「お待たせして申し訳ございません、アインズ様…」
最後に部屋に入って来たアウラが申し訳なさそうな表情でアインズへ告げる。
「よい、それで彼女の様子はどうであった、アウラよ」
「はい、それが……門番のピサロナイトに話しかけても、ピサロ様以外は通すことができないの一点張りで…」
「アインズ様の御意思に背いたというの?アインズ様!私が力尽くで呼びに行ってまいります」
二人の話を聞いていたアルベドが怒りをあらわに部屋を飛び出そうとするが、アインズがそれを止める、
「よい。それはピサロが設定したことなのだから、私が何かを言う立場ではない。それに必ずしもこの場にいなくてはいけないというわけでもないからな。今回彼女を呼ぼうと思ったのは、彼女が喜ぶと思ったことに他ならぬが…まぁよい。彼女の元には、戦いの後でピサロが行くであろうからな」
「はっ!かしこまりました」
「それでアインズ様、今回お戻りになられたばかりのピサロ様が、お一人でシャルティアへ挑むことの説明をお聞きしたいのですが…」
ピサロがナザリックに帰って来たことは、守護者達のみに伝わっていた。もし、ナザリックの者全員に伝わってしまえば、シャルティアの件と合わせて大きな混乱が生まれることを危惧したためだ。
しかし、守護者達でも詳細な情報はもらっていない。そのため、デミウルゴスはアインズへと尋ねた。より詳細な情報をもらうために。なぜ自分たちにお任せいただけなかったのか。同じことを疑問、いや不安に思ってた他の守護者達もアインズへと視線を向けた。
「無論だ。今回お前たち守護者を呼んだのはその説明もかねているからな。ところでデミウルゴスよ、ピサロのことはどれほど知っている?」
もちろんアインズは、守護者達にその理由を告げるつもりでいた。そのため、まず彼についてどれだけの知識を持っているのか尋ねることから始めた。
「はい、ピサロ様は至高の41人の中でも戦闘に特化したお方でございます。たっち・みー様と直接戦ったことはないものの、もし戦えば勝利も余裕であるとウルベルト様からお話を伺っております。また、かの1500人の討伐隊が攻めて来た時は参加していなかったとお聞きしておりますが…」
「なるほど、他の者たちもデミウルゴスと同様の認識か?」
アインズはデミウルゴスの言葉に頷きながら、他の守護者達に尋ねる。すると、守護者達は全員首を縦に振った。その様子にアインズは、かつての友たちについて細かいことは知らないんだと再認識した。おそらく自分の創造主に関連した情報についてのみ多くの情報を持っているのだろう。そういう点では、ピサロは守護者達にあまり知られていないというのは納得だ。なぜなら、彼は基本的に第6階層に作った自分で作った塔を拠点としてプレイしていたからだ。
「ではまず彼の戦闘について話そう。先ほどデミウルゴスも言っていたが、ピサロはたっちさんと戦ってもおそらく勝つことは容易であろう。それは彼が使ったワールドアイテムに関連している」
「わ、ワールドアイテム…ですか?」
アインズの言葉に思わずマーレが声を漏らす。他の守護者も声を漏らすほどではないが、それなりに驚いてはいるようだ。
「その通りだ。彼は、ワールドアイテムの中でも強力な効果を持つ20のうちの一つを何度も使っていたのだ」
しかし、続くアインズの言葉に守護者たちは驚愕をあらわにした。時が止まったかのように思われたが、中でも早く再起したデミウルゴスが震えながらアインズへと声をかけた。
「わ、ワールドアイテム…それも二十のワールドアイテムを何度も…でございますか?」
「あぁ、その名も”
「おぉ…!」
アインズの言葉に守護者達は一斉に感嘆をあげた。
ワールドアイテム、ユグドラシルに存在する全アイテムの中でも頂点に位置するアイテムであり、一つ一つがゲームバランスを崩壊させかねないほどの破格の効果を持つ。その中でも二十と呼ばれる使い切りであるが故、さらに凶悪な効果を持つアイテムであるものを何度も使ったと言われたのだ。驚くのも無理はないだろう。
「しかし、このアイテムにはデメリットがあってな。叶える願い以外の要素、つまりプレイヤーのスキルやアイテム、レベルといったものが0から始まるのだ」
一呼吸おいてアインズは話を続ける。
「これまで必死に作り上げて来たものが全て無になるのだ。普通の者では使うことを渋る者もいるだろう。しかし、ピサロさんはそれでも自分や自分のNPCたちのために”最後の願い”を使っていたのだ」
アインズの言葉に守護者達はさすがピサロ様!と賞賛を送る。実際ピサロのやったことを自分もできるだろうかと自問自答するが答えはたった一つ、”できない”だ。最初からそのアイテムの存在を知っていたらわからないが、このアイテムが見つかったのはゲームが始まってからそれなりに時間が経ってからだ。その時までのデータを削除してまで力は欲していない、というのがアインズの考えだ。
「それで話を戻すが、ピサロさんはその”最後の願い”の1つで呪文を使えるようにしてくれと頼んだのだ」
「呪文…でございますか?それは魔法とは違うのでしょうか?」
「詳しいことは私にもわからないが、本人曰く違うらしい。この呪文というのがまた厄介なもので、魔法とは違う存在として捉えられているため、防御系ワールドアイテム以外、防ぐことができないのだ」
「な、なんとっ!」
「そのため、呪文に関しては誰もが手をつけられない。また、ピサロさんは魔剣士ピサロと言われるほど、剣での戦いにも慣れている。これがピサロさんがたっちさんに勝てると言われていた所以だ。またデミウルゴスよ、先ほど1500人のときの話を挙げていたが、これもまた今の話に関連していてな。攻め込まれた時がちょうど”最後の願い”を使ったばかりだったために、ピサロさんのレベルが1で戦力にならなかったというのが真相だ」
「そ、そうでございましたか…。そうとは知らずに失礼なことを…」
「構わんさ。それでは、ピサロさんの戦闘を観戦するとしよう」
アインズはそう告げ、