わないようにしようと決意している。

 

 平和だが冒険のない日々はシィルの話を聞くことに費やされている。

「エール、シィルさんを困らせてはいけませんよ」

 母クルックーに窘められても、エールはシィルのことをとても気に入っていた。

 ランスの事を話すシィルは楽しそうというのもあって、かなり突っ込んだことまで聞く仲になっていた。

 シィルの腹には自分の未来の弟か妹がいるのでそれもまた楽しみの一つだった。

 

 エールが外に出かけた時、なんとなく安産のお守りを買おうとしたことがあるのだが

「俺様の娘なら買い占めぐらいして来んか」

 と、ランスに言われて本当に全部買い占めさせられたことがあった。

「ありがとう、エールちゃん。こんなにいっぱい」

 大袋に持ち帰って、そのままどさっと渡すと笑顔で受け取ってくれる。

「俺様の娘がわざわざ買ってきてやったんだからな。一つ残らず身に着けとけよ」

「え、えぇ! 100個ぐらいありますけど」

「これからまだまだ増えるからなー」

 そんなことを言ってシィルを困らせたりしている父もまた楽しそうである。

 

 ある日、ランスがエールにこんなこと話し出した。

「エール、お前はこれからどんないい女になろうと俺様は抱くことができん。英雄である俺様に抱かれると言うのはこの世界の全ての良い女にとっての目標であり幸福と言ってもいいが、それが俺様の娘として生まれてきたばかりに……本当にかわいそうなやつだ」

 大真面目に哀れんだ瞳をエールに向けるランス。

 志津香さんたちは抱いているのに?と言うとエールが首を傾げて尋ねると、ランスが不思議な顔をしたのでどうやら子供の魂が入ってることは知らなかったようだ。

 事情をエールが話すと驚きはしたたものの

「子供は後から入り込んだだけで、志津香とナギの体はもとから俺様の女。そっちが先だからセーフ。しかしエールも俺様に抱かれたいからと同じことをするんじゃないぞ。お前は娘であるのが先だからな」

 そうですか、とあっさり受け流すと今はまだ理解できんかもしれんな―……などと言っている。

 

 父のいる日常は退屈だったトリダシタ村を楽しくそして騒がしくしていた。

 

………

……

 

 

「エールー!」

 

 

 エールがそんな穏やかでちょっと騒がしい日々を過ごしていたある日、エールの親友兼相棒である長田君が訪ねてきた。

 会うのは一月ぶりぐらいだろうか、親子水入らずですごせるようにと一人で冒険に出かけてしまっていたのだ。

 

 相棒との再会に喜び、エールと長田君は手を取り合ってくるくる回る。

「何をしとんじゃ……」

 その様子を何となくランスが見ていた。

「あ、こんにちはー……えーっと、ランスさん?」

「お前はこんな気味の悪いハニワと知り合いなのか。趣味が悪いな」

「ひどくね!?」

 魔王退治でも冒険でも一緒にいたのにランスは長田君のことを覚えてはいなかったし覚える気もないようだった。

 大事な相棒に酷いこと言わないで欲しい、とエールが口を尖らせると

「お前ハニワが好きなのか。はにわ教には入るんじゃないぞ」

 ハニーではなく、長田君が好きなんだと言うと長田君が照れる。

 それをランスは面白くなさそうな目で見つめていた。

「なんつーか、エールも家族水入らずでと思ったけど、なんかあんまりいい父ちゃんじゃなさそうだなぁ」

「ハニワにお義父さんと呼ばれる筋合いはないわ!」

「えぇ!?」

 そんな不毛な会話を繰り広げて、エールはニコニコと笑顔を浮かべていた。

 

「ま、まぁ、いいや。エールももう十分家族と仲良くしただろうし、そろそろまた冒険に行かね? 桃源郷探しだけどJAPANのはハズレだったしさー」

「冒険? エールが、この陶器と?」

 相棒で親友だからね、とエールが言うとさっとレディチャレンジャーを着込んで荷物を持ってきた。

 冒険に必要な荷物はもうまとめてあったのだ。

 

「うーむ、冒険、冒険か……」

 

「よし、俺様もついて行ってやる」

 

 悩んだように見えたランスがそう言った。

「え、いや、いいです」

 速攻で断った長田君の声は聞こえないようだ。

「ちんけな村で退屈してたところだ。俺様の冒険についてこれるとか光栄に思えよ」

 がははー!といって豪快に笑う父ランスの中で、すでに冒険の主導権が握られている。エールと長田君を目を合わせるが、もはや断れないことをお互い悟っているようにため息をついた。

 

「ランス様……」

「ふん、お前はせいぜいこのちんけな村で退屈な日々を送っていろ。クルックー、あとは任せた」

「分かりました。シィルさんはしっかり保護しておきますね」

「そういうことを言ったんじゃない」

 素直に行ってきますもいえないようだった。

 

 

「行ってらっしゃい、ランス様。エールちゃん、ランス様をお願いしますね」

 そう言ってランスが好きな食べ物やその作り方、嫌いな食べ物なんかが書かれたメモを渡される。

 嫌いな食べ物とか出すとさぞ怒るのだろう、エールはシィルに礼を言った。

「気を付けるのですよ、エール。お土産は珍しい貝が良いです」

「珍しい貝は全部俺様のものだぞ」

 エールは珍しい貝を見つけたら、隠して持って帰ろうと思った。

 

 こうして、三人の冒険が今スタートするのだった。

 

「儂もいますよー」

「私もエールさんについていきます」

 二人仲良く(?)掃除用具入れに放り込まれていた魔剣と聖刀が主張し始める。

 

 改めて三人と二振りの剣の冒険がこうしてスタートしたのであった。

 

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