「…なんじゃこりゃ」
朝起きた俺は鏡を見て唖然としていた。
短い髪…
低い身長…
そして極めつけは完璧に女の子にしか見えない童顔。
どう考えても幼児化していた。
原因は何かは分からないが…
「どこからどう見ても5歳の時の俺の姿だよな…」
ほっぺを抓ったり伸ばしたりしてみると鏡に映る自分も合わせて動く。
鏡に映っているのは紛れもなく自分の姿だと確信する。
「…これからどうしよう。」
こんな姿になった以上学院には行くことができない。
だからと言ってここにいてはマイたちにこの姿を見られてしまう。
「…親戚の幼稚園児のふりをするしかないかな」
そう思い、創造魔法で今の体に合う洋服を作成する。
とりあえず服はこれでOKだ。
「あとはどうやってここを出るかなんだけど…」
おそらく魔法を使うと、魔王であるエルマにばれる。
なのでワープも転移魔法も使えない。
「どうにかばれないように出れないものか…」
「誰にばれないように出かけるのです?」
「そりゃ…マイとエルに…ってエル!?」
裏を向くとそこには先ほどまで眠っていたはずのエルマが立っていた。
「アーちゃんは、なんでそんなに小さくなっているのです?」
アーちゃんというのは、渾名だろう。
なんか女の子っぽいが…
まぁそれは置いておくとしよう。
「よくわかったな。僕がアリシアだって」
「ああ。それはですね…魔力が駄々洩れだったのですよ。こんな魔力はアーちゃんだけなのです」
そう言って足元を指さす。
俺には見えていないが、魔族であるエルマには人からあふれ出す魔力が見えるらしい。
俺は、すぐさま『魔力遮断』を使って漏れを防ぐ。
「結局どうしよう…」
「観念して学院に行くしかないのでは?それか元に戻るまで旅に出るしかないのです」
「旅…か」
卒業したらシャルフィーと一緒に出ようと思っていたが…
そろそろ頃合いかもしれない。
正直この学園で学ぶことはあまりなかったし…
冒険者でもしながら旅をする方がいいのかもしれないな。
ただ問題はミーシャである。
このまま旅立ってしまえば一人、この学園に残していくことになる。
「ま、大人数での旅も悪くないか」
まぁ一番の問題は無事にこの学園から出られるかということだが
「この学園を特別卒業するためには、高難易度の試練に挑まなきゃいけないんだっけ…」
入学時に受けた説明だと、退学以外で学園を去るものは、
学園長が用意した最難関の試練を乗り越え特別卒業しなければ
ならないと言われたはずだ
「…受けてみるか。特別卒業試験」
まぁどうせすぐ終わるだろうし。
そう考え、俺は留守番をエルマに任せ学園長に会いに行くことにした。
「…というわけなんです。」
学園長に全ての事情を説明する。
「なるほど…事情は分かりました。特別試験を受けることを認めましょう。これをどうぞ」
そう言って一枚の紙を差し出してくる。
「これは?」
「試験状です。それを持って今からギルドに行ってください。一枚で三人まで受けられますのであとの二人も連れて」
あとの二人というのはミーシャとマイのことだろう。
「ご武運を」
「ありがとうございました。」
そう言って俺は理事長室から出る。
そしてそのままワープでミーシャの元へ飛ぶ。
「あら?アリシア様?どうされたんですか?」
もうバレてるし…
「それがかくかくしかじかでな」
ミーシャに事情を全て話す。
「なるほど…分かりました。未来の旦那様のご意志に従いましょう。」
どうやらOKのようだ。
「でも本当に良かったのか?」
ミーシャはまだこの学院で学ぶことがたくさんあるだろうし…
「いいんですよ。アリシア様の頼みですから。」
「なら次は…」
ミーシャも連れてワープしてマイの元へ飛ぶ。
「アリシア様…?なんですか!?その姿は!?」
そう言ってマイは興奮気味に抱き着いてくる。
めちゃくちゃ暑苦しい…。
「…ということなんだ。」
マイにも全ての事情を説明する。
「なるほど…そういうことでしたか。私も行きましょう。」
やっぱり即決だった。
まぁマイは転移者だし、そこまで心配はしないけど…
「さて…行きますか。」
シャルフィーのことをエルマに任せ、転移魔法でギルドまで飛ぶ。
「すいません。特別試験を受けに来たんですけど」
そうカウンターにいる受付の人に言う。
「特別試験の生徒さんですね。学園長から聞いてますよ」
そう言って受付の人は試練状と引き換えに一枚の紙を差し出してくる。
「これが今回のターゲットか。」
その紙の真ん中には大きくドラゴンが描かれておりエンシェントドラゴンの文字が書かれている。
「ご武運をお祈りしています。」
受付の人はそう言って別の仕事へ戻っていった。
「さて…早速行きますか。」
マップを記憶してエンチャントを使い、エンシェントドラゴンのいる山へ転移する。
ここから始まる…
俺達の卒業を掛けた最終試験が…