少年の異世界戦記~ハイスクール D×D編~   作:クロイツヴァルト

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二人の聖剣使い

 

 

 「・・・確か、この辺りの筈だが」

 

 戒翔は駒王学園から出て外れにある森の中を歩いていた。

 

 「・・・アレか?」

 

 暫く歩いていると、奥まった所にフード付きコートを頭からすっぽりと被った二人組が立っているのを見つける。

 

 「・・・キミ達が教会から派遣された聖剣使いで間違いないか?」

 

 「あぁ、間違いない。私はゼノヴィア、こっちがイリナだ。」

 

 「まさか協力してくれる者が悪魔側だなんて」

 

 「それは依頼人に言って欲しい物だ。 お前達二人だけじゃ確実性に欠ける為、その成功確率を増す為に俺は依頼されただけだからな。」

 

 「・・・」

 

 「まずは飯を食いながら今後の計画をと行きたい所だが、この地を治めているグレモリー家に顔合わせに行かなければならないからな。」

 

 戒翔は返事を待たずに身を翻して元来た道を戻る。

 

 「ちょ、待ちなさいよ! ゼノヴィアも早く来なさいよ!」

 

 「あ、あぁ。」

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 「部長、戒翔から連絡があったんですか?」

 

 「えぇ、なんでも彼の依頼内容に関係する事で二人ほど連れて来ると言ってたわね。 佑斗も呼ばれてたみたいだけど、問題は極力抑えてほしいなんてどういう事かしら?」

 

 「さぁ、俺には良く分かりませんけど・・・」

 

 一誠がそのまま言葉を続けようとした所で全員に悪寒の様なものが背筋に走る。

 

 「これは・・・!?」

 

 「悪魔祓いの気配ですわね。」

 

 「それと戒翔先輩の気配も一緒です。」

 

 「皆、取り敢えず所定の位置に着いて。 朱乃は御持て成しの準備をお願い」

 

 「分かりましたわ。」

 

 リアスの言葉にオカ研の面々は所定の位置に移動する。

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 「初めまして、教会から派遣されたゼノヴィアだ。」

 

 「同じく紫藤イリナよ。」

 

 「どうも、私はリアス・グレモリーこの地を管理している者よ。」

 

 対面して座る三人とその教会側の後ろに何も言わずに佇む戒翔を一誠は訝しげに見る。そして緊迫感のある子の中で紫藤イリナが口を開く。

 

 「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました。」

 

 戒翔から事前に情報が無ければ多少の混乱はあるモノのリアスを始めオカ研のメンバーはそこまで驚きはしなかった。 ・・・一名を除いて。 そしてそんな一誠に気付いた戒翔が説明を始める。

 

 「聖剣エクスカリバー自体は存在するが、お前の知るように一本のままで存在はしていない。 先の大戦時・・・天使と悪魔、堕天使の三界大戦とでも呼べばいいのか? その最中に砕かれ四散した物を錬金術によって復元加工したものの七つに別れ、各教会に厳重に管理、保管されている。 そしてその七つのうち二つを彼女達が所有している。」

 

 「・・・これがエクスカリバーだ。」

 

 そして、戒翔が話し終えるのと同時にゼノヴィアが傍らに置いてある布に巻かれた長大な物体を解き放つ。 その瞬間、一誠は目に見えて恐怖しているのが分かり、戒翔は苦笑する。 他のメンバーを見ると何とか表には出していないものの多少の違いはあれど冷や汗をながしていた。

 

 「先程、時の御子殿から説明があった様に錬金術によって復元された七本ある内の一本がこの破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)だよ。 この聖剣はカトリックが管理している物だ。」

 

 自身の得物を紹介し終えたゼノヴィアは再び聖剣を布で包みエクスカリバーを覆い隠した。

 

 そして、続く様にイリナも懐から長い紐状の物を取り出す。 訝しむ面々だが、先の流れからただの紐では無いと思い静観していると取り出された紐が徐々に形を変えて一本の日本刀に変化するのを見て目を見開く。

 

 「わたしの方は擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。 こんな風に姿形を変えることが出来るの。 おかげで持ち運びがとても便利なのよ? で、この様にエクスカリバーはそれぞれが特殊な力を有しているの。 こちらはプロテスタントが管理しているわ。」

 

 「イリナ・・・悪魔に態々エクスカリバーの能力を喋る必要はないだろ?」

 

 そう自慢げにイリナは告げる。 そんな彼女を見咎めてゼノヴィアが半ば呆れた表情で口を開く。

 

 「あら、ゼノヴィアいくら悪魔だからと言って信頼関係を築かなければ、この場はしょうがないでしょう? それに聖剣の能力を教えた所で・・・この悪魔さん達に後れを取るなんてことはないわ。」

 

 そうイリナは不敵な笑みを浮かべて告げる。 その時、部室内で急激に上がったプレッシャーを感じて部屋にいる面々がその発生源を見ると・・・凄惨な顔つきで聖剣組を睨み付ける木場がいた。

 

 「・・・それで、奪われた聖剣が何故、こんな極東の国にある地方都市に関係があるのかしら?」

 

 リアスは木場の発する殺気混じりのプレッシャーを無視して今回の来訪の目的を問いただす。 それに答えたのはゼノヴィアだった。

 

 「聖剣は正教会で二本、カトリックで二本、プロテスタントで二本。 そして先の大戦で現在行方知れずの一本の計七本の聖剣の内四本が敵によって奪われた。 そして、敵はこの駒王町を目指している事が判明している。」

 

 「どうしてこの町なのかしら?」

 

 「それは」

 

 ゼノヴィアが言葉を続けようとした所へ部室内で唐突に着信音が鳴り響く。

 

 「・・・すまん、依頼者からのようだ。」

 

 懐からだした携帯を取り出した戒翔は一言入れてから携帯を取る。

 

 「もしもし、今丁度お前の所の奴等が来ている所なんだが・・・なに? ・・・分かった、その事も伝えて置く。」

 

 短いやり取りで通話を切った戒翔はリアス達が注目している所へ依頼者(ミカエル)からの言葉を伝える。

 

 「今しがた新しい情報が入った。 正教会側で管理していた最後の一本が何者かによって奪われた。 現場にいた教会の人間は全滅。 そして犯人も未だに補足できていないそうだ。」

 

 戒翔の告げた言葉に聖剣使いの二人は当然の事ながらリアス達にも驚愕の情報であった。 ちなみにこれは戒翔自身の演技であり、実際には前日に聞いていた事だが、教会の人間が知らない事を知っている事に不審がられない為の策である。

 

 「つまり、この2人が持っている聖剣だけが無事な訳ね?」

 

 「・・・そうだ。 そして、奪われた聖剣は祝福の聖剣(エクスカリバー・プレッシング)らしい。 それ単体ではさほどの脅威でもないが、能力の詳細も依頼者から聞いているが、大まかに加護によって退魔士や祈祷師の能力の底上げだったり悪魔や堕天使に使用すればパワーダウンを引き起こすと言うものらしい。」

 

 「なんだよそれ、反則気味な能力じゃないか! 他の聖剣と一緒に使われたら一溜まりも無ぇじぇねぇか!?」

 

 「・・・で、仮に今起きている事件と連動しているのであるならばそいつもこの駒王町に来るだろうな。」

 

 「・・・そうなるとコカビエルとは別に警戒しておく必要があるわね。」

 

 「いや、その必要はないだろう。 向こうの目的が聖剣のみであれば必然的に向こうは向こうでコカビエル達と接触を図るだろうから一纏めにして警戒しておけばそこまで人員を割く事も無いだろう。」

 

 リアスの言葉に戒翔が否定をし、自身の考えを口にする。

 

 「だが、その場合は聖剣を四本同時に相手にしなければならなくなる。 そこで、聖剣使いの二人と協力しさえすればハイリスクは回避出来る筈だ。 しかし、協力せずに個々で対処しようとすれば危険度ばかりが跳ね上がり結果任務は失敗する可能性も出て来てしまう。」

 

 「ちょっと待ってよ、それじゃ私達が堕天使如きに負けると言いたいの?」

 

 「敵は聖書に載るほどに有名なコカビエルだ。 その実力も推して知るべし・・・たかだか十五、六の小娘二人で討ち取れるとでも思っているのか?」

 

 非難の声を上げるイリナに対して戒翔は自身の魔力を多少解放し、威圧を籠めてイリナを睨み付ければ一瞬で顔を青くして震えあがってしまう。

 

 「・・・この程度の威圧で竦み上がっては話にならんな。 上級堕天使に届くか届かないの魔力量でこの様では結果は目に見えているな・・・」

 

 「い、言ってくれるじゃない。 なら証明して見せてあげるわ!」

 

 「・・・イリナ、キミはどうしてそう簡単に物事を決めてしまうんだ。」

 

 強がりながら勝負を挑もうとするイリナに対してゼノヴィアが諌める。

 

 「別に個別に挑んで来ようと考えなくとも二人纏めて掛かってくると良い。 勝負の世界に卑怯も糞も無いのだからな。」

 

 「言ってくれますね? 仮にも悪魔なのですから聖剣の威力で消し飛んでしまうかも知れないんですよ?」

 

 「舐められっぱなしは癪だけど、2人掛かりで負けても文句は言わないでよね!」

 

 「はぁ、勝手に決めないでほしいのだけど・・・しょうがないわね」

 

 「スマナイな、小娘共がどの程度出来るのか見極めるのにちょうどいいのでね。」

 

 「戒翔が言いたい事は分かるけどね、勝手に決められると困るのよ。」

 

 そして、リアス達も立ち上がり場所を移動しようとした所、ゼノヴィアとイリナが急に立ち止まり、アーシアの方を向き

 

 「・・・まさかとは思ったが『魔女』アーシア・アルジェントか? まさかこの地で会おうとは」

 

 ゼノヴィアの魔女と言う言葉にアーシアは肩をビクつかせる。 彼女にとってその言葉は辛いだけの物である。 そしてゼノヴィアに言われてなのかイリナもまたまじまじとアーシアを見つめ

 

 「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん? 悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね? 追放され、何処かに流れたと聞いていたけれど、悪魔になっているとはね。」

 

 「わ、わたしは」

 

 2人に詰め寄られ、戸惑うアーシアに構わずイリナは更に言葉を続ける。

 

 「だいじょうぶよ。 ここで見た事は上には伝えないから安心して。 『聖女』アーシアの周囲にいた方々に今のあなたの現状を話しでもすれば、ショックの余りに倒れてしまうでしょうから」

 

 「・・・・・・」

 

 イリナの言葉にアーシアは悲痛な表情を浮かべていた。

 

 「しかし、悪魔か。 『聖女』と呼ばれていた者が堕ちるところまで堕ちたものだな。 まだ我等の神を信じているのか?」

 

 「ゼノヴィア、悪魔になった彼女が主を信仰している筈がないでしょ?」

 

 ゼノヴィアの言葉に呆れた様子でイリナが言う。

 

 「いや、その子から信仰の匂い・・・香りがするのでね。 抽象的な言い方かもしれないが、私はそう言うのに敏感でね。 背信行為をする輩でも罪の意識を感じながらも信仰心を忘れられない者がいる。 それと同じものがその子から伝わって来るんだよ」

 

 目を細めながらゼノヴィアがそう言うと、イリナは興味深そうにまじまじとアーシアを見つめ

 

 「そうなの? アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

 イリナの言葉にアーシアは悲しげな表情で告げる。

 

 「・・・ただ、捨てきれないだけです。 ずっと信じてきたのですから・・・いまさら捨てる事も出来ません」

 

 それを聞いたゼノヴィアは布に包まれたままの聖剣の切っ先をアーシアの目の前に突き付け

 

 「そうか。 それならば、いますぐ私達に斬られるといい。 いまなら神の名の下に断罪しよう。 罪深くとも、我等の神ならば救いの手を差し伸べて下さるはずだ。」

 

 「くくくく、ははははは!」

 

 ゼノヴィアが更にアーシアに近づこうとする中、一誠が動こうとした所、後ろにいた戒翔が急に笑いだし、全員の視線が戒翔に集まる。

 

 「コレはおかしなことを言うな? アーシアが真に窮地になった所で救いもしなかった神が今更になって救いの手を差し伸べるのか? なら貧困の地で死ぬまで信仰している者が救われなければその者の信仰が足りないとでも貴様達は言うのか?」

 

 「それは・・・」

 

 「そもそも、貴様達は勘違いをしている。 リアス、神器(セイクリッド・ギア)は誰が創った?」

 

 「それは聖書の神が」

 

 「そうだ。 聖書の神が創りだした神器だ。 そしてその神器の性質も神が設定した物だ。 なればこそ、アーシアは神の造りだした通りに使っているに過ぎない。」

 

 「そ、そんな! それじゃ」

 

 「アーシアは真の意味で癒しの力を行使している。 魔女などと謂れの無い侮蔑とは程遠い・・・彼女ほど聖女と呼ばれるに相応しい子はいない。 そして、そんな神の意志を曲解している貴様等こそ魔女と蔑まれても可笑しくは無いと知れ!」

 

 戒翔の言葉にショックを受ける二人を尻目に戒翔はアーシアに近寄り

 

 「アーシア、君の事を魔女と蔑むような奴等は気にするな。 キミは聖書の神が造った神器をちゃんと使いこなしている。 そんなキミを馬鹿にし、蔑み続ける様な奴がこの先現れようとも俺が護り支え続けよう。」

 

 「お、俺だってアーシアの友達だ! 仲間だ! 友達を助けないで何が友達だっていうんだ! アーシアを助ける。 アーシアを守る! アーシアを狙う奴は俺が全員纏めて叩き潰してやる!」

 

 「い、イッセーさん・・・、カイトさん・・・」

 

 戒翔の言葉に便乗して先程まで溜めていた激情を吐き出すイッセーに戸惑いを見せるアーシア。

 

 「・・・さて、途中ではあったがさっさと移動しようか。 正直腸が煮えくり返りそうでしかたないんでな。」

 

 その瞬間、部室内に冷気が漂う。

 

 ――――――――――――――――

 

 「・・・それで、準備は出来たのか?」

 

 校舎側にオカ研の面々が立ち並び、戒翔と聖剣使いの二人を含む三人がいる周囲は戒翔自身が張った薄い黒色をした結界に包まれている。 その中でゼノヴィアとイリナは各々の聖剣を手に対峙していた。 そして、戒翔は漆黒の騎士風の全身甲冑を着込み、手には岩で切り出されたような斧剣を握っていた。

 

 「舐められたものだ、そんな岩で出来た物で聖剣と戦うつもりか?」

 

 「御託は良い。 サッサと掛かって来い。 それとも、四の五の言わずにはいられないのか?」

 

 斧剣を肩に担いだ状態で表情は兜によって窺い知れないが明らかに馬鹿にした様な物言いに流石に頭に来たのか動きの速いイリナが戒翔の懐に飛び込む。

 

 「う、嘘ッ!?」

 

 飛び込むのと同時に日本刀を振り抜くイリナだが、その目の前には肩に担いでいた斧剣がイリナの刀の軌道上に既に存在し簡単に防がれる。 外見上は只の岩の様な物の筈が伝説に名高い聖剣で斬り裂けない事に同様する。 しかし、そんな隙を戒翔が見逃す筈も無く防ぎながらも横合いから蹴りを放ち結界の端までイリナが吹き飛ぶ。

 

 「見た目で判断するとは・・・戦士として未熟過ぎる。 それに簡単に動揺する。 動揺は致命的なまでの隙を生む。」

 

 「ならばこれならどうだ!」

 

 蹲るイリナの方を向いている戒翔に対してゼノヴィアは地を蹴り空中からの大上段で戒翔に斬り掛かるが、後ろに目でもあるのか上に掲げた斧剣で受け止めるのと同時に戒翔を中心として僅かにクレータが出来る。

 

 「不意打ちをするのならば声を出すな。 殺気を出すな。 気配を断て!」

 

 僅かに拮抗していた筈のゼノヴィアと戒翔だが、片手だけでゼノヴィアをイリナのいる所まで吹き飛ばす。

 

 「・・・拍子抜けだな。 これが聖剣使いなのか? 彼女なら俺にこうまで好き勝手にやられはしないし、先程の打ち合いで最低でも片腕を切り落としに来ているだろう。 それに俺はまだ一割に満たない実力しか出していないぞ?」

 

 「・・・これで一割未満だと?」

 

 「正真正銘の化物・・・いえ、これが時の御子の実力なの?」

 

 心底落胆した様子で語る戒翔の言葉にゼノヴィアとイリナは戦慄する。

 

 「さぁ、次は俺から行かせてもらおうか・・・せいぜい一撃で墜ちないでくれよ?」

 

 そう告げて戒翔は斧剣を構えるのであった。

 





 なんだが最後の方は主人公が悪役染みている事に書いていてびっくりですが、楽しく読んでもらえたら幸いです。 御意見御感想をお待ちしております。
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