どうも、前作「馬場このみのリフレイン」ではお世話になりました。沖縄の苦い野菜と書きまして「ゴーヤ」と読みます。
今回はようやく構想がある程度まとまったため、書き溜める……ことはせず、見切り発車でこちらの作品を投稿させていただきます。
更新ペースは、まちまち、といったところで。
もしよろしければ、末永く、お付き合いいただければと思います。
それでは、本編をどうぞ。
街を彩る音は様々だ。歩いているだけで、所々から音色が溢れ出る。それを雑音という人も居れば、彼のように鼻歌まじりに楽しむ人間も居る。そもそも、音に色が見えるかなどと聞かれれば、大抵の人間は見えないと答えるだろうが。
彼は左手に持つ白杖でテンポよく地面を叩きながら、人の波に乗っていた。するり、ぬらりと、針の穴でも縫うかのように雑踏を掻い潜り、口では誰もが聞きなれない独特だが楽しそうなメロディを紡ぎ出す。そんな様子とは裏腹に。
(東京って、全体的に茶色いなぁ。ウィーンには、ほとんどなかった色だ)
などと、掴みどころもなければ、何とも楽しいとは思えないことを考えていた。
(今すれ違った人は、足から焦げ茶色。溜息は藍色。あっ、後ろには黄色、身体全体から。聞いている曲は、あの子のだね。草原と青空、駆け抜ける清涼の風。社長、また弾かせてくれないかなぁ……)
別に、彼には後ろに目が付いているわけではない。ならばどうして周りの状況が分かるかといえば、その類稀なる耳にあった。それはどんな音でも拾ってきて、彼に世界の彩りを教えてくれるのだ。
(僕の杖の音は黄緑。ちょっと弾みすぎかな。調子に乗り過ぎて、ウザがられたみたい)
すれ違いざまに赤色の微振動を感じて、真面目にやろうか、と彼はリズミカルな叩き方から一変。規則正しい、角の立たない無彩色の音を奏でる。タンタン、タンタン、と。波紋するのは無彩色だとしても、その震え方は違う。波の高さが、今自分がどこにいるかを教えてくれる。鉄を叩けば高く細かい波が。コンクリートはちょっと高くて暢気な波が。ゴムだと、音が潰れるか低く大らかに波が立つ。今は、ちょっと高くて暢気な波が立っている。
小鳥のさえずりのような機械音声と、雑踏の中心。横には細かく重低音で震えるエンジン音。まだ横断歩道の中心にいた彼は、音に細心の注意を払いながら、白杖で前方を確認して、さっさと信号を渡り切る。
「ヘイ〇〇。765プロライブ劇場まで案内よろしく」
渡り切った後も点字ブロックの上を真っ直ぐ歩きながら、いつの間にか取り出した携帯、そのアプリを慣れた様子で使い始める。女性の機械音声が「少々お待ちくださいませ」と返事をしてから十数秒。
『およそ、二十メートル先で右折してください。その次、およそ五十メートル先を左です』
「はーい」
間延びした暢気な返事をひとつ。再び、地面を叩く白杖がリズムを刻む。それはさながら、鍵盤の上に指を走らせるように、右、中央、左、中央、右、といった風に。さて、メロディへと繋げようとしたところで、ふと先ほどウザがられたことを思い出した。これは迷惑か、と無機質で最低限の叩き方へと手法を変えた。角の立たない、無彩色だ。
そろそろかな、とペースを気持ち程度に落とす。そうして数秒後。
『その角で右折してください。その次、およそ五十メートル先を左です』
「ゲナウ!」
思わず口から出たのはドイツ語だった。意味は正解、当たり。日本人や欧米人であれば「ビンゴ」とでも言っていただろう。
通行人は、聞きなれない言葉にギョッとして彼を一度見るが。彼自身はそんなことに気付いた様子もなく、「警告ブロック」の上に足を置くなり、緩やかに右折する。
ちょうど、そのときだった。
彼の身体が、何かとぶつかった。遠慮もなく、お互いに突っ込んでしまった。思いがけない出来事に「わっ」と声が出た。対面からは「きゃっ」と、筝(そう)のきつめに張った手前二番目の弦(これを為「い」という)を弾いたような、短い悲鳴がひとつ。衝撃はそれほど強くはなかったが、不意の衝撃に彼は尻もちをついてしまった。その際に、カランと手から白杖が離れてしまう。ついでに、携帯もどこか彼方へと。
「あっ、ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか!?」
血相を変えた、といったような言葉がピッタリなほど、正面から聞こえてくる声は焦っていた。どうしよう、何をすれば、などと混乱していることが丸わかりだ。ぶつかられた側だというのに、彼は思わず苦笑して、声のした方に顔を向けた。
「大丈夫、大丈夫。出会い頭……とは違うけど、曲がったところにちょうど、だったからね」
そんな会話をしながら、彼の左手は忙しなく地面をまさぐっていた。本来ならそれだけで見つかる筈なのに、今はどうしてかどこにも手触りがない。そんな非常事態に、あれ、と彼の口から間抜けな声が出る。
「あの、立てますか? よろしければ手を」
「あぁ、うん。お願いできるかな」
多分、対面の誰かに差し伸べられた彼の手は、柔らかくも芯の強さを感じさせる手に固く掴まれる。繋がれた手は彼を前面へと、ゆっくりと引っ張り上げ、彼もそれに同調するように体を起こして立ち上がる。
「あの、本当にお怪我とかは……?」
「大丈夫。手も捻ってないし、お尻もちょっと打っただけだからね」
おかげで真っ二つだよ、などとジョークは言わない。気の知れた仲であれば「HAHAHA」と笑いながら軽口を叩けるものだが、生憎と相手は初対面だ。足りない言葉に口惜しさ。ほんの少しの寂しさを胸に仕舞い込み。あぁそれと、と彼は目の前の誰かに聞く。
「僕の杖と、携帯電話、何処に落ちてるかわからない?」
「あっ……す、すぐ拾ってきます!」
息を呑むような、喉が縮んで鋭く息が漏れる音がひとつ。今度は使命感に駆られる様に、その誰かは弾かれる様に飛び出した。さながら、その足音は死地に特攻する兵隊の役……舞台では、そんなところか。空気を拾うように、振り払うように靡いたのは、相手の髪の毛だろうか。だとしたら、相当の長さだ。腰より少し上くらいだろう。
とりとめのないことを考えているうちに、相手は彼の前に忠犬のように走り戻り「お待たせしましたっ」と声を上ずらせる。
「こっちが、杖です。……左手、でしたよね?」
「うん。ありがとう」
渡された白杖の感触を確かめながら、やっぱりこれがないとなぁ、と相棒の帰還を祝福した。白杖とは、長年飼っていたペットのように。あるいは、何十年と使ってきた愛用の楽器のように。手放すと不安で、手元にあると安心するものだった。
「あの、それで、その……」
歯切れの悪い声。色で表すなら、紺色といったところだろうか。細かく震えて、断続的で、いびつな形をしている。それは隠し事、後ろめたさ、暗い影を伴ったときのものであると彼は知っている。しかし、初対面の相手がどうして、と思っていると。
「ごめんなさいっ! スマホの画面、割れてしまっていて……」
そんな告白に、彼はポカンと大口を開けて硬直した。告白の内容をもう一度、反芻した。それを考え直すと、思わずおかしくなって、口から鮮やかな黄色の音色が飛び出した。
「へっ!?」
驚いたような、唖然としたような声に構うことなく。彼はその口から声を上げ続けた。目尻に涙が浮かぶ自分を想像するほど笑い続けた。そうしてひとしきり声を上げると、腹を抱えたまま、黄色く上擦った音色でひとつ。
「いやっ、ごめん、ね。だって、おかしくて。キミって、すっごく真面目だとか、馬鹿正直だとか、言われない?」
「なっ――」
失礼千万な評価に、相手はしばらく絶句した後。強い赤色の震えが聞こえてくるが、それもすぐになりを潜めた。そのことがまたおかしくて、彼は鈴を鳴らしたように笑い声を上げた。
「いや、ごめんね。侮辱とかじゃなくて。だって、僕に画面が割れたって報告。しなければバレないのに」
「……それでも、自分が悪いことをしたのなら。まして、そんなつけ込むような真似なんて!」
冷静を装っていても、実は感情的で、真っ直ぐ。きっと中学生くらいだろうとあたりをつけた彼は、正直者に向けてはにかみながら「いいよいいよ」と手を振った。
「それに、僕は画面を見ないからね。割れたって、機能に支障がなければ変わらないよ。強いて言うなら、手触りくらいかな」
おどけた様子で、自分の身なりを晒すように両手を広げて言い切った。大らかで、気さくで、垣根を感じさせない距離感で。彼はそこに立っている。
灰色の細かな波紋が伝わってくる。困惑している様だ。日本人の感性や今までの行動から考慮して正直者の気持ちを代弁するならば、どうしてそんなに気を遣ってくれるのかわからない、といったところだろうか。それならば、逆に彼はこう言おう。
「持たざる者でも、気遣いをする心まで奪われた覚えはないよ」
「っ!」
また、驚いたように息を呑む音がした。当たりのようだとほくそ笑み、彼は「それに」と続けて自身の耳に手を当てて言った。
「僕にはギフテッドがある。等価交換さ」
人間とはよくできたもので、どこかに欠損が生じた場合、生きるためにどこかが鋭利に発達する。所謂、環境適応能力ともいうべき力が、彼の身にも宿っていた。そうして、ギフテッドがもたらされた。もともと才能があって、それが開花しただけに過ぎないかも知れないが、どちらにしても等価交換だと彼はそう思っている。
「だからまぁ、過剰な気遣いは不要ってね」
彼がそれだけ言ってもまだ、目の前の正直者は納得していない様子だった。細かな灰色の波紋……困惑と、少し混じった青は不満か、納得できないという感情か。ここで強引に話題を切り上げて立ち去っても、心のしこりは残ったままになりかねない。それがわかる彼は、見過ごすというのもどうにも後味が悪く思い。
妥協案を思いつき、苦笑しながらそれを提示する。
「じゃあ、道案内してくれないかな? 765プロライブ劇場って、わかる?」
「っ!」
波紋が、途端に色を変えて大きく波打った。灰色と青のそれは、途端に眩しいばかりの黄金に輝いた。これほどの喜色への転換は、滅多に見られるものでもない。どうしようもなく正直で、義理堅い人なのだと、彼は浴びるように相手の人間性を感じ入った。
「はい! それなら絶対に! ご案内しますねっ」
「あ、嬉しいのはわかるけど、ゆっくりね? 僕、足元注意とかできないから」
そう言いながら、彼は手を繋がれたまま、その誘導に従って歩きはじめる。本当なら肘の上を掴むというのが正しい誘導方法なのだが、相手の喜色に水を差すのもどうかと思い、彼がそれを指摘することはなかった。
手を引かれながら、ふと彼は握られている手に意識を向けた。
「キミ、もしかしてピアノやってる?」
「え……はい、習っていますが、どうして?」
グレーと青が混ざったような色が波紋となって、相手の手から伝わってきた。彼はその反応を微笑ましく思いながら。
「僕もピアノをやってるからね。手を触っただけで、ちょっとわかるんだ」
これも些細な能力かな、などと冗談めかしたように苦笑した。相手は少し驚いた様子で「そうなんですか」と言葉を返して、その歩みを止めた。足元の「警告ブロック」と車の走る音から察するに、信号待ちのようだ。
「ピアノはどれくらい、されているのですか?」
「11歳の時からだから……6年かな。まだまだペーペーでね。ウィーンに行った時なんて、技術のところで大目玉くらったよ」
「ウィーン!? え……今、十七歳ってことは……!」
驚きと動揺が、声の高さと震えから伝わってきた。相手は「もしかして」と何か確信を得たように呟いて。
「……後藤久遠(ごとう くおん)さん、ですか? ウィーンの麒麟児と呼ばれている」
声を潜めて、そんなことを聞いてきた。彼……久遠はその問いにない目を見開く思いで驚いた。息を呑み、「えっと」と少し言葉を詰まらせて。しばらくの沈黙のあと、困ったように苦笑を浮かべた。
「驚いたなぁ……日本で僕って有名なの?」
というか麒麟児って、と久遠は少々気恥ずかしい思いだった。ウィーンに居た頃は、麒麟児よりも「問題児」としての呼び名が強く、どうにも賛美というものには慣れなかった。
「ピアノを少し齧っている人なら、誰だって知っています! 聞いたのはCDの音源でしたけど、平均律クラヴィーアなんて、心が温まるというか、包み込まれる優しさがあったといいますか……その!」
緋色の音色が熱を以て久遠の耳に届いてくる。何かを必死に伝えようと、懸命に言葉を探して、紡いで、頑張っている様子が彼にとってはどこか微笑ましく思えた。同時に、それだけ自分の音楽を肯定してもらえることが、純粋に嬉しくなった。
「ありがとう。そんなに褒めてもらえて嬉しいよ。ウィーンだと、よく問題児扱いされていたからね。こんな基本もできないのか! って、師匠に何度も怒られて……あとには怒るのもやめて、呆れられていたからね」
手はほとんど動かさず、肩だけ竦めておどけてみせる。褒められ慣れていないせいか、どうにも矛先を逸らしたくて、そんな照れ隠しが自然と出てしまった。
「えっと、具体的には……?」
「その前に、青になったね。信号、渡ろっか」
「あっ、すみません……」
指摘してから、改めて誘導を始めてもらう。それが軌道に乗り始めてから、彼は先ほど聞かれたことについて、指折りに怒られたエピソードを語り始める。これが面白いことに、語れば語るほど、開いた口が塞がらない、といった様子の反応を相手がみせるのだ。ついつい、おかしくなって彼の会話にも熱が入る。
そうして雑談をしているうちに、相手の足がはたと止まる。「あっ」と名残惜しそうな声が藍色の波紋となって響き渡る。今までの様子も含めて、まるで子犬のような様相の相手に、彼の頬がますます緩んでいく。
「あの、765プロライブ劇場に、どのようなご用事で?」
不意に、そんな質問が投げかけられる。咄嗟に思いついた質問なのだろうか。久遠はその質問に、何の気なしに答える。
「会いたい人が居るんだ。紬ちゃん……白石紬、って子なんだけど」
その瞬間、ふと空気が緊張の糸によって張り詰めたような気がした。え、どうしたんだろう、と首を傾げて困惑していると。またも相手から質問が。
「紬さんとは、どのようなご関係なのですか?」
それを聞いて久遠は「あぁなるほど」と心の中でひとり納得した。いきなりアイドルに会いたいという男。いくら名が知れているとはいえども、警戒されるのも無理はない。まして、相手は真面目な性格だ。形式上だけでも、そういった質問は済ませておきたいのだろう。
「幼馴染でね。ウィーンに渡ってから、ずっと連絡してなかったから。心配してるかな、って」
別れ際のことは今も覚えていた。空よりも、海よりも、深海よりも濃い青色の波紋。夏祭りの中、ビニールプールから引き上げられそうな金魚がみせる抵抗のように、激しく波打つ音色。掴まれた手のぬくもりは、今なお思い出せる、燃えるような青色の熱が宿っていた。
――あのどうしようもなく濃い、青色の炎が、今は鎮火していることを願う。
もしも、まだ彼女の奥で燃え続けるとするならば。
(僕は何が何でも、伝えないといけない)
決意を固めて、腕と指の調子を悟られない程度に確認する。大丈夫、何も心配はない、と自分の心に言い聞かせる。
「そうでしたか。それでは、765プロライブ劇場の中をご案内しますね」
そんな久遠の様子に気付いた様子もなく、相手は彼の手を優しく引いて先導を始める。そんな相手の反応に、やっぱり、と彼は口角を上げる。
765プロ所属。真面目で、声は平静を装いつつ、中身は情熱的。サファイアから透かして見た水平線の煌めきのように美しく、漣のように思わぬ力を見せる声。大人びたわけではなく、いつも等身大の輝きを放っている。
彼女の歌を知っている。社長からは「君が気にすることではない! 底辺765プロのリサーチなど不要だ! 君の耳を使うまでもない!」などと強く言われたが。敵情視察を言い訳に幼馴染の歌を聞きたくて、結局、リサーチは全て済ませてしまっていた。
「ここから先は階段があるので。注意してください」
「あぁ、ありがとう。助かるよ」
一歩、一歩、ゆっくりと段を踏みしめる。少し硬質で、音の反響が高らかな階段はコンクリートのものではない。表面と、少し奥で波打つ音質が異なっていることを考慮すると、おそらくタイル張りになっているのだろう。入り口から階段までは、足音を沈みこませるようなカーペットが敷かれていた。きっと、華やかな内装になっているのだろうと予想できた。
階段を上り切り、二階へ。そうして少し進むと、賑やかな音があちらこちらで跳ねまわる。中には物を全力投球する音や、カメラのシャッター音、そして油の跳ねるような音まで。
「……ひとついいかな」
「はい?」
歩調を緩めに歩きながら、久遠は何よりも疑問に思ったことを、素直に口にする。
「ここって、アイドルの集まる場所だよね?」
「え、えぇ……えっと、それがどうかしましたか?」
「いや、物を全力投球……まるで野球でもやっているような音がしたからね。カメラのシャッター音とか、調理の音はわかるんだけど……あれって、何かのレッスン?」
握っている手の脈拍が、少しだけ上がったような気がした。こころなしか、彼女の手が汗ばんできている。まるで何かを堪えているかのように、細かな震えが空気から伝わってきた。
「……多分、何かの間違いかと」
――パン! と、棒状のもので何かを殴り飛ばしたかのような乾いた音が木霊する。ほぼ同時に、何かが壁に衝突したような音もセットで。彼女が赤紫の声音を発した直後であった。
「えっと、今確かに」
「気のせいです」
「いや、でも――」
「気のせいです」
「……安全地帯に、案内してね?」
「当然です!」
押し切られた。有無を言わせぬ圧力が、無彩色のくせして激しい重圧をもった雰囲気が、彼を頷かせてしまった。危険な場所などない、と言い返さないあたり、やはり彼女は正直者だと、彼は苦笑した。
「控室に入りますね」
そう断りを入れてから、彼女が扉を開けたところで。
「あっ、最上さん。お帰りになられていたのですね。随分と、お早いようですが。何か忘れ物でも……?」
落ち着き払っていて、角の立たない品格を意識した、鮮やかな紫色の声。水滴が水面に落ちるように、静かに波紋となって耳を打つ。忘れる筈がなかった。その声音を。その主を。
「いえ、そういうわけでは。実は――」
誘導してくれていた彼女、最上静香が説明をしようとしたところで。久遠は「ちょっといいかな」と静香の横からその姿を現した。
「久しぶり、紬ちゃん」
「――っ!」
息を呑む音が聞こえてきた。その驚きようは、目を見開いて「信じられない」といった風に視線を向けているのだろうと。簡単に予想できるほど、グレーと紺色の音色が重く、しっかりと伝わってきた。
「……なんで、久遠くん、が……ここに?」
歯切れの悪い言葉だけでも、如何に動揺しているのかが伝わってきた。どうやら驚かせすぎてしまったようだと、そう思いつつも彼は悪戯に成功した小僧のような笑みを浮かべて。
「三日前に帰国してね。サプライズだよ」
爽やかに、何でもない様子で、そう言ってのけるのであった。
いやはや、オリ主が盲目という設定は、どうにも描写することが多くなりがちですね。ただ、この盲目設定にも明確な「意味」がありますので、それはまた、物語が進んでからということで。
ちなみに、本当は「伊吹翼」二次創作書こうとしたのですが、翼の成長を四段階の変化に分けて描こうとすると、プロットが阿保みたいに長くなって断念。前作の四倍くらいの長さになりそうで無理。時間ないです。
そのため、前作よりもやや多めではありますが、さくっと終わらせられそうな「白石紬」をメインとした物語を描かせていただいて居る所存です。
もしよろしければ、適当な感想やコメント、あるいはお気に入り登録やしおりの追加など、していただければと思います(まだ一話なので感想やコメント難しいと思いますが)。
それでは、また次話にてお会いしましょう。