魔族の王の帰還   作:ローニエ

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プロローグ

「ここは…?」

 

 

 モモンガさんからのメールを見て、久しぶりにユグドラシルへログインした俺は周りを見渡す。

 

 

「あぁ…宝物殿か」

 

 

 周りを見渡し、最後にセーブした場所を思い出し、現在の自分の置かれた状態を確認する。

 もう1年くらい経つんだな…

 最後に、ここユグドラシルにログインしたのは1年も前のことだった。この1年プレイしたい気持ちはあったが、何だかんだ言い訳して全然ログインはしなかった。しかし、そんな自分とは違い、モモンガさんは毎日のようにログインしていたらしい。

 

 

 

「おぉ…至高の41人が一人、ピサロ様っ!」

 

 

 そう思いを巡らせていると背後から声がかかった。

 

 

「お前は確か…パンドラ…パンドラズ・アクターだったか?」

 

 

 声の聞こえたほうに振り返ると、そこには黄色い軍服を身にまとったドッペルゲンガーが大仰に跪いていた。

 彼の名前はパンドラズ・アクター。モモンガさんが作ったNPCだ。モモンガさんがよくギルドの皆にかっこいいでしょう?と自慢していたのを覚えている。

 そういえば彼はここの領域守護者だったか。いや、それよりも今気にする点は彼が話したことだった。どうやら自分のいない1年の間にキャラクターボイスが実装されていたようだ。なかなか大きなアップデートがあったんだなぁと感心していると跪いていたパンドラズ・アクターが声を上げた。

 

 

「ピサロ様、質問を一つしてもよろしいでしょうか?」

 

 

 質問…だと?さっき驚いていた件もそうだが、ただのNPCにここまで自我があるものなのだろうか。そうとうすごい人工知能を使っているのだろうと自分を勝手に納得させる。

 

 

「あぁ、いいぞ。なんでも聞くがよい」

 

 

 聞くがよいってなんだよ。何様だよ俺。なんかパンドラズ・アクターを見ていると、普段は話さないような、まるで上司にでもなったような話し方になってしまっていた。まぁNPCからすればプレイヤーは上司といえるのかもしれないけど。

 

 

「それでは…本日はどのような御用で?」

 

 

 どんな質問かと思えばなんてことのない質問だった。まぁいくら人工知能といえど、そんな大した質問はできないよなぁなんて思いながら、俺はここに来た目的を告げる。

 

 

「あぁ、最後にモモンガさんに挨拶をしようと思ってな。ユグドラシルの終わりぐらい見届けたいと思ってやってきた次第だ」

 

 

 そう、俺がログインしたのは今日がユグドラシル最終日であるからだ。いくら1年もの間ログインしていなかったとはいえ、長い時間やったゲームだ。終わりを見届けたいという気持ちがあった。それと1年もの間ログインできなかったことを、ギルド長であるモモンガさんに謝りたいという気持ちもあるが。

 

 

「おぉ…なんていうことだ…。ピサロ様考え直してはいただけないでしょうか!私はこれ以上一人で悲しんでいるモモンガ様を見ていたくないのですっ!」

 

 

 俺がここにきた目的を告げると、パンドラズ・アクターがこの世の終わりみたいな顔をし、焦りながら俺に叫ぶように告げてきた。

 おぉ…さすがはアクター、演技力半端ないって!そんなん、できひんやん普通!なんてだいぶ前に流行った言葉を自分の中で思い出した俺。とはいえ、何か言わないとかわいそうだな。

 

 

「許せ、パンドラズ・アクターよ。ユグドラシルの崩壊はもはや誰にも止められないのだ。それは俺やお前の創造主モモンガさんでもだ。力のない俺たちを許してくれ」

 

「ユグドラシルの崩壊…?もしや今回の転移に関係することでしょうか?」

 

 

 文句があるなら運営に言ってくれと思っていた俺だが、俺の話に対してパンドラズ・アクターが不思議な事を告げた。

 

 

「転移…?何のことだ」

 

 

 転移…?もしやこれはクエストの発生であろうか?だとしたら大したものだ。ギルド内でクエストが発生するなんてこと今までなかったから、初めてのことに少しワクワクする俺。これこそゲームの醍醐味であろう。そう思っていたとき、背後の宝物殿の扉が開く音がした。

 

 

「パンドラズ・アクターはいるか?ワールドアイテムを取りに来たのだが…」

 

 

 扉から現れたのは骸骨であるモモンガさんだった。

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